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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

梵網經ニ。孝順父母師僧三寶。孝順至道之法。孝名爲戒。亦名制止トアル存生ノトキハ事フル。死後ハ思フ。終身父母ノ道ヲ改メス。父母ノ志ヲ守ル。其ウケ繼來ル業ニ安ンスル。父母愛念ス。甘露ヲ飮カ如ク。父母呵責ス。甘露ヲ飮カ如シ。此處樂アルベシ。絲竹管絃ヲ假テ樂ベキデナイ。況テ綺語ノ樂トハ天地懸隔ナルシヤ。若或ハ一念父母ノ志ヲモトカシク思フ。其恩ヲ歉ラヌ樣ニ思フ。皆灾害ノ種ヲ長シ。惡趣ノ門ヲ開ク。

新字:梵網経ニ。孝順父母師僧三宝。孝順至道之法。孝名為戒。亦名制止トアル存生ノトキハ事フル。死後ハ思フ。終身父母ノ道ヲ改メス。父母ノ志ヲ守ル。其ウケ継来ル業ニ安ンスル。父母愛念ス。甘露ヲ飲カ如ク。父母呵責ス。甘露ヲ飲カ如シ。此処楽アルベシ。糸竹管絃ヲ仮テ楽ベキデナイ。況テ綺語ノ楽トハ天地懸隔ナルシヤ。若或ハ一念父母ノ志ヲモトカシク思フ。其恩ヲ歉ラヌ様ニ思フ。皆災害ノ種ヲ長シ。悪趣ノ門ヲ開ク。

書き下し

梵網経ニ。孝順父母師僧三宝。孝順至道之法。孝名為戒。亦名制止トアル存生ノトキハ事フル。死後ハ思フ。終身父母ノ道ヲ改メス。父母ノ志ヲ守ル。其ウケ継来ル業ニ安ンスル。父母愛念ス。甘露ヲ飲カ如ク。父母呵責ス。甘露ヲ飲カ如シ。此処楽アルベシ。糸竹管絃ヲ仮テ楽ベキデナイ。況テ綺語ノ楽トハ天地懸隔ナルシヤ。若或ハ一念父母ノ志ヲモトカシク思フ。其恩ヲ歉ラヌ様ニ思フ。皆灾害ノ種ヲ長シ。悪趣ノ門ヲ開ク。

現代語訳

梵網経に、父母・師僧・三宝に孝順せよ、孝順は至道の法である、孝を名づけて戒とし、また制止と名づける、とある。生きている時は仕え、死後は思う。生涯、父母の道を改めない。父母の志を守る。その受け継いできた業に安んずる。父母が愛しみ思ってくれるのは、甘露を飲むようである。父母が叱り責めるのも、甘露を飲むようである。ここに楽しみがあるはずである。糸竹管絃を借りて楽しむべきものではない。まして綺語の楽しみとは天と地ほどかけ離れているのである。もしあるいは一念でも父母の志をもどかしく思う、その恩を足りないように思う、みな災害の種を育て、悪趣の門を開く。

解説

『梵網経』の「孝順は至道の法なり、孝を名づけて戒と為す」を引き、孝がそのまま戒であると示す段である。十善戒を説く尊者にとって、孝は戒の外にある儒教道徳ではなく、仏道の中心にあるものだった。生前は仕え、死後は思い、父母の道を三年改めないという『論語』の教えも重ねられる。親に褒められても叱られても甘露のように受け取るところに楽しみがあり、一念でも親の恩を足りないと思えば災いの種になるという。感謝を忘れた心の危うさを戒めている。

この章句が説くこと

梵網経感謝悪趣

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