十善法語 / 巻第五・不綺語戒
陰陽師巫祝ノ類モ其道アルヘク。其道ニ樂ノアルベキコトシヤ。陰陽消長ノ理。天地四方ヲ該子。古往今來ニ亘ル。此陰陽消長。人間ノ吉凶悔吝ト成ルモ。面白カルベシ。總束シテ太極ヲ立ル。天文ノ奇ヲアラハシ。地理ノ偶ヲアラハス。面白カルベシ。此太極モ此兩儀モ今日事物ノ上ニ具テ相違セヌト云。陰ヨリ陽ヲ生シ。陽ヨリ陰ヲ生シテ四象トナル。此四象カ今日人事物類ノ上ニ顯レテ相違セヌト云。天地ノ理生生シテ已ムコトナク。四象ヨリ八卦ヲ生ス。八卦ノ中ニ人倫父子ノ象ヲ顯ハス。天地日月星辰山川ノ象ヲ顯ハスト云シヤ。是ヲ以テ樂トセハ。漸次ニ聖賢ノ地位ニモ入ベキシヤ。
新字:陰陽師巫祝ノ類モ其道アルヘク。其道ニ楽ノアルベキコトシヤ。陰陽消長ノ理。天地四方ヲ該子。古往今来ニ亘ル。此陰陽消長。人間ノ吉凶悔吝ト成ルモ。面白カルベシ。総束シテ太極ヲ立ル。天文ノ奇ヲアラハシ。地理ノ偶ヲアラハス。面白カルベシ。此太極モ此両儀モ今日事物ノ上ニ具テ相違セヌト云。陰ヨリ陽ヲ生シ。陽ヨリ陰ヲ生シテ四象トナル。此四象カ今日人事物類ノ上ニ顕レテ相違セヌト云。天地ノ理生生シテ已ムコトナク。四象ヨリ八卦ヲ生ス。八卦ノ中ニ人倫父子ノ象ヲ顕ハス。天地日月星辰山川ノ象ヲ顕ハスト云シヤ。是ヲ以テ楽トセハ。漸次ニ聖賢ノ地位ニモ入ベキシヤ。
書き下し
陰陽師巫祝ノ類モ其道アルヘク。其道ニ楽ノアルベキコトシヤ。陰陽消長ノ理。天地四方ヲ該子。古往今来ニ亘ル。此陰陽消長。人間ノ吉凶悔吝ト成ルモ。面白カルベシ。総束シテ太極ヲ立ル。天文ノ奇ヲアラハシ。地理ノ偶ヲアラハス。面白カルベシ。此太極モ此両儀モ今日事物ノ上ニ具テ相違セヌト云。陰ヨリ陽ヲ生シ。陽ヨリ陰ヲ生シテ四象トナル。此四象カ今日人事物類ノ上ニ顕レテ相違セヌト云。天地ノ理生生シテ已ムコトナク。四象ヨリ八卦ヲ生ス。八卦ノ中ニ人倫父子ノ象ヲ顕ハス。天地日月星辰山川ノ象ヲ顕ハスト云シヤ。是ヲ以テ楽トセハ。漸次ニ聖賢ノ地位ニモ入ベキシヤ。
現代語訳
陰陽師や巫祝の類にもその道があるはずであり、その道に楽しみがあるはずのことである。陰陽の消長の理は、天地四方にゆきわたり、古往今来にわたる。この陰陽の消長が人の世の吉凶悔吝となるのも面白いはずである。まとめて太極を立てる。天の数の奇を表し、地の数の偶を表す。面白いはずである。この太極もこの両儀(陰陽)も、今日の事物の上に具わって違わないと言う。陰から陽を生じ、陽から陰を生じて四象となる。この四象が今日の人事や物の上に現れて違わないと言う。天地の理は生々してやむことがなく、四象から八卦を生ずる。八卦の中に人倫の父子の象を表す。天地日月星辰山川の象を表すと言うのである。これを楽しみとするなら、次第に聖賢の地位にも入るはずである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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易経・繋辞上是の故に、易に太極有り。是れ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず。是の故に、法象は天地より大なるは莫(な)く、変通は四時より大なるは莫く、象を縣(か)けて明らかを著(あら)わすは日月より大なるは莫く、崇高は富貴より大なるは莫し。物を備え用を致し、器を立て成して以て天下の利と為すは、聖人より大なるは莫し。賾(さく)を探り隠を索(もと)め、深きを鉤(と)り遠きを致し、以て天下の吉凶を定め、天下の亹亹(びび)たる者を成すは、蓍亀(しき)より大なるは莫し。
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易経・繋辞下八卦列を成して、象其の中に在り。因りて之を重ぬれば、爻其の中に在り。剛柔相推せば、変其の中に在り。辞を繋けて之に命ずれば、動其の中に在り。吉凶悔吝なる者は、動に生ずる者なり。剛柔なる者は、本を立つる者なり。変通なる者は、時に趣く者なり。吉凶なる者は、貞にして勝つ者なり。天地の道は、貞にして観る者なり。日月の道は、貞にして明らかなる者なり。天下の動は、夫の一に貞なる者なり。
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易経・繋辞下能く諸を心に説ばしめ、能く諸を侯の慮に研き、天下の吉凶を定め、天下の亹亹たる者を成す。是の故に、変化云為あれば、吉事に祥有り。事を象りて器を知り、事を占いて来を知る。天地位を設けて、聖人能を成す。人謀り鬼謀りて、百姓能に与る。八卦は象を以て告げ、爻彖は情を以て言う。剛柔雑り居りて、吉凶見るべし。
