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十善法語 / 巻第六・不惡口戒

三業ノ惡口ナケレハ。其人ヲ德者ト名ツクル。此ニ關ルコト有レハ。德者トハ名ツケラレヌシヤ。老人モシ此戒ヲ愼マサレハ。世ニ處シテ辱カ多イシヤ。貴人モシ此戒ヲ愼子ハ。下ヨリ上ヲ侮ル。君父モシ此戒ヲ謹ネハ子弟ノ侮ヲウクル。古ヨリ亂臣賊子アル。多ハ自ラ招トコロシヤ。富者モシ憍慢輕躁ナレハ。資財減損スル。孤弱ノ者モシ憍慢輕躁ナレハ。自ラ身ヲ置クニ所カナイ。上下貴賤。ソノ品ハ別アレトモ。日夜ニ戰戰兢兢トシテ自ラ許サレヌハ一シヤ。德建チ壽全ク。位ウコキナク。財物足リ。子弟淳厚。神靈護スレハ。此樂言ノ宣ヘキ所テハナイ。誠ニ大人ノ大人タル所。德者ノ德者タル所。コトコトク此戒ニアルヘキシヤ。

新字:三業ノ悪口ナケレハ。其人ヲ徳者ト名ツクル。此ニ関ルコト有レハ。徳者トハ名ツケラレヌシヤ。老人モシ此戒ヲ慎マサレハ。世ニ処シテ辱カ多イシヤ。貴人モシ此戒ヲ慎子ハ。下ヨリ上ヲ侮ル。君父モシ此戒ヲ謹ネハ子弟ノ侮ヲウクル。古ヨリ乱臣賊子アル。多ハ自ラ招トコロシヤ。富者モシ憍慢軽躁ナレハ。資財減損スル。孤弱ノ者モシ憍慢軽躁ナレハ。自ラ身ヲ置クニ所カナイ。上下貴賤。ソノ品ハ別アレトモ。日夜ニ戦戦兢兢トシテ自ラ許サレヌハ一シヤ。徳建チ寿全ク。位ウコキナク。財物足リ。子弟淳厚。神霊護スレハ。此楽言ノ宣ヘキ所テハナイ。誠ニ大人ノ大人タル所。徳者ノ徳者タル所。コトコトク此戒ニアルヘキシヤ。

書き下し

三業ノ悪口ナケレハ。其人ヲ徳者ト名ツクル。此ニ関ルコト有レハ。徳者トハ名ツケラレヌシヤ。老人モシ此戒ヲ慎マサレハ。世ニ処シテ辱カ多イシヤ。貴人モシ此戒ヲ慎子ハ。下ヨリ上ヲ侮ル。君父モシ此戒ヲ謹ネハ子弟ノ侮ヲウクル。古ヨリ乱臣賊子アル。多ハ自ラ招トコロシヤ。富者モシ憍慢軽躁ナレハ。資財減損スル。孤弱ノ者モシ憍慢軽躁ナレハ。自ラ身ヲ置クニ所カナイ。上下貴賤。ソノ品ハ別アレトモ。日夜ニ戦戦兢兢トシテ自ラ許サレヌハ一シヤ。徳建チ寿全ク。位ウコキナク。財物足リ。子弟淳厚。神霊護スレハ。此楽言ノ宣ヘキ所テハナイ。誠ニ大人ノ大人タル所。徳者ノ徳者タル所。コトコトク此戒ニアルヘキシヤ。

現代語訳

三業の悪口がなければ、その人を徳ある者と名づける。これに欠けることがあれば、徳ある者とは名づけられないのである。老人がもしこの戒を慎まなければ、世に処して辱めが多いのである。貴人がもしこの戒を慎まなければ、下から上を侮る。君主や父がもしこの戒を謹まなければ、子弟の侮りを受ける。昔から乱臣賊子があるのは、多くは自ら招くところである。富者がもし驕り高ぶって軽はずみであれば、資財は減り損なわれる。孤立した弱い者がもし驕り高ぶって軽はずみであれば、自ら身を置く所がない。上下貴賤、その品は別であっても、日夜に戦々兢々として自らを許さないことは一つである。徳が立ち、寿命が全うされ、位が揺るがず、財物が足り、子弟が淳朴で厚く、神霊が護れば、この楽しみは言葉で言い表せるところではない。まことに大人が大人である所以、徳ある者が徳ある者である所以は、ことごとくこの戒にあるはずである。

解説

身口意のどこにも人を侮る悪口がない人を徳ある者と呼ぶ、と慈雲は定める。老人が慎まなければ辱めを受け、貴人が慎まなければ下から侮られ、君主や親が慎まなければ子弟に侮られる。昔から主君に背く臣や親に背く子が出るのも、多くは上の者が自ら招いたものだという指摘は厳しい。立場は違っても、日々戦々兢々と自分を許さない点は同じである。部下や子どもに軽んじられていると感じるとき、まず自分の侮りを省みることを促す一節である。

この章句が説くこと

徳者悪口戦々兢々侮り慎み

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