十善法語 / 巻第七・不兩舌戒
支那ニ流傳シテ。智愚貴賤ソノ利益ヲ得ル中。諸ノ英俊ノ人自ノ所解ニ隨テ分教開宗スル。此ニ是トスル所ハ彼ニ非トスル所。彼ニ深トスル所ハ此ニ淺トスル所。其趣マチマチナレトモ。悉ク此聖智見ノ中ヨリ分付セル所ノ法デ。修多羅藏ノ中ノ一部一品一句ノ中ニ。各各其根性ノ近キ所ヲ得ル分齊ナルノミシヤ。譬ヘハ大海水ノ汲ニ隨テ增減ナキカ如ク。蒼天ノ管ノ大小ニ隨テ象ヲ顯ハス如クシヤ。
新字:支那ニ流伝シテ。智愚貴賤ソノ利益ヲ得ル中。諸ノ英俊ノ人自ノ所解ニ随テ分教開宗スル。此ニ是トスル所ハ彼ニ非トスル所。彼ニ深トスル所ハ此ニ浅トスル所。其趣マチマチナレトモ。悉ク此聖智見ノ中ヨリ分付セル所ノ法デ。修多羅蔵ノ中ノ一部一品一句ノ中ニ。各各其根性ノ近キ所ヲ得ル分斉ナルノミシヤ。譬ヘハ大海水ノ汲ニ随テ增減ナキカ如ク。蒼天ノ管ノ大小ニ随テ象ヲ顕ハス如クシヤ。
書き下し
支那ニ流伝シテ。智愚貴賤ソノ利益ヲ得ル中。諸ノ英俊ノ人自ノ所解ニ随テ分教開宗スル。此ニ是トスル所ハ彼ニ非トスル所。彼ニ深トスル所ハ此ニ浅トスル所。其趣マチマチナレトモ。悉ク此聖智見ノ中ヨリ分付セル所ノ法デ。修多羅蔵ノ中ノ一部一品一句ノ中ニ。各各其根性ノ近キ所ヲ得ル分斉ナルノミシヤ。譬ヘハ大海水ノ汲ニ随テ增減ナキカ如ク。蒼天ノ管ノ大小ニ随テ象ヲ顕ハス如クシヤ。
現代語訳
中国に流伝して、智者も愚者も貴い者も賤しい者もその利益を得るなかで、多くの英才の人が自分の理解に従って教えを分け、宗を開いた。こちらで是とするところは、あちらで非とするところ。あちらで深いとするところは、こちらで浅いとするところ。その趣はまちまちであるけれども、ことごとくこの聖なる智見の中から分け与えられた法であって、経蔵の中の一部一品一句の中に、それぞれその根性に近いところを得た分際にすぎないのである。たとえば大海の水が汲む量に応じても増減がないように、青空が覗く管の大小に応じてその形を現すようなものである。
解説

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