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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

君ノ臣ヲ用フル。其才ヲ量テ事ヲ任ス。名醫ノ藥方ヲ用ル如ト云コトシヤ。臣ノ君ニ事フル。滿分ニ君命ニ從テ。私ヲ顧ミヌト云コトシヤ。古ニ命ヲ聞テ奔走スルハ利ヲ好ム者ナリ。己ヲ直シテ道ヲ行フハ義ヲ好ム者ナリト云言モアレトモ。臣子タル者ノ大體ハ。命ヲ聞テハ奔走スベキシヤ。自他元來二ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切衆生ニ徧スル。心境元來別ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切世界ニ徧スル。凡聖元來融會ス。修證元來別ナシ。悉ク是友愛ノ心ヲ擴メ。此平等性ヲ成スル。初凡位ヨリ終リ法性相應シテ賢聖ノ地位ニ入ル。ミナ不兩舌ノ德シヤ。

新字:君ノ臣ヲ用フル。其才ヲ量テ事ヲ任ス。名医ノ薬方ヲ用ル如ト云コトシヤ。臣ノ君ニ事フル。満分ニ君命ニ従テ。私ヲ顧ミヌト云コトシヤ。古ニ命ヲ聞テ奔走スルハ利ヲ好ム者ナリ。己ヲ直シテ道ヲ行フハ義ヲ好ム者ナリト云言モアレトモ。臣子タル者ノ大体ハ。命ヲ聞テハ奔走スベキシヤ。自他元来二ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切衆生ニ遍スル。心境元来別ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切世界ニ遍スル。凡聖元来融会ス。修証元来別ナシ。悉ク是友愛ノ心ヲ擴メ。此平等性ヲ成スル。初凡位ヨリ終リ法性相応シテ賢聖ノ地位ニ入ル。ミナ不両舌ノ徳シヤ。

書き下し

君ノ臣ヲ用フル。其才ヲ量テ事ヲ任ス。名医ノ薬方ヲ用ル如ト云コトシヤ。臣ノ君ニ事フル。満分ニ君命ニ従テ。私ヲ顧ミヌト云コトシヤ。古ニ命ヲ聞テ奔走スルハ利ヲ好ム者ナリ。己ヲ直シテ道ヲ行フハ義ヲ好ム者ナリト云言モアレトモ。臣子タル者ノ大体ハ。命ヲ聞テハ奔走スベキシヤ。自他元来二ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切衆生ニ遍スル。心境元来別ナキシヤ。友愛ノ心。法性等流シテ一切世界ニ遍スル。凡聖元来融会ス。修証元来別ナシ。悉ク是友愛ノ心ヲ擴メ。此平等性ヲ成スル。初凡位ヨリ終リ法性相応シテ賢聖ノ地位ニ入ル。ミナ不両舌ノ徳シヤ。

現代語訳

君が臣を用いるには、その才を量って事を任せる。名医が薬の処方を用いるようなものだということだ。臣が君に仕えるには、十分に君命に従って、私を顧みないということだ。古くに、命を聞いて奔走するのは利を好む者である、自分を正して道を行うのは義を好む者である、という言葉もあるけれども、臣下や子である者の大体としては、命を聞いたら奔走すべきである。自と他は元来二つではない。友愛の心は法性から等しく流れ出て、一切衆生に行き渡る。心と対象は元来別ではない。友愛の心は法性から等しく流れ出て、一切世界に行き渡る。凡夫と聖者は元来溶け合っている。修行と悟りは元来別ではない。ことごとくこの友愛の心を広げ、この平等性を成就する。初めの凡夫の位から、終わりに法性と相応して賢者聖者の位に入るまで、みな不両舌の徳である。

解説

君は才を量って任せ、臣は私を顧みず命に従う、という当時の君臣の道を示したうえで、話は一気に自他不二へ深まる。自分と他人、心と対象、凡夫と聖者、修行と悟りは元来二つではなく、友愛の心はそこから流れ出て衆生と世界に行き渡る。命に従うことを説く部分は、当時の身分秩序の中での教えとして読むべきである。今日に引きつけるなら、人の才を見て任せる側の目と、自他を隔てない友愛の心こそが人を結ぶ土台だ、という点に普遍性がある。

この章句が説くこと

君臣自他不二友愛平等性法性

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