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十善法語 / 巻第六・不惡口戒

知ル者ハ五百塵點却已前ニ相知ル。知ラヌ者ハ唯此因緣說ノミシヤ。此ニ由テ佛性ヲ禮拜恭敬スレハ無量ノ功德ヲ得ル。惡口スレハ大罪ヲ得ル。眞正ノ道人第一義ニ入テ緣起ノ相ヲ壞セス。其罪ノアルコトヲ知ル。其功德ノアルコトヲ知ル。一切衆生業風ニ吹マトハサレテ。此ニ死シ彼ニ生スルコト。譬ヘハ空中ニ浮フ雲ノ如シヤ。風ニ隨テ合ス。合スレハ同一ノ雲シヤ。風ニ隨テ離散ス。離散スレハ百千萬ノ雲シヤ。一切衆生カ自性空中ニ起滅シテ。彼アリ此アルニ似ル。貴アリ賤アルニ似ル。智愚賢不肖アルニ似ル。此法性緣起ノ中ニ常不輕菩薩ノ行ト云ハ。强テ道ノホトリ。市町ノ中ニ在テ禮拜スルコトデナイ。中下等ノ人ニ對シテ足恭スルコトテハナイ。眞正ニ此戒ヲ護持スル者ハ道路街衢ノ中。タトヒ人ドメヲサセテモ。先ハラヒヲサセテモ。如說修行ノアルベキコトシヤ。

新字:知ル者ハ五百塵点却已前ニ相知ル。知ラヌ者ハ唯此因縁説ノミシヤ。此ニ由テ仏性ヲ礼拝恭敬スレハ無量ノ功徳ヲ得ル。悪口スレハ大罪ヲ得ル。真正ノ道人第一義ニ入テ縁起ノ相ヲ壊セス。其罪ノアルコトヲ知ル。其功徳ノアルコトヲ知ル。一切衆生業風ニ吹マトハサレテ。此ニ死シ彼ニ生スルコト。譬ヘハ空中ニ浮フ雲ノ如シヤ。風ニ随テ合ス。合スレハ同一ノ雲シヤ。風ニ随テ離散ス。離散スレハ百千万ノ雲シヤ。一切衆生カ自性空中ニ起滅シテ。彼アリ此アルニ似ル。貴アリ賤アルニ似ル。智愚賢不肖アルニ似ル。此法性縁起ノ中ニ常不軽菩薩ノ行ト云ハ。強テ道ノホトリ。市町ノ中ニ在テ礼拝スルコトデナイ。中下等ノ人ニ対シテ足恭スルコトテハナイ。真正ニ此戒ヲ護持スル者ハ道路街衢ノ中。タトヒ人ドメヲサセテモ。先ハラヒヲサセテモ。如説修行ノアルベキコトシヤ。

書き下し

知ル者ハ五百塵点却已前ニ相知ル。知ラヌ者ハ唯此因縁説ノミシヤ。此ニ由テ仏性ヲ礼拝恭敬スレハ無量ノ功徳ヲ得ル。悪口スレハ大罪ヲ得ル。真正ノ道人第一義ニ入テ縁起ノ相ヲ壊セス。其罪ノアルコトヲ知ル。其功徳ノアルコトヲ知ル。一切衆生業風ニ吹マトハサレテ。此ニ死シ彼ニ生スルコト。譬ヘハ空中ニ浮フ雲ノ如シヤ。風ニ随テ合ス。合スレハ同一ノ雲シヤ。風ニ随テ離散ス。離散スレハ百千万ノ雲シヤ。一切衆生カ自性空中ニ起滅シテ。彼アリ此アルニ似ル。貴アリ賤アルニ似ル。智愚賢不肖アルニ似ル。此法性縁起ノ中ニ常不軽菩薩ノ行ト云ハ。强テ道ノホトリ。市町ノ中ニ在テ礼拝スルコトデナイ。中下等ノ人ニ対シテ足恭スルコトテハナイ。真正ニ此戒ヲ護持スル者ハ道路街衢ノ中。タトヒ人ドメヲサセテモ。先ハラヒヲサセテモ。如説修行ノアルベキコトシヤ。

現代語訳

知る者は五百塵点劫の昔から互いに知っている。知らない者にはただこの因縁の説があるだけである。これによって仏性を礼拝し恭敬すれば無量の功徳を得る。悪口すれば大罪を得る。真正の道人は第一義に入っても縁起の相を壊さない。その罪のあることを知る。その功徳のあることを知る。一切の衆生が業の風に吹きまとわされて、ここで死にあちらで生まれることは、譬えれば空中に浮かぶ雲のようである。風に従って合わさる。合わされば同じ一つの雲である。風に従って離れ散る。離れ散れば百千万の雲である。一切の衆生が自性の空の中に起こり滅して、彼があり此があるように見え、貴があり賤があるように見え、智と愚、賢と不肖があるように見える。この法性の縁起の中で常不軽菩薩の行というのは、強いて道端や町の中で礼拝することではない。中・下の人に対して過度にへりくだることではない。真正にこの戒を護持する者は、道路や街中で、たとえ人止めをさせても、先払いをさせても、説のとおりの修行があるはずのことである。

解説

巻六の結びである。衆生は業の風に吹かれる雲のように、集まれば一つ、散れば無数に見え、貴賤や賢愚の違いがあるように見えるだけだという。そのうえで慈雲は、常不軽菩薩の行とは道端で人を拝んで回ることでも、目下の人に卑屈にへりくだることでもないと釘を刺す。身分ある人が行列の人払いをさせる立場にあっても、心の中で人の仏性を敬うことができれば、それが経の説くとおりの修行だという。形ではなく心で人を侮らないことを、自分の立場のまま実践せよという教えである。

この章句が説くこと

常不軽仏性縁起不悪口修行

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