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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

妄想相續ノ中ニ此生死アルシヤ。此生死界ニモ。平等ノ性和合ノ德ハ本來隱シ得ヌシヤ。生自カラ生ナラヌ。滅ニ對シテ假ニ生ヲ現ス。滅自カラ滅ナラス。生ニ對シテ其相ヲ顯ハス。此隱顯ヲ捨レバ世界元來不可得シヤ。凡ソ世相ヲ分別スルハ。唯コノ隱顯ノミシヤ。此生死界中。內アレハ外アル。一アレハ二生スル。萬般ノ世事紛紛トシテ起ル。此萬般事物ノ上ニモ。平等ノ性和合ノ德ハ本來隱シ得ヌシヤ。ナゼゾ。本ハ末ニ徹シテ麁細差ハヌ。末ハ本ノ如ク安立シテ左右ソノ源ニ逢フ。今日世ニ交リ人ニ朋フテ。心ニ偏黨ナク。語セサレハ止ネ。語スレハ唯此友愛親好ト倶ナルヘキコトシヤ。一言一默。人倫ノ全キ處。神祇ノ守護スル處。天命ノ在處。法性ノ隨順スル處シヤ。法トシテ如是シヤ。

新字:妄想相続ノ中ニ此生死アルシヤ。此生死界ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。生自カラ生ナラヌ。滅ニ対シテ仮ニ生ヲ現ス。滅自カラ滅ナラス。生ニ対シテ其相ヲ顕ハス。此隠顕ヲ捨レバ世界元来不可得シヤ。凡ソ世相ヲ分別スルハ。唯コノ隠顕ノミシヤ。此生死界中。内アレハ外アル。一アレハ二生スル。万般ノ世事紛紛トシテ起ル。此万般事物ノ上ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。ナゼゾ。本ハ末ニ徹シテ麁細差ハヌ。末ハ本ノ如ク安立シテ左右ソノ源ニ逢フ。今日世ニ交リ人ニ朋フテ。心ニ偏党ナク。語セサレハ止ネ。語スレハ唯此友愛親好ト倶ナルヘキコトシヤ。一言一黙。人倫ノ全キ処。神祇ノ守護スル処。天命ノ在処。法性ノ随順スル処シヤ。法トシテ如是シヤ。

書き下し

妄想相続ノ中ニ此生死アルシヤ。此生死界ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。生自カラ生ナラヌ。滅ニ対シテ仮ニ生ヲ現ス。滅自カラ滅ナラス。生ニ対シテ其相ヲ顕ハス。此隠顕ヲ捨レバ世界元来不可得シヤ。凡ソ世相ヲ分別スルハ。唯コノ隠顕ノミシヤ。此生死界中。内アレハ外アル。一アレハ二生スル。万般ノ世事紛紛トシテ起ル。此万般事物ノ上ニモ。平等ノ性和合ノ徳ハ本来隠シ得ヌシヤ。ナゼゾ。本ハ末ニ徹シテ麁細差ハヌ。末ハ本ノ如ク安立シテ左右ソノ源ニ逢フ。今日世ニ交リ人ニ朋フテ。心ニ偏党ナク。語セサレハ止ネ。語スレハ唯此友愛親好ト倶ナルヘキコトシヤ。一言一黙。人倫ノ全キ処。神祇ノ守護スル処。天命ノ在処。法性ノ随順スル処シヤ。法トシテ如是シヤ。

現代語訳

妄想が相続するなかに、この生死がある。この生死の世界にも、平等の性と和合の徳は本来隠しおおせない。生はみずから生なのではない。滅に対して仮に生を現す。滅はみずから滅なのではない。生に対してその姿を現す。この隠れると現れるを捨てれば、世界は元来とらえようがない。およそ世の姿を分別するのは、ただこの隠れと現れだけである。この生死の世界の中では、内があれば外がある。一があれば二が生じる。あらゆる世事が入り乱れて起こる。このあらゆる事物の上にも、平等の性と和合の徳は本来隠しおおせない。なぜか。本は末にまで貫いて、粗いものと細かいものに違いがない。末は本のように安らかに立って、左右どちらもその源に出会う。今日、世に交わり人と友となって、心に偏りや党派心がなく、語らないならそれまで、語るならばただこの友愛親好と共にあるべきである。一言一黙が、人倫の全いところ、神々の守護するところ、天命のあるところ、法性の随順するところである。法としてそうなのである。

解説

生は滅に対して、滅は生に対して現れる。生死も内外も一と二も、互いに依り合ってはじめて姿を持つ。その仕組みの中に平等と和合の徳が隠れようもなく働いている、と前段からの論を生死と世事に広げる。そのうえで話は日常の言葉づかいに降りてくる。語らないならそれでよし、語るなら友愛親好と共にあれ。一言一黙が人倫の全いところだという。会議や雑談で何を言い、何を言わずにおくかという、ごく身近な選択に戒の全体が宿っている、という読み方ができる。

この章句が説くこと

生死一言一黙友愛偏党和合人倫

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