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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

天竺國ハ四大姓アル中ニ。刹帝利婆羅門ニ次テ毘舍ト云。毗舍トハ商賈ノ稱シヤ。此者輸陀ヨリ上ニ居スルジヤ。輸陀ト云ハ農人ノ稱ジヤ。此商賈ノ農家ヨリ上ナルハ。其作業殺生少ク。智巧藝術ヲ務ルニ由ルト云コトジヤ。勿論商賣ハ財利ヲ本トス。誤レハ其ココロ野鄙ニ落ル故。支那國ニテモ我邦ニテモ農ヨリ下ニ置ク。此ニ由テ商賈ハ其心得ノアルベキコトジヤ。凡ソ亂世ニハ。誤レハ武ニ誇テ其德ヲ失フ。治世ニハ誤レハ財利ニ瀆レテ其道ヲ失フ。大人有志ノ心ヲ用ヒネハナラヌ處シヤ。

新字:天竺国ハ四大姓アル中ニ。刹帝利婆羅門ニ次テ毘舎ト云。毗舎トハ商賈ノ称シヤ。此者輸陀ヨリ上ニ居スルジヤ。輸陀ト云ハ農人ノ称ジヤ。此商賈ノ農家ヨリ上ナルハ。其作業殺生少ク。智巧芸術ヲ務ルニ由ルト云コトジヤ。勿論商売ハ財利ヲ本トス。誤レハ其ココロ野鄙ニ落ル故。支那国ニテモ我邦ニテモ農ヨリ下ニ置ク。此ニ由テ商賈ハ其心得ノアルベキコトジヤ。凡ソ乱世ニハ。誤レハ武ニ誇テ其徳ヲ失フ。治世ニハ誤レハ財利ニ瀆レテ其道ヲ失フ。大人有志ノ心ヲ用ヒネハナラヌ処シヤ。

書き下し

天竺国ハ四大姓アル中ニ。刹帝利婆羅門ニ次テ毘舎ト云。毗舎トハ商賈ノ称シヤ。此者輸陀ヨリ上ニ居スルジヤ。輸陀ト云ハ農人ノ称ジヤ。此商賈ノ農家ヨリ上ナルハ。其作業殺生少ク。智巧芸術ヲ務ルニ由ルト云コトジヤ。勿論商売ハ財利ヲ本トス。誤レハ其ココロ野鄙ニ落ル故。支那国ニテモ我邦ニテモ農ヨリ下ニ置ク。此ニ由テ商賈ハ其心得ノアルベキコトジヤ。凡ソ乱世ニハ。誤レハ武ニ誇テ其徳ヲ失フ。治世ニハ誤レハ財利ニ瀆レテ其道ヲ失フ。大人有志ノ心ヲ用ヒネハナラヌ処シヤ。

現代語訳

天竺国には四大姓がある中で、刹帝利(王族)と婆羅門に次いで毘舎と言う。毘舎とは商人の呼び名である。この者は輸陀(首陀羅)より上に位置するのである。輸陀と言うのは農民の呼び名である。この商人が農家より上であるのは、その仕事に殺生が少なく、知恵や技芸を務めるからだということである。もちろん商売は財利を本とする。誤ればその心が野卑に落ちるので、中国でもわが国でも農より下に置く。これによって、商人には心得があるべきことである。およそ乱世には、誤れば武に誇ってその徳を失う。治世には、誤れば財利に汚れてその道を失う。大人や志ある者が心を用いなければならないところである。

解説

インドの四姓では商人が農民より上に置かれ、それは殺生が少なく知恵や技芸を務めるからだと尊者は紹介する。一方、中国や日本で商人が農の下に置かれるのは、財利を本とするため誤れば心が卑しくなるからだとする。どちらが正しいかではなく、商人には心得が要るという結論に導く。乱世には武に驕って徳を失い、治世には財利に汚れて道を失う、という対句は鋭い。平和で豊かな時代ほど、お金の扱いで道を踏み外しやすいという警告として今も響く。

この章句が説くこと

財利商道四姓治世心得殺生

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