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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

又西域記ニ。摩竭陀國幼日王生擒磔迦國大族王。數其罪曰。宜從刑辟。時幼日王母。善達占相。欲一見之。幼日王命引大族至母宮中。王母曰。子其自愛。當終爾壽。已而告幼日王曰。此人餘福未盡。若殺十二年中菜色相視ト。此等モ具ニ思惟スレハ。面白キシヤ。若餘福アル者ヲ殺セハ。國ニ饑饉ノ灾アル。平等性緣起ノ中ニ信ヲ生スル一助シヤ。天地和合セヌヲ。易ニ否塞ト云。諸事ガ此處ニ敗ルシヤ。陰陽互ニ和合スルヲ。易ニハ交泰ト名ツク。萬物ガ此處ニ生育スルシヤ。古ヨリ律呂和セザレバ灾禍兆スト云ヒ。君臣和合セザレバ國家ガ治ラヌト云。父子和合セザレバ家門榮ヘヌト云。朋友和合セザレバ所作ノ事廢スルト云。兄弟親戚夫婦ミナ和合セザレバ兒孫衰減スト云。此等悉ク法性ヨリ等流シ來テ。現今世間ニ如是顯ルシヤ。

新字:又西域記ニ。摩竭陀国幼日王生擒磔迦国大族王。数其罪曰。宜従刑辟。時幼日王母。善達占相。欲一見之。幼日王命引大族至母宮中。王母曰。子其自愛。当終爾寿。已而告幼日王曰。此人余福未尽。若殺十二年中菜色相視ト。此等モ具ニ思惟スレハ。面白キシヤ。若余福アル者ヲ殺セハ。国ニ饑饉ノ災アル。平等性縁起ノ中ニ信ヲ生スル一助シヤ。天地和合セヌヲ。易ニ否塞ト云。諸事ガ此処ニ敗ルシヤ。陰陽互ニ和合スルヲ。易ニハ交泰ト名ツク。万物ガ此処ニ生育スルシヤ。古ヨリ律呂和セザレバ災禍兆スト云ヒ。君臣和合セザレバ国家ガ治ラヌト云。父子和合セザレバ家門栄ヘヌト云。朋友和合セザレバ所作ノ事廃スルト云。兄弟親戚夫婦ミナ和合セザレバ児孫衰減スト云。此等悉ク法性ヨリ等流シ来テ。現今世間ニ如是顕ルシヤ。

書き下し

又西域記ニ。摩竭陀国幼日王生擒磔迦国大族王。数其罪曰。宜従刑辟。時幼日王母。善達占相。欲一見之。幼日王命引大族至母宮中。王母曰。子其自愛。当終爾寿。已而告幼日王曰。此人余福未尽。若殺十二年中菜色相視ト。此等モ具ニ思惟スレハ。面白キシヤ。若余福アル者ヲ殺セハ。国ニ饑饉ノ灾アル。平等性縁起ノ中ニ信ヲ生スル一助シヤ。天地和合セヌヲ。易ニ否塞ト云。諸事ガ此処ニ敗ルシヤ。陰陽互ニ和合スルヲ。易ニハ交泰ト名ツク。万物ガ此処ニ生育スルシヤ。古ヨリ律呂和セザレバ灾禍兆スト云ヒ。君臣和合セザレバ国家ガ治ラヌト云。父子和合セザレバ家門栄ヘヌト云。朋友和合セザレバ所作ノ事廃スルト云。兄弟親戚夫婦ミナ和合セザレバ児孫衰減スト云。此等悉ク法性ヨリ等流シ来テ。現今世間ニ如是顕ルシヤ。

現代語訳

また西域記に次のようにある。摩竭陀国の幼日王が、磔迦国の大族王を生け捕りにし、その罪を数えて言った。刑に処するのがよい、と。そのとき幼日王の母は、占相によく通じていて、一度会ってみたいと思った。幼日王は命じて大族王を母の宮中に連れて行かせた。王母は言った。そなたは自分を大切にしなさい。寿命を全うするでしょう、と。それから幼日王に告げて言った。この人は残りの福がまだ尽きていない。もし殺せば、十二年のあいだ人々は飢えて青ざめた顔を見合わせることになる、と。これらも詳しく思いめぐらせば面白い。もし残りの福のある者を殺せば、国に飢饉の災いがある。平等性の縁起の中に信を生じる一助である。天地が和合しないのを、易では否塞という。諸事がここで敗れる。陰陽が互いに和合するのを、易では交泰と名づける。万物がここで生まれ育つ。古くから、律呂が和さなければ災禍が兆すといい、君臣が和合しなければ国家が治まらないという。父子が和合しなければ家門が栄えないという。朋友が和合しなければ為すべき事が廃れるという。兄弟・親戚・夫婦がみな和合しなければ子孫が衰えるという。これらはことごとく法性から等しく流れ出てきて、今この世間にこのように現れているのである。

解説

西域記の伝える、マガダ国の幼日王(バーラーディティヤ)が捕らえた暴君大族王(ミヒラクラ)を、母の進言で殺さなかった話を引く。福の残る者を殺せば国に飢饉が来る、という縁起の見方である。続いて易の否と泰の卦を挙げ、天地が交わらないとふさがり、交われば万物が育つと説く。君臣、父子、朋友、兄弟、夫婦のどれも、和合しなければ事が廃れる。人と人の間の通いが止まると組織が止まる、という当たり前を、尊者は宇宙の理として語っている。

この章句が説くこと

和合否泰縁起君臣西域記

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