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十善法語 / 巻第六・不惡口戒

世間法ノ中ニ。孔子カ原壤ヲ責テ。幼シテ遜弟ナラス。長シテ述ラルルコトナク。老テ死セザル。コレヲ賊トスト。周ノ武王カ殷紂王ヲ罵テ。獨夫受洪惟作威。乃汝也讐ト云シ類。若ハ國法ヲ犯シ。不忠不義。國事ニ惰アル類。ミナ呵責ヲ用フ。此ハ惡口トハセヌシヤ。大抵慈悲心孝順心ト相應スレハ。ミナ破戒ナラヌシヤ。華嚴經ノ中ニ。佛子。惡口之罪亦使衆生墮三惡道トアル。是異熟果シヤ。若生人中得二種果報。一常聞惡聲。二言多諍訟トアル。是等流果シヤ。餘文ニ外ノ器世間マテモ荊棘ト鹵莽多キトアル。是增上果シヤ。

新字:世間法ノ中ニ。孔子カ原壤ヲ責テ。幼シテ遜弟ナラス。長シテ述ラルルコトナク。老テ死セザル。コレヲ賊トスト。周ノ武王カ殷紂王ヲ罵テ。独夫受洪惟作威。乃汝也讐ト云シ類。若ハ国法ヲ犯シ。不忠不義。国事ニ惰アル類。ミナ呵責ヲ用フ。此ハ悪口トハセヌシヤ。大抵慈悲心孝順心ト相応スレハ。ミナ破戒ナラヌシヤ。華厳経ノ中ニ。仏子。悪口之罪亦使衆生堕三悪道トアル。是異熟果シヤ。若生人中得二種果報。一常聞悪声。二言多諍訟トアル。是等流果シヤ。余文ニ外ノ器世間マテモ荊棘ト鹵莽多キトアル。是增上果シヤ。

書き下し

世間法ノ中ニ。孔子カ原壤ヲ責テ。幼シテ遜弟ナラス。長シテ述ラルルコトナク。老テ死セザル。コレヲ賊トスト。周ノ武王カ殷紂王ヲ罵テ。独夫受洪惟作威。乃汝也讐ト云シ類。若ハ国法ヲ犯シ。不忠不義。国事ニ惰アル類。ミナ呵責ヲ用フ。此ハ悪口トハセヌシヤ。大抵慈悲心孝順心ト相応スレハ。ミナ破戒ナラヌシヤ。華厳経ノ中ニ。仏子。悪口之罪亦使衆生堕三悪道トアル。是異熟果シヤ。若生人中得二種果報。一常聞悪声。二言多諍訟トアル。是等流果シヤ。余文ニ外ノ器世間マテモ荊棘ト鹵莽多キトアル。是增上果シヤ。

現代語訳

世間の法の中では、孔子が原壌を責めて、幼くして謙遜でなく、長じて称えられることもなく、老いて死なない。これを賊という、と言った。周の武王が殷の紂王を罵って、独夫の受(紂)は大いに威をふるう。これこそお前たちの仇である、と言った類。あるいは国法を犯し、不忠不義で、国事に怠りのある類には、みな叱責を用いる。これは悪口とはしないのである。おおよそ慈悲の心や孝順の心と相応すれば、みな破戒にはならないのである。華厳経の中に、仏子よ、悪口の罪もまた衆生を三悪道に堕とす、とある。これが異熟果である。もし人の中に生まれても、二種の果報を得る。一つには常に悪い声を聞き、二つには言葉に争いや訴えが多い、とある。これが等流果である。ほかの文に、外の器世間までも茨と荒れ地が多い、とある。これが増上果である。

解説

世間の例として、孔子が礼をわきまえない旧友の原壌を責めた言葉、周の武王が紂王を独夫と呼んだ言葉を挙げ、国法を犯す者や不忠不義の者を叱るのも悪口ではないという。基準は、その叱責が慈悲や孝順の心と相応しているかどうかである。そのうえで華厳経に基づき、悪口の報いとして、悪道に堕ちる異熟果、常に悪い噂を聞き争いが絶えない等流果、茨や荒れ地の多い環境に住む増上果を示す。叱る言葉の根に思いやりがあるかを確かめる大切さを教える一節である。

この章句が説くこと

慈悲叱責悪口因果華厳経

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