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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

雲ヲ看テ樂ム者。ヨク四季七十二候ノ變ヲ知ト云。或ハ雲ノ姿ヲ看。色ヲ見。起滅ヲ見テ。世ノ吉凶ヲ占ヒ知ル者モアル。隱逸ノ士ノ雲ヲ見テ詩歌ヲ弄フモアル。悉ク面白カルヘキシヤ。上ナルコトヲ以テ云ハハ。此雲ニヨソヘテ五蘊色身來去ノ相ニ達ス。緣起ヲ明了ニシテ。優ニ聖域ニ入ル。或ハ風ヲ樂トシ。雨ヲ樂トシ。雪ヲ樂トスル。皆其趣アルヘキシヤ。山中獨居ノ者ニ雷ヲ聞テ樂ム者モアル。氣象ト相應スレハ此等モ面白ト云コトシヤ。經中ニ此電光ヲ無漏道ヲ一見スルニ比シテ。電光三昧ト云カ有シヤ。菩薩ノ深思惟カ此雷震ニ逢テ知ルル時節アルト云コトシヤ。綺語ナトニ隨順スヘキコトテハナイ。

新字:雲ヲ看テ楽ム者。ヨク四季七十二候ノ変ヲ知ト云。或ハ雲ノ姿ヲ看。色ヲ見。起滅ヲ見テ。世ノ吉凶ヲ占ヒ知ル者モアル。隠逸ノ士ノ雲ヲ見テ詩歌ヲ弄フモアル。悉ク面白カルヘキシヤ。上ナルコトヲ以テ云ハハ。此雲ニヨソヘテ五蘊色身来去ノ相ニ達ス。縁起ヲ明了ニシテ。優ニ聖域ニ入ル。或ハ風ヲ楽トシ。雨ヲ楽トシ。雪ヲ楽トスル。皆其趣アルヘキシヤ。山中独居ノ者ニ雷ヲ聞テ楽ム者モアル。気象ト相応スレハ此等モ面白ト云コトシヤ。経中ニ此電光ヲ無漏道ヲ一見スルニ比シテ。電光三昧ト云カ有シヤ。菩薩ノ深思惟カ此雷震ニ逢テ知ルル時節アルト云コトシヤ。綺語ナトニ随順スヘキコトテハナイ。

書き下し

雲ヲ看テ楽ム者。ヨク四季七十二候ノ変ヲ知ト云。或ハ雲ノ姿ヲ看。色ヲ見。起滅ヲ見テ。世ノ吉凶ヲ占ヒ知ル者モアル。隠逸ノ士ノ雲ヲ見テ詩歌ヲ弄フモアル。悉ク面白カルヘキシヤ。上ナルコトヲ以テ云ハハ。此雲ニヨソヘテ五蘊色身来去ノ相ニ達ス。縁起ヲ明了ニシテ。優ニ聖域ニ入ル。或ハ風ヲ楽トシ。雨ヲ楽トシ。雪ヲ楽トスル。皆其趣アルヘキシヤ。山中独居ノ者ニ雷ヲ