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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

此財利ト云モノハ。天命ノアル處。寶藏神ノ守護スル處。妄リニ得ベカラスジヤ。本ヲ推シテ云ハハ。法性等流。十善ノ餘慶シヤ。土地ノ利ヲ度ルニ。地ノ理ニ順セハ其利堅固ナルベシ。天ノ時ヲ量ルハ。天命ニ順セハ其利廣大ナルヘシ。天ニ違ヒ理ニ違ヒ。他ヲ損シテ己ヲ利スルハ。實ニ灾害ノ伏スル處シヤ。例ヲ擧テ言ハハ。卓王孫カ居ヲ臨印ニ定ル。呂不韋カ秦公子子楚ヲ見テ奇貨オクヘシト云。此二途鑑ムヘキシヤ。

新字:此財利ト云モノハ。天命ノアル処。宝蔵神ノ守護スル処。妄リニ得ベカラスジヤ。本ヲ推シテ云ハハ。法性等流。十善ノ余慶シヤ。土地ノ利ヲ度ルニ。地ノ理ニ順セハ其利堅固ナルベシ。天ノ時ヲ量ルハ。天命ニ順セハ其利広大ナルヘシ。天ニ違ヒ理ニ違ヒ。他ヲ損シテ己ヲ利スルハ。実ニ災害ノ伏スル処シヤ。例ヲ挙テ言ハハ。卓王孫カ居ヲ臨印ニ定ル。呂不韋カ秦公子子楚ヲ見テ奇貨オクヘシト云。此二途鑑ムヘキシヤ。

書き下し

此財利ト云モノハ。天命ノアル処。宝蔵神ノ守護スル処。妄リニ得ベカラスジヤ。本ヲ推シテ云ハハ。法性等流。十善ノ余慶シヤ。土地ノ利ヲ度ルニ。地ノ理ニ順セハ其利堅固ナルベシ。天ノ時ヲ量ルハ。天命ニ順セハ其利広大ナルヘシ。天ニ違ヒ理ニ違ヒ。他ヲ損シテ己ヲ利スルハ。実ニ灾害ノ伏スル処シヤ。例ヲ挙テ言ハハ。卓王孫カ居ヲ臨印ニ定ル。呂不韋カ秦公子子楚ヲ見テ奇貨オクヘシト云。此二途鑑ムヘキシヤ。

現代語訳

この財利というものは、天命のあるところ、宝蔵神が守護するところであって、みだりに得られるものではないのである。本を推して言えば、法性から等しく流れ出たもの、十善の余慶である。土地の利を測るのに、地の理に従えばその利は堅固であるはずだ。天の時を量るのに、天命に従えばその利は広大であるはずだ。天に違い理に違い、他を損なって自分を利するのは、実に災害の潜むところである。例を挙げて言えば、卓王孫が住まいを臨卭に定めたこと、呂不韋が秦の公子子楚を見て、珍しい品だから買っておくべきだと言ったこと、この二つの道を鑑とすべきである。

解説

財利は天命のあるところで宝蔵神が守るものであり、根本は十善の余慶だと尊者は言う。地の理と天の時に従えば利は堅固で広大になるが、他を損じて己を利するなら災害が伏している。卓王孫は『史記』貨殖列伝に見える、蜀の臨卭で製鉄により富を築いた商人である。呂不韋は人質の公子子楚を奇貨居くべしと見て投資し、宰相にまで上ったが最後は自殺に追い込まれた。地の利を読んだ商いと、人を奇貨として賭けた商いとを対比して鑑とせよ、という趣旨だろう。
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この章句が説くこと

財利天命十善因果呂不韋卓王孫

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