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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

子華子ニ。父不疑於其子子必孝。兄不疑於其弟弟必共。夫不疑於其婦婦必貞。君不疑於其臣臣必忠トアル。商書ニ。立愛惟親。立敬惟長。始于家邦。終于四海トアル。易ニ。二人同心。其利斷金。同心之言。其臭如蘭トアル。此等ノ文ミナ不兩舌戒ノ俗中ニ顯ルル儀シヤ。又世間現見ニ此人間アルシヤ。現見ニ人間アレハ幽冥ノ中ニ神祇アルシヤ。此神祇ト此人間トハ必相應スルシヤ。幽冥ト現顯ト其理違ハヌト云コトシヤ。虞書ニ。肆類于上帝。禋于六宗。望于山川。徧于群神トアル。左傳ニ夫民神之主也トアル。又民和而神降之福トアル。此等ミナ神助ムナシカラヌ儀シヤ。古ニ聖賢ノ君ノ山川群神ヲ祭ル。皆イタヅラ事デハナキト云コトシヤ。此人ト神ト相應シテ。禍アリ福アリ。皆虛言テハナキシヤ。

新字:子華子ニ。父不疑於其子子必孝。兄不疑於其弟弟必共。夫不疑於其婦婦必貞。君不疑於其臣臣必忠トアル。商書ニ。立愛惟親。立敬惟長。始于家邦。終于四海トアル。易ニ。二人同心。其利断金。同心之言。其臭如蘭トアル。此等ノ文ミナ不両舌戒ノ俗中ニ顕ルル儀シヤ。又世間現見ニ此人間アルシヤ。現見ニ人間アレハ幽冥ノ中ニ神祇アルシヤ。此神祇ト此人間トハ必相応スルシヤ。幽冥ト現顕ト其理違ハヌト云コトシヤ。虞書ニ。肆類于上帝。禋于六宗。望于山川。遍于群神トアル。左伝ニ夫民神之主也トアル。又民和而神降之福トアル。此等ミナ神助ムナシカラヌ儀シヤ。古ニ聖賢ノ君ノ山川群神ヲ祭ル。皆イタヅラ事デハナキト云コトシヤ。此人ト神ト相応シテ。禍アリ福アリ。皆虚言テハナキシヤ。

書き下し

子華子ニ。父不疑於其子子必孝。兄不疑於其弟弟必共。夫不疑於其婦婦必貞。君不疑於其臣臣必忠トアル。商書ニ。立愛惟親。立敬惟長。始于家邦。終于四海トアル。易ニ。二人同心。其利断金。同心之言。其臭如蘭トアル。此等ノ文ミナ不両舌戒ノ俗中ニ顕ルル儀シヤ。又世間現見ニ此人間アルシヤ。現見ニ人間アレハ幽冥ノ中ニ神祇アルシヤ。此神祇ト此人間トハ必相応スルシヤ。幽冥ト現顕ト其理違ハヌト云コトシヤ。虞書ニ。肆類于上帝。禋于六宗。望于山川。遍于群神トアル。左伝ニ夫民神之主也トアル。又民和而神降之福トアル。此等ミナ神助ムナシカラヌ儀シヤ。古ニ聖賢ノ君ノ山川群神ヲ祭ル。皆イタヅラ事デハナキト云コトシヤ。此人ト神ト相応シテ。禍アリ福アリ。皆虚言テハナキシヤ。

現代語訳

子華子に、父がその子を疑わなければ子は必ず孝行である。兄がその弟を疑わなければ弟は必ず恭しい。夫がその妻を疑わなければ妻は必ず貞節である。君がその臣を疑わなければ臣は必ず忠実である、とある。商書に、愛を立てるには親から始め、敬を立てるには年長者から始める。家と国から始めて、四海に終わる、とある。易に、二人が心を同じくすれば、その鋭さは金をも断つ。心を同じくする者の言葉は、その香りが蘭のようである、とある。これらの文はみな、不両舌戒が世俗の中に現れたありさまである。また世間では、目に見えてこの人間がいる。目に見えて人間がいれば、幽冥の中に神々がいる。この神々とこの人間とは必ず相応する。幽冥と現れた世界と、その理は違わないということだ。虞書に、上帝に類の祭りをし、六宗に禋の祭りをし、山川を望み祭り、多くの神々に遍く祭る、とある。左伝に、そもそも民は神の主である、とある。また、民が和すれば神がこれに福を降す、とある。これらはみな、神の助けがむなしくないありさまである。古くに聖賢の君が山川や多くの神々を祭ったのは、みな無駄事ではないということだ。この人と神とが相応して、禍があり福がある。みな嘘ではないのである。

解説

子華子の、疑わなければ子は孝に、臣は忠になるという言葉は、前の段の嫌疑なしの論をそのまま裏づける。書経伊訓の、愛と敬は身近な親と年長者から始めて天下に及ぼすという句、易経繋辞伝の「二人心を同じくすれば其の利金を断つ」も並ぶ。さらに尊者は、見える人間の世界と見えない神々の世界が相応すると説き、左伝の「民和して神これに福を降す」を引く。人の和が見えない助けを呼ぶという考えは、信頼し合うチームに運も味方するという実感にも重なる。

この章句が説くこと

嫌疑同心神祇和合子華子左伝

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