師導古典を学びたいすべての人に

十善法語 / 巻第五・不綺語戒

出世間ニ在テハ四部七衆ト云。同一佛子ノ中ニ。無爲ニ隨順スル邊ニ此差排ヲ說ク。此中自調自度ノ行ヲ聲聞乘ト云。五欲ノ繫縛ヲ超過シテ欲界ノ外ニ遊フ。思想ノ轉變ヲ解脫シ三界ノ外ニ遊フ。初心ヨリ後心ニ至リ。綺語ニ隨順スベキ暇ハアルマシキシヤ。自利利他兼運ヒ。人法二空兼達スルヲ。菩薩ト名ツクル。此人アリテ法ヲ護持スル。上佛種ヲ紹ク。下衆生ヲ救拔スル。此ニ出家ノ菩薩アリ。在家ノ菩薩アルシヤ。出家ノ菩薩ノ中ニ。菩薩沙彌。菩薩比丘有テ。五衆ノ階級亂レヌシヤ。此中戒具足セルヲ比丘ト名ツク。五衆ノ首シヤ。此衆和合ノ上ニ。僧ノ名ヲ立スル。頭髪既ニ剃除ス。寶冠瓔珞其飾永ク絕ス。世間ノ階位ヲ超過セル儀シヤ。俗服既ニ脫去ス。劒佩ノ飾永ク絕ス。世間四民ノ攝デナキシヤ。童眞入道。君臣ノ義此生ニナシ。夫婦ノ愛此生ニナキシヤ。ミナ塵俗ヲ離レシ儀シヤ。經中ニ此喩アルシヤ。栴檀樹初テ芽出ルトキ。餘ノ雜木ノ香ヲ奪フ。迦陵頻伽糓中ニ在テ。其聲餘鳥ニ勝ルル如クト。少分モ此境界ニ相應セバ。此樂世間ニ類セヌ。絲竹管絃ノ及フ所ニアラズシヤ。

新字:出世間ニ在テハ四部七衆ト云。同一仏子ノ中ニ。無為ニ随順スル辺ニ此差排ヲ説ク。此中自調自度ノ行ヲ声聞乗ト云。五欲ノ繋縛ヲ超過シテ欲界ノ外ニ遊フ。思想ノ転変ヲ解脱シ三界ノ外ニ遊フ。初心ヨリ後心ニ至リ。綺語ニ随順スベキ暇ハアルマシキシヤ。自利利他兼運ヒ。人法二空兼達スルヲ。菩薩ト名ツクル。此人アリテ法ヲ護持スル。上仏種ヲ紹ク。下衆生ヲ救抜スル。此ニ出家ノ菩薩アリ。在家ノ菩薩アルシヤ。出家ノ菩薩ノ中ニ。菩薩沙弥。菩薩比丘有テ。五衆ノ階級乱レヌシヤ。此中戒具足セルヲ比丘ト名ツク。五衆ノ首シヤ。此衆和合ノ上ニ。僧ノ名ヲ立スル。頭髪既ニ剃除ス。宝冠瓔珞其飾永ク絶ス。世間ノ階位ヲ超過セル儀シヤ。俗服既ニ脱去ス。劒佩ノ飾永ク絶ス。世間四民ノ摂デナキシヤ。童真入道。君臣ノ義此生ニナシ。夫婦ノ愛此生ニナキシヤ。ミナ塵俗ヲ離レシ儀シヤ。経中ニ此喩アルシヤ。栴檀樹初テ芽出ルトキ。余ノ雑木ノ香ヲ奪フ。迦陵頻伽糓中ニ在テ。其声余鳥ニ勝ルル如クト。少分モ此境界ニ相応セバ。此楽世間ニ類セヌ。糸竹管絃ノ及フ所ニアラズシヤ。

