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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

正法緣起ノ中ハ却初自然ノ粳米アリ。朝ニ刈レハ暮ニ生シ。暮ニ取レハ朝ニ熟ス。莖幹ナシ。糠糟ナシ。四隣相率ヰテ隨意ニ取用フ。其中一類懶惰ノ者アリ。朝ニ暮ノ糧ヲ收メ。暮ニ朝ノ糧ヲ取ル。見聞相傚テ一日乃至五日ノ糧ヲ收ム。此ヨリ漸糠糟生シテ。刈已テ枯株現ス。衆人懊惱シテ各疆畔ヲ分チ。耕耘種殖ス。此ヲ四大姓ノ初トストアル。

新字:正法縁起ノ中ハ却初自然ノ粳米アリ。朝ニ刈レハ暮ニ生シ。暮ニ取レハ朝ニ熟ス。茎幹ナシ。糠糟ナシ。四隣相率ヰテ随意ニ取用フ。其中一類懶惰ノ者アリ。朝ニ暮ノ糧ヲ収メ。暮ニ朝ノ糧ヲ取ル。見聞相傚テ一日乃至五日ノ糧ヲ収ム。此ヨリ漸糠糟生シテ。刈已テ枯株現ス。衆人懊悩シテ各疆畔ヲ分チ。耕耘種殖ス。此ヲ四大姓ノ初トストアル。

書き下し

正法縁起ノ中ハ却初自然ノ粳米アリ。朝ニ刈レハ暮ニ生シ。暮ニ取レハ朝ニ熟ス。茎幹ナシ。糠糟ナシ。四隣相率ヰテ随意ニ取用フ。其中一類懶惰ノ者アリ。朝ニ暮ノ糧ヲ収メ。暮ニ朝ノ糧ヲ取ル。見聞相傚テ一日乃至五日ノ糧ヲ収ム。此ヨリ漸糠糟生シテ。刈已テ枯株現ス。衆人懊悩シテ各疆畔ヲ分チ。耕耘種殖ス。此ヲ四大姓ノ初トストアル。

現代語訳

正法の縁起の説の中では、劫初(この世界の始まり)には自然に生える粳米があった。朝に刈れば暮れに生え、暮れに取れば朝に実った。茎もなく、糠もなかった。四方の隣人が互いに連れ立って思うままに取って用いていた。その中に一人の怠け者がいて、朝に暮れの分の糧を収め、暮れに朝の分の糧を取った。それを見聞きした者が互いに真似をして、一日分から五日分までの糧を収めるようになった。これより次第に糠が生じて、刈り終えると枯れた株が現れるようになった。人々は悩み嘆いて、それぞれ田のあぜを分け、耕し草を取り種を植えるようになった。これを四大姓(四つの身分)の始まりとする、とある。

解説

仏典に伝わる世界の始まりの物語である。『長阿含経』の小縁経などに見え、はじめは刈ってもすぐ生える米があったが、一人の怠け者がまとめ取りをし、皆が真似て貯め込むようになると米は糠をかぶり、刈り跡は枯れ、人々は田を分けて耕すようになったという。蓄えようとする心が豊かさを失わせ、所有と労働と身分の区別を生んだ、という筋立てである。目先の手間を惜しんだ小さな抜け駆けが、皆に広がって仕組み全体を変えてしまう話としても読める。

この章句が説くこと

縁起貪欲所有劫初怠惰四姓

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