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十善法語 / 巻第七・不兩舌戒

古ニ王者カ五行ノ德ヲ以テ天下ヲ治ルト云。此モ虛誕デハナイ。五行ノ官ヲ設テ民事ヲ治ルト云。此モ虛誕デハナイ。水官修テ龍ヲ馴養フ。豢龍氏有テ龍ヲ養フト云。此等モ其理アルヘキコトシヤ。馬ヲ御スル者ノ馬ノ情ヲ得ル。牛ヲ牧フ者ノ牛ノ情ヲ得ル。鳥ヲ畜フ者ノ鳥ノ情ヲ得ル。魚ヲ飼者ノ魚ノ情ヲ得ル。乃至非情萬物ニオシ亘テ。各各其性ヲ敗ラヌガ。此戒ノ趣シヤ。夏禹ノ洪水ヲ治ルハ水ノ性ニ順フト云。郭□駝カ樹ヲ植ルハ唯其性ヲ害セヌト云コトシヤ。悉ク人倫ノ全キ處。神祇ノ守護スル處。天命ノ在處。法性ニ隨順スル處シヤ。

新字:古ニ王者カ五行ノ徳ヲ以テ天下ヲ治ルト云。此モ虚誕デハナイ。五行ノ官ヲ設テ民事ヲ治ルト云。此モ虚誕デハナイ。水官修テ竜ヲ馴養フ。豢竜氏有テ竜ヲ養フト云。此等モ其理アルヘキコトシヤ。馬ヲ御スル者ノ馬ノ情ヲ得ル。牛ヲ牧フ者ノ牛ノ情ヲ得ル。鳥ヲ畜フ者ノ鳥ノ情ヲ得ル。魚ヲ飼者ノ魚ノ情ヲ得ル。乃至非情万物ニオシ亘テ。各各其性ヲ敗ラヌガ。此戒ノ趣シヤ。夏禹ノ洪水ヲ治ルハ水ノ性ニ順フト云。郭□駝カ樹ヲ植ルハ唯其性ヲ害セヌト云コトシヤ。悉ク人倫ノ全キ処。神祇ノ守護スル処。天命ノ在処。法性ニ随順スル処シヤ。

書き下し

古ニ王者カ五行ノ徳ヲ以テ天下ヲ治ルト云。此モ虚誕デハナイ。五行ノ官ヲ設テ民事ヲ治ルト云。此モ虚誕デハナイ。水官修テ竜ヲ馴養フ。豢竜氏有テ竜ヲ養フト云。此等モ其理アルヘキコトシヤ。馬ヲ御スル者ノ馬ノ情ヲ得ル。牛ヲ牧フ者ノ牛ノ情ヲ得ル。鳥ヲ畜フ者ノ鳥ノ情ヲ得ル。魚ヲ飼者ノ魚ノ情ヲ得ル。乃至非情万物ニオシ亘テ。各各其性ヲ敗ラヌガ。此戒ノ趣シヤ。夏禹ノ洪水ヲ治ルハ水ノ性ニ順フト云。郭□駝カ樹ヲ植ルハ唯其性ヲ害セヌト云コトシヤ。悉ク人倫ノ全キ処。神祇ノ守護スル処。天命ノ在処。法性ニ随順スル処シヤ。

現代語訳

古くに、王者が五行の徳によって天下を治めたという。これも作り話ではない。五行の官を設けて民の事を治めたという。これも作り話ではない。水の官が職務を修めて龍を馴らし養った。豢龍氏がいて龍を養ったという。これらもその理があるはずのことである。馬を御する者は馬の心をつかむ。牛を飼う者は牛の心をつかむ。鳥を飼う者は鳥の心をつかむ。魚を飼う者は魚の心をつかむ。さらには心のない万物にまで押し広げて、それぞれその性質を損なわないのが、この戒の趣である。夏の禹が洪水を治めたのは水の性質に従ったのだという。郭□駝(郭橐駝)が樹を植えるのは、ただその性質を害さないのだということだ。ことごとく、人倫の全いところ、神々の守護するところ、天命のあるところ、法性に随順するところである。

解説

和合の徳を、相手の性質を損なわないことと言いかえる段である。左伝に、古代には五行の官があり、豢龍氏が龍を養ったという伝承が見える。馬には馬の、牛には牛の心があり、それをつかむ者がうまく扱える。禹は水をせき止めずに流れに従って治水し、柳宗元の「種樹郭橐駝伝」の植木職人郭橐駝は、木の本性を害さないだけだと語った。人を育てるときも、こちらの型に押し込むより、その人の性質を見て損なわないことが要になる、と読める。

この章句が説くこと

本性五行治水不両舌郭橐駝天命

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