師導古典を学びたいすべての人に

十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

第六ノ意和敬ハ。猶モ人人志ヲ用ヘキ所シヤ。四姓出家シテコトコトク釋氏ト稱スル。貴族卑姓ノ品アレトモ。同一和敬シヤ。凡聖マチマチナレトモ。悉ク同一師ニ學スル。要ヲ取テ云ハ。此意ハ制伏セネハナラヌモノシヤ。涅槃經ニ。心ノ師トハナルヘシ。心ヲ師トスルコト勿レトアル。遺教經ニ。心ノ恐ヘキコト毒蛇惡獸怨賊ヨリモ甚トアル。ココニ於テ人人屏息シテ妄リニ思ハヌ。平生自ラ省テ自心ノ非處ヲ知ル。三毒ノ厚薄ヲ知ルシヤ。若自ラ非ヲ知ハ更ニ是處ハイラヌシヤ。若我三毒ヲ知ハ必ス隨順セヌ。自ラ制伏スル道ヲ思フ。譬ヘハ賊帥ヲ生擒スレハ其眷屬自ラ伏スル如ク。其强キ者ヲ制スレハ餘惑自ラ微劣ニナルト云コトシヤ。若餘念纔ニ萌セハ自ラ僧私ヲ知ル。若念私ニ屬スレハ自ラ善惡ヲ察ス。未生ノ善生セシメ。已生ノ善增長セシム。未生ノ惡生セシメス。已生ノ惡速ニ滅ス。上座モ如是ナレハ。下座モ如是シヤ。年少モ如是ナレハ。長老モ如是シヤ。

新字:第六ノ意和敬ハ。猶モ人人志ヲ用ヘキ所シヤ。四姓出家シテコトコトク釈氏ト称スル。貴族卑姓ノ品アレトモ。同一和敬シヤ。凡聖マチマチナレトモ。悉ク同一師ニ学スル。要ヲ取テ云ハ。此意ハ制伏セネハナラヌモノシヤ。涅槃経ニ。心ノ師トハナルヘシ。心ヲ師トスルコト勿レトアル。遺教経ニ。心ノ恐ヘキコト毒蛇悪獣怨賊ヨリモ甚トアル。ココニ於テ人人屏息シテ妄リニ思ハヌ。平生自ラ省テ自心ノ非処ヲ知ル。三毒ノ厚薄ヲ知ルシヤ。若自ラ非ヲ知ハ更ニ是処ハイラヌシヤ。若我三毒ヲ知ハ必ス随順セヌ。自ラ制伏スル道ヲ思フ。譬ヘハ賊帥ヲ生擒スレハ其眷属自ラ伏スル如ク。其強キ者ヲ制スレハ余惑自ラ微劣ニナルト云コトシヤ。若余念纔ニ萌セハ自ラ僧私ヲ知ル。若念私ニ属スレハ自ラ善悪ヲ察ス。未生ノ善生セシメ。已生ノ善增長セシム。未生ノ悪生セシメス。已生ノ悪速ニ滅ス。上座モ如是ナレハ。下座モ如是シヤ。年少モ如是ナレハ。長老モ如是シヤ。

書き下し

第六ノ意和敬ハ。猶モ人人志ヲ用ヘキ所シヤ。四姓出家シテコトコトク釈氏ト称スル。貴族卑姓ノ品アレトモ。同一和敬シヤ。凡聖マチマチナレトモ。悉ク同一師ニ学スル。要ヲ取テ云ハ。此意ハ制伏セネハナラヌモノシヤ。涅槃経ニ。心ノ師トハナルヘシ。心ヲ師トスルコト勿レトアル。遺教経ニ。心ノ恐ヘキコト毒蛇悪獣怨賊ヨリモ甚トアル。ココニ於テ人人屏息シテ妄リニ思ハヌ。平生自ラ省テ自心ノ非処ヲ知ル。三毒ノ厚薄ヲ知ルシヤ。若自ラ非ヲ知ハ更ニ是処ハイラヌシヤ。若我三毒ヲ知ハ必ス随順セヌ。自ラ制伏スル道ヲ思フ。譬ヘハ賊帥ヲ生擒スレハ其眷属自ラ伏スル如ク。其强キ者ヲ制スレハ余惑自ラ微劣ニナルト云コトシヤ。若余念纔ニ萌セハ自ラ僧私ヲ知ル。若念私ニ属スレハ自ラ善悪ヲ察ス。未生ノ善生セシメ。已生ノ善增長セシム。未生ノ悪生セシメス。已生ノ悪速ニ滅ス。上座モ如是ナレハ。下座モ如是シヤ。年少モ如是ナレハ。長老モ如是シヤ。

現代語訳

第六の意和敬は、なおさら人々が志を用いるべきところである。四つの身分の者が出家して、ことごとく釈氏と称する。貴族と卑しい家柄の品はあっても、同一の和敬である。凡夫と聖者はまちまちであっても、ことごとく同一の師に学ぶ。要点をつかんで言えば、この意は制し伏さなければならないものである。涅槃経に、心の師とはなるべきである。心を師としてはならない、とある。遺教経に、心の恐るべきことは毒蛇や悪獣や怨賊よりも甚だしい、とある。ここにおいて人々は息をひそめて、みだりに思わない。平生みずから省みて、自分の心の誤ったところを知る。三毒の厚い薄いを知るのである。もしみずから非を知れば、さらに是とするところはいらないのである。もし自分の三毒を知れば、必ずそれに従わない。みずから制し伏す道を思う。たとえば賊の頭を生け捕りにすれば、その手下はおのずから降伏するように、その強いものを制すれば、ほかの惑いはおのずから弱くなるということだ。もしほかの思いがわずかに芽生えれば、みずから公か私かを知る。もし思いが私に属すれば、みずから善悪を察する。まだ生じていない善を生じさせ、すでに生じた善を増させる。まだ生じていない悪を生じさせず、すでに生じた悪はすみやかに滅ぼす。上座もこのようであれば、下座もこのようである。年少もこのようであれば、長老もこのようである。

解説

六和敬の最後、意和敬は心を同じくすることで、尊者は最も力を注ぐべきところだという。インドの四姓の出身者も出家すれば皆「釈氏」となる。その和を保つには、自分の心を制しなければならない。涅槃経の「心の師となるべし、心を師とすること勿れ」、遺教経の「心の畏るべきこと毒蛇・悪獣・怨賊より甚だし」が引かれる。自分の三毒(貪り・怒り・愚かさ)のどれが強いかを知り、賊の頭を捕らえるように一番強いものを制する。思いが湧いたら、公のためか私のためかをまず見る。今日でも使える心の点検法である。

この章句が説くこと

意和敬三毒制心涅槃経遺教経公私

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる