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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

是ニ由テ知レ。百工ハ百工デ心ヲ用フルコト專一ナレバ。其中ニ妙處ヲ得ル。妙處ヲ得レバ天ヲ樂ミ道ヲ樂ム場處アル。假令妙處ヲ得ルニ至ラストモ。天下ノ重寶ニナリ。人民ノ便宜ニナルベキナラバ。自ラ其身ヲ養ニ足リ。父母ヲ孝養スルニ餘リアリ。妻子ヲ養育シ。兄弟親族ヲ惠ムニモ餘リアルベキシヤ。是中自ラ天ヨリ分付スル樂有テ存スル。此樂ミ絲竹管絃ニスラ比セヌ。狂言綺語ノ及フ所テナイ。

新字:是ニ由テ知レ。百工ハ百工デ心ヲ用フルコト専一ナレバ。其中ニ妙処ヲ得ル。妙処ヲ得レバ天ヲ楽ミ道ヲ楽ム場処アル。仮令妙処ヲ得ルニ至ラストモ。天下ノ重宝ニナリ。人民ノ便宜ニナルベキナラバ。自ラ其身ヲ養ニ足リ。父母ヲ孝養スルニ余リアリ。妻子ヲ養育シ。兄弟親族ヲ恵ムニモ余リアルベキシヤ。是中自ラ天ヨリ分付スル楽有テ存スル。此楽ミ糸竹管絃ニスラ比セヌ。狂言綺語ノ及フ所テナイ。

書き下し

是ニ由テ知レ。百工ハ百工デ心ヲ用フルコト専一ナレバ。其中ニ妙処ヲ得ル。妙処ヲ得レバ天ヲ楽ミ道ヲ楽ム場処アル。仮令妙処ヲ得ルニ至ラストモ。天下ノ重宝ニナリ。人民ノ便宜ニナルベキナラバ。自ラ其身ヲ養ニ足リ。父母ヲ孝養スルニ余リアリ。妻子ヲ養育シ。兄弟親族ヲ恵ムニモ余リアルベキシヤ。是中自ラ天ヨリ分付スル楽有テ存スル。此楽ミ糸竹管絃ニスラ比セヌ。狂言綺語ノ及フ所テナイ。

現代語訳

これによって知りなさい。百工は百工として心を用いることが専一であれば、その中に妙処を得る。妙処を得れば、天を楽しみ道を楽しむ場所がある。たとえ妙処を得るに至らなくても、天下の重宝となり、人々の便宜となるものであれば、自ずからその身を養うに足り、父母に孝養を尽くしても余りがあり、妻子を養育し、兄弟親族に恵むにも余りがあるはずである。この中に自ずから天から分け与えられた楽しみがあって存する。この楽しみは糸竹管絃にさえ比べられない。狂言綺語の及ぶところではない。

解説

職人論のまとめである。心を一つに用いれば技の妙処に至り、そこに天と道を楽しむ境地がある。しかし尊者は名人だけを持ち上げない。妙処に至らなくても、世の役に立つ物を作っていれば、自分を養い、親に孝行し、家族や親族に恵む余裕が生まれ、そこにも天から与えられた楽しみがあるという。極めた人にも、誠実に務める普通の人にも、それぞれ楽しみがあるという二段構えは、名人になれない多くの働き手を励ます温かい視点である。

この章句が説くこと

専一妙処勤労孝養楽しみ百工

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