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十善法語 / 巻第六・不惡口戒

安永三年甲午二月八日示衆。師云。第六ハ他ヲ侮ラヌ法シヤ。此法ヲ不惡口戒ト云。又ハ不麁惡語戒ト名ツクル。上中下等ノ人ニ對シテ麁言ヲ以テ罵詈スル。是ヲ惡口ト云。此惡口ノ鄙劣ナルコトヲ知テ。口業ヲ守リ。柔輕語ニ順スルヲ。不惡口ト云。法有テ此不惡口ヲ護スルヲ不惡口戒ト名ツクル。其戒相ヲ言ハ。下賤ナル者ヲ下賤ト云ヒ。愚癡ナル者ヲ愚者ト言ヒ。形不具足ナル者ヲカタハモノト云類。盡ク此戒ノ違犯シヤ。若ハ上等ノ人ヲ中等ニ言ヒ下シ。中等ヲ下等ニ言ヒ下シ。ヒキコナサレヌ人ヲ引コナシテ言フ類ハ。此戒增上ノ違犯シヤ。若ハ種類ヲ擧テ。輕躁ナル者ヲ猿ニ比シ。暴惡ナル者ヲ豺狼ニ比シ。愚昧ナル者ヲ蟲蟻ニ比シテ毀呰スル類ハ。尤甚シキコトシヤ。

新字:安永三年甲午二月八日示衆。師云。第六ハ他ヲ侮ラヌ法シヤ。此法ヲ不悪口戒ト云。又ハ不麁悪語戒ト名ツクル。上中下等ノ人ニ対シテ麁言ヲ以テ罵詈スル。是ヲ悪口ト云。此悪口ノ鄙劣ナルコトヲ知テ。口業ヲ守リ。柔軽語ニ順スルヲ。不悪口ト云。法有テ此不悪口ヲ護スルヲ不悪口戒ト名ツクル。其戒相ヲ言ハ。下賤ナル者ヲ下賤ト云ヒ。愚痴ナル者ヲ愚者ト言ヒ。形不具足ナル者ヲカタハモノト云類。尽ク此戒ノ違犯シヤ。若ハ上等ノ人ヲ中等ニ言ヒ下シ。中等ヲ下等ニ言ヒ下シ。ヒキコナサレヌ人ヲ引コナシテ言フ類ハ。此戒增上ノ違犯シヤ。若ハ種類ヲ挙テ。軽躁ナル者ヲ猿ニ比シ。暴悪ナル者ヲ豺狼ニ比シ。愚昧ナル者ヲ虫蟻ニ比シテ毀呰スル類ハ。尤甚シキコトシヤ。

書き下し

安永三年甲午二月八日示衆。師云。第六ハ他ヲ侮ラヌ法シヤ。此法ヲ不悪口戒ト云。又ハ不麁悪語戒ト名ツクル。上中下等ノ人ニ対シテ麁言ヲ以テ罵詈スル。是ヲ悪口ト云。此悪口ノ鄙劣ナルコトヲ知テ。口業ヲ守リ。柔軽語ニ順スルヲ。不悪口ト云。法有テ此不悪口ヲ護スルヲ不悪口戒ト名ツクル。其戒相ヲ言ハ。下賤ナル者ヲ下賤ト云ヒ。愚痴ナル者ヲ愚者ト言ヒ。形不具足ナル者ヲカタハモノト云類。尽ク此戒ノ違犯シヤ。若ハ上等ノ人ヲ中等ニ言ヒ下シ。中等ヲ下等ニ言ヒ下シ。ヒキコナサレヌ人ヲ引コナシテ言フ類ハ。此戒增上ノ違犯シヤ。若ハ種類ヲ挙テ。軽躁ナル者ヲ猿ニ比シ。暴悪ナル者ヲ豺狼ニ比シ。愚昧ナル者ヲ虫蟻ニ比シテ毀呰スル類ハ。尤甚シキコトシヤ。

現代語訳

安永三年(一七七四)二月八日、大衆に示された。師は言われた。第六は他人を侮らない法である。この法を不悪口戒と言う。また不麁悪語戒とも名づける。上・中・下などの人に対して、荒々しい言葉で罵ることを悪口と言う。この悪口が卑しく劣ったものであることを知って、口の業を守り、柔らかな言葉に従うことを不悪口と言う。法があってこの不悪口を護ることを不悪口戒と名づける。その戒の相を言えば、身分の低い者を下賤と言い、愚かな者を愚か者と言い、身体に障害のある者をかたわ者と言う類は、ことごとくこの戒の違反である。あるいは上の立場の人を中の立場に言い下し、中の人を下の立場に言い下し、けなされるいわれのない人をけなして言う類は、この戒のさらに重い違反である。あるいは生き物の類を挙げて、軽はずみな者を猿にたとえ、乱暴な者を山犬や狼にたとえ、愚かな者を虫や蟻にたとえてそしる類は、最も甚だしいことである。

解説

巻六は十善の第六、不悪口戒を説く。慈雲はこれを一言で、他を侮らぬ法と定める。身分の低い人を下賤と呼ぶ、愚かな人を愚か者と呼ぶ、身体に障害のある人を蔑称で呼ぶことは、たとえ事実に基づいていても戒を破る。相手を実際より下に言い下すのはさらに重く、人を猿や狼や虫にたとえて罵るのは最も甚だしいという。悪口の本質を言葉の荒さだけでなく、相手を侮る心に見ている点が要である。職場で人を呼ぶ言葉や陰でのあだ名を見直す手がかりになる。

この章句が説くこと

不悪口侮り柔軟語十善口業

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