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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

一切顯密ノ行。タタ深信ニ脩スル者ガ此趣ヲ知ル。口ニ說テ道ヲ得ルテハナイ。譬ハ高山ニ登ル思ヒアラハ。道ニ迷ハヌ樣ニ足ヲ傷ナハヌ樣ニシテ。唯歩ヲ移スハカリテヨキシヤ。步ヲ移シテ休マネハ。山頂ヲ窮ル時節アルベキコトシヤ。今時ノ者ノ法ヲ得ヌハ。唯教相ノ深淺。法門ノ高下ヲ論シテ。實修實行ナキ故シヤ。譬ヘハ高山ニ登ウトシテ。唯山下ニ在テ山上ノ勝景ヲ談シ。一步ヲ進メスシテ。山徑ノ曲折ヲ論スルハカリシヤ。談論半ニシテ日已ニ暮ルシヤ。

新字:一切顕密ノ行。タタ深信ニ脩スル者ガ此趣ヲ知ル。口ニ説テ道ヲ得ルテハナイ。譬ハ高山ニ登ル思ヒアラハ。道ニ迷ハヌ様ニ足ヲ傷ナハヌ様ニシテ。唯歩ヲ移スハカリテヨキシヤ。歩ヲ移シテ休マネハ。山頂ヲ窮ル時節アルベキコトシヤ。今時ノ者ノ法ヲ得ヌハ。唯教相ノ深浅。法門ノ高下ヲ論シテ。実修実行ナキ故シヤ。譬ヘハ高山ニ登ウトシテ。唯山下ニ在テ山上ノ勝景ヲ談シ。一歩ヲ進メスシテ。山径ノ曲折ヲ論スルハカリシヤ。談論半ニシテ日已ニ暮ルシヤ。

書き下し

一切顕密ノ行。タタ深信ニ脩スル者ガ此趣ヲ知ル。口ニ説テ道ヲ得ルテハナイ。譬ハ高山ニ登ル思ヒアラハ。道ニ迷ハヌ様ニ足ヲ傷ナハヌ様ニシテ。唯歩ヲ移スハカリテヨキシヤ。歩ヲ移シテ休マネハ。山頂ヲ窮ル時節アルベキコトシヤ。今時ノ者ノ法ヲ得ヌハ。唯教相ノ深浅。法門ノ高下ヲ論シテ。実修実行ナキ故シヤ。譬ヘハ高山ニ登ウトシテ。唯山下ニ在テ山上ノ勝景ヲ談シ。一歩ヲ進メスシテ。山径ノ曲折ヲ論スルハカリシヤ。談論半ニシテ日已ニ暮ルシヤ。

現代語訳

一切の顕教と密教の行は、ただ深く信じて修める者がこの趣を知る。口で説いて道を得るのではない。たとえば高い山に登ろうと思うなら、道に迷わないように、足を傷めないようにして、ただ歩みを進めるだけでよい。歩みを進めて休まなければ、山頂を極めるときがきっとあるはずである。今どきの者が法を得ないのは、ただ教えの浅い深い、法門の高い低いを論じて、実際の修行がないからである。たとえば高い山に登ろうとして、ただ山の下にいて山上の絶景を語り、一歩も進まずに、山道の曲がりくねりを論じるばかりである。談論の半ばで、日はもう暮れてしまう。

解説

この巻でもひときわ分かりやすい譬えである。山に登るなら、道に迷わず足を傷めないように気をつけて、あとはただ歩を進めればよい。休まず歩けば山頂に着く時が来る。ところが今の者は、山の下で山頂の景色を語り、どの道が曲がっているかを論じるばかりで、一歩も踏み出さないうちに日が暮れる。教えの深浅や法門の高下を論じて実修しない僧への批判だが、計画や比較検討ばかりで着手しない仕事ぶりにもそのまま刺さる言葉である。

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