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十善法語 / 巻第六・不惡口戒

今此人間世界。肉眼ニ見ル所ハ。處トシテ人間ナラサルハナク。禽獸草木ニ至ルマテ。コトコトク人間所用ノ爲ニ世ニ生育セルモノシヤ。假令此海ヲ超エ。彼山ヲ越エ。千里萬里ノ外ニ往トモ。無量億ノ國土ヲ過ルトモ。唯此人間世界涯際ナキト云コトシヤ。若鬼神部族ナル者有テ。鬼眼ヲ以テ見レハ。到處カ鬼類鬼界テ。山川草木モコトコトク鬼類相應ノ鬼世界ナルト云コトシヤ。

新字:今此人間世界。肉眼ニ見ル所ハ。処トシテ人間ナラサルハナク。禽獣草木ニ至ルマテ。コトコトク人間所用ノ為ニ世ニ生育セルモノシヤ。仮令此海ヲ超エ。彼山ヲ越エ。千里万里ノ外ニ往トモ。無量億ノ国土ヲ過ルトモ。唯此人間世界涯際ナキト云コトシヤ。若鬼神部族ナル者有テ。鬼眼ヲ以テ見レハ。到処カ鬼類鬼界テ。山川草木モコトコトク鬼類相応ノ鬼世界ナルト云コトシヤ。

書き下し

今此人間世界。肉眼ニ見ル所ハ。処トシテ人間ナラサルハナク。禽獣草木ニ至ルマテ。コトコトク人間所用ノ為ニ世ニ生育セルモノシヤ。仮令此海ヲ超エ。彼山ヲ越エ。千里万里ノ外ニ往トモ。無量億ノ国土ヲ過ルトモ。唯此人間世界涯際ナキト云コトシヤ。若鬼神部族ナル者有テ。鬼眼ヲ以テ見レハ。到処カ鬼類鬼界テ。山川草木モコトコトク鬼類相応ノ鬼世界ナルト云コトシヤ。

現代語訳

今この人間世界は、肉眼に見るところでは、どこも人間の場所でないところはなく、禽獣草木に至るまで、ことごとく人間が用いるためにこの世に生育したものである。たとえこの海を越え、あの山を越え、千里万里の外に行っても、無量億の国土を過ぎても、ただこの人間世界に果てがない、ということである。もし鬼神の部族の者がいて、鬼の眼で見れば、至る所が鬼の類、鬼の世界であって、山川草木もことごとく鬼の類に相応した鬼の世界である、ということである。

解説

同じ世界も、見る者によってまったく違って見えると説く段である。人の目には、どこまで行っても人間の世界が広がり、鳥獣草木も人の役に立つために生えているように見える。しかし鬼神の目で見れば、同じ山川草木がすべて鬼の世界に見えるという。これは慈雲が仏教の世界観に沿って語ったものである。自分の立場から見えている世界を唯一の世界と思い込む危うさは、今日の私たちにも当てはまる。相手には別の景色が見えているかもしれないと想像する力を促している。

この章句が説くこと

世界観視点鬼神人間界

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