書き下し

出世間ニ在テハ四部七衆ト云。同一仏子ノ中ニ。無為ニ随順スル辺ニ此差排ヲ説ク。此中自調自度ノ行ヲ声聞乗ト云。五欲ノ繋縛ヲ超過シテ欲界ノ外ニ遊フ。思想ノ転変ヲ解脱シ三界ノ外ニ遊フ。初心ヨリ後心ニ至リ。綺語ニ随順スベキ暇ハアルマシキシヤ。自利利他兼運ヒ。人法二空兼達スルヲ。菩薩ト名ツクル。此人アリテ法ヲ護持スル。上仏種ヲ紹ク。下衆生ヲ救抜スル。此ニ出家ノ菩薩アリ。在家ノ菩薩アルシヤ。出家ノ菩薩ノ中ニ。菩薩沙弥。菩薩比丘有テ。五衆ノ階級乱レヌシヤ。此中戒具足セルヲ比丘ト名ツク。五衆ノ首シヤ。此衆和合ノ上ニ。僧ノ名ヲ立スル。頭髪既ニ剃除ス。宝冠瓔珞其飾永ク絶ス。世間ノ階位ヲ超過セル儀シヤ。俗服既ニ脱去ス。劒佩ノ飾永ク絶ス。世間四民ノ摂デナキシヤ。童真入道。君臣ノ義此生ニナシ。夫婦ノ愛此生ニナキシヤ。ミナ塵俗ヲ離レシ儀シヤ。経中ニ此喩アルシヤ。栴檀樹初テ芽出ルトキ。余ノ雑木ノ香ヲ奪フ。迦陵頻伽糓中ニ在テ。其声余鳥ニ勝ルル如クト。少分モ此境界ニ相応セバ。此楽世間ニ類セヌ。糸竹管絃ノ及フ所ニアラズシヤ。

現代語訳

出世間にあっては、四部七衆と言う。同じ一つの仏子の中で、無為(悟り)に随う面においてこの区別を説く。この中、自ら調え自ら度する行を声聞乗と言う。五欲の束縛を超えて欲界の外に遊ぶ。思いの移り変わりから解脱して三界の外に遊ぶ。初心から後の心に至るまで、綺語に従う暇はないはずである。自利と利他をともに運び、人空と法空をともに達するのを、菩薩と名づける。この人があって法を護持する。上は仏の種を継ぎ、下は衆生を救い抜く。ここに出家の菩薩があり、在家の菩薩があるのである。出家の菩薩の中に、菩薩沙弥、菩薩比丘があって、五衆の階級は乱れないのである。この中で戒を具足したのを比丘と名づける。五衆の首である。この衆が和合したところに、僧の名を立てる。頭髪はすでに剃り除いた。宝冠や瓔珞の飾りは永く絶えた。世間の階位を超えた姿である。俗服はすでに脱ぎ去った。剣を佩びる飾りは永く絶えた。世間の四民に属するものではないのである。童真のまま道に入る。君臣の義はこの生にない。夫婦の愛はこの生にないのである。みな塵俗を離れた姿である。経の中にこのたとえがあるのである。栴檀の樹は初めて芽を出す時に、ほかの雑木の香りを奪う。迦陵頻伽は卵の殻の中にあって、その声がほかの鳥に勝る、と。少しでもこの境界に相応するなら、この楽しみは世間に類がない。糸竹管絃の及ぶところではないのである。

解説

話は世俗の身分から出家の世界へ移る。四部七衆とは比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷などからなる仏教教団の構成である。自らを調える声聞乗、自利と利他をともに行い人と法の二つの空を悟る菩薩が説かれ、さらに具足戒を受けた比丘が五衆の首として位置づけられる。剃髪し俗服を脱ぎ、世間の階位や君臣夫婦の縁を離れた姿である。栴檀は芽のうちから香り、迦陵頻伽は殻の中から美声を放つというたとえは、道に入った者は初心のうちから世俗と違う香りを放つことを示す。

この章句が説くこと

菩薩自利利他比丘出家栴檀迦陵頻伽

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる