十善法語 / 巻第九・不瞋恚戒
此減刧ノ初。人壽八萬四千歳ニシテ大寒大熱ナク。惡風暴雨ナク。水旱疾疫ノ流行ナシ。世界動物ナリ。人心動物ナリ。長時無事ナラス。善ニ進マサレハ必ス惡ニ墮ス。漸次ニ世衰フ。初テ偸盜ノ者アリ。此時人壽半ヲ減シテ四萬歲トナル。執政ノ者刑法ヲ制シテ人民ヲ治ム。初ハ此刑法ヲ畏テ。世間惡事少シ。後ハ侵ス者漸ク多シ。刑法隨テ嚴刻ニナル。此時人壽マタ半ヲ減シテ二萬歲トナル。此後奸民嚴刑ヲ恐レテ。初テ妄語アリ。此言語正キヲ失フトキ。人壽又減シテ一萬歲トナル。
新字:此減刧ノ初。人寿八万四千歳ニシテ大寒大熱ナク。悪風暴雨ナク。水旱疾疫ノ流行ナシ。世界動物ナリ。人心動物ナリ。長時無事ナラス。善ニ進マサレハ必ス悪ニ堕ス。漸次ニ世衰フ。初テ偸盗ノ者アリ。此時人寿半ヲ減シテ四万歳トナル。執政ノ者刑法ヲ制シテ人民ヲ治ム。初ハ此刑法ヲ畏テ。世間悪事少シ。後ハ侵ス者漸ク多シ。刑法随テ厳刻ニナル。此時人寿マタ半ヲ減シテ二万歳トナル。此後奸民厳刑ヲ恐レテ。初テ妄語アリ。此言語正キヲ失フトキ。人寿又減シテ一万歳トナル。
書き下し
此減刧ノ初。人寿八万四千歳ニシテ大寒大熱ナク。悪風暴雨ナク。水旱疾疫ノ流行ナシ。世界動物ナリ。人心動物ナリ。長時無事ナラス。善ニ進マサレハ必ス悪ニ堕ス。漸次ニ世衰フ。初テ偸盗ノ者アリ。此時人寿半ヲ減シテ四万歳トナル。執政ノ者刑法ヲ制シテ人民ヲ治ム。初ハ此刑法ヲ畏テ。世間悪事少シ。後ハ侵ス者漸ク多シ。刑法随テ厳刻ニナル。此時人寿マタ半ヲ減シテ二万歳トナル。此後奸民厳刑ヲ恐レテ。初テ妄語アリ。此言語正キヲ失フトキ。人寿又減シテ一万歳トナル。
現代語訳
この減劫の初め、人の寿命は八万四千歳で、大寒大熱がなく、悪風暴雨がなく、水害旱魃や疫病の流行がない。世界は動くものである。人の心も動くものである。長い間、何事もないままではいない。善に進まなければ、必ず悪に堕ちる。次第に世が衰える。初めて盗む者が現れる。このとき人の寿命は半分に減って四万歳となる。政を執る者が刑法を制定して人民を治める。初めはこの刑法を畏れて、世間の悪事は少ない。後には侵す者が次第に多くなる。刑法もそれにつれて厳しく苛酷になる。このとき人の寿命はまた半分に減って二万歳となる。この後、悪賢い民が厳しい刑を恐れて、初めて嘘をつく。この言葉が正しさを失うとき、人の寿命はまた減って一万歳となる。
解説

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