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『十善法語』巻第十二・不邪見戒之下不邪見戒相ノ。天象ニカクアラハルル。地理ニカクアラハルル。此天象カ人事ニ随テ時時ニ変生スル。此常度此変異互ニ相依リ相随フ。トモニ断常ノ二見ニ相違ス。常度ハ常度ニシテ違ハネトモ。変ヲ具足シテ相離レヌ。変ハ変ニシテ常ニ異レトモ。常度ニ因テ彼アリ此アル。支那ニ政事ノ乱レアレハ支那ニ天変カアル。余国ニハナシ。朝鮮琉球ニ国カ治マラネハ朝鮮琉球ニ天変カアル。余国ニハナシ。此等ノ事ヲ思惟シテモ。断常ノ二見ハ一時ニ超過セネハナラヌシヤ。気候ノ遷リ。四時ノ代謝スル。草木ノ茂ル。霜雪ノ降ル。目ニ触レ耳ニ聞トシテ不邪見戒ノ相ナラヌハナキシヤ。正眼ニ看来レハ。神霊有テ存スル。此道有テ存スル。此中ニ楽事ヲ得ル。此楽ハ諸ノ賢聖ノ楽ム処シヤ。一切ノ人事。礼楽刑政モ。冠婚喪祭モ。士農工商ノ作業モ。武事文学モ。悉ク神霊有テ存スル。此道有テ存スル。有道ノ士ハ此事事物物ノ中ニ賢聖ノ楽ヲ得ルシヤ。
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易経・繋辞上是の故に、貴賤を列(つら)ぬる者は位に存す。小大を斉(ひと)しくする者は、卦に存す。吉凶を弁ずる者は、辞に存す。悔吝を憂うる者は、介(かい)に存す。震(うご)きて咎无き者は、悔に存す。是の故に、卦に小大有り、辞に険易(けんい)有り。辞なる者は、各々其の之(ゆ)く所を指すなり。易は天地と準(なぞら)う、故に能く天地の道を弥綸(びりん)す。仰いで以て天文を観、俯して以て地理を察す、是の故に幽明の故を知る。始めに原(もと)づきて終わりに反る、故に死生の説を知る。精気は物と為り、遊魂は変と為る、是の故に鬼神の情状を知る。天地と相似たり、故に違わず。知は万物に周(あまね)くして、道は天下を済(すく)う、故に過たず。旁行して流れず、天を楽しみ命を知る、故に憂えず。土に安んじ仁に敦(あつ)し、故に能く愛す。天地の化を範囲して過たず、万物を曲成して遺さず、昼夜の道に通じて知る、故に神に方(ほう)无くして易に体无し。
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説苑・辨物易に曰わく、「仰いで以て天文を観、俯して以て地理を察す」と。是の故に幽明の故を知る。夫れ天文地理、人情の効、心に存すれば、則ち聖智の府なり。是の故に古えの聖王既に天下に臨めば、必ず四時を変じ、律暦を定め、天文を考え、時変を揆り、霊台に登りて気氛を望む。故に堯曰わく、「咨(ああ)爾舜よ、天の暦数爾が躬に在り、允に其の中を執れ、四海困窮せば」と。書に曰わく、「璿璣玉衡に在りて、以て七政を斉う」と。璿璣とは此の辰、勾陳枢星なり。其の魁杓の指す所を以て二十八宿の吉凶禍福と為す。天文列舎の盈縮の占い、各々類を以て験と為す。夫れ変を占うの道は二のみ。二とは陰陽の数なり。故に易に曰わく、「一陰一陽、之を道と謂う。道なる者は、物の動くこと道に由らざるは莫し」と。是の故に一に発し、二に成り、三に備わり、四に周く、五に行わる。是の故に玄象の著明なるは、日月より大なるは莫し。変の動を察するは、五星より著るきは莫し。天の五星は気を五行に運らし、其の初めは猶お陰陽より発し、化は万一千五百二十に極まる。所謂二十八星とは、東方を角亢氐房心尾箕と曰い、北方を斗牛須女虚危営室東壁と曰い、西方を奎婁胃昂畢觜参と曰い、南方を東井輿鬼柳七星張翼軫と曰う。所謂宿とは、日月五星の宿る所なり。其の宿に在りて外内を運る者は、宮を以て名を別つ。其の根荄は皆地に発して華は天に形わる。所謂五星とは、一に歳星と曰い、二に熒惑と曰い、三に鎮星と曰い、四に太白と曰い、五に辰星と曰う。欃槍・彗孛・旬始・枉矢・蚩尤の旗は、皆五星盈縮の生ずる所なり。五星の犯す所、各々金木水火土を以て占と為す。春秋冬夏の伏見時有り、其の常を失い、其の時を離るれば則ち変異と為し、其の時を得て其の常に居れば、是を吉祥と謂う。古えに四時を主る者有り。春を主る者は張、昏にして中す、以て穀を種うべし、上は天子に告げ、下は之を民に布く。夏を主る者は大火、昏にして中す、以て黍菽を種うべし、上は天子に告げ、下は之を民に布く。秋を主る者は虚、昏にして中す、以て麦を種うべし、上は天子に告げ、下は之を民に布く。冬を主る者は昴、昏にして中す、以て斬伐・田猟・蓋蔵すべし、上は之を天子に告げ、下は之を民に布く。故に天子南面して四星の中するを視、民の緩急を知り、急なれば賦籍せず、力役を挙げず。書に曰わく、「敬んで民に時を授く」と。詩に曰わく、「物其れ有り、維れ其れ時なり」と。物の有りて絶えざる所以は、其の動くに時を以てすればなり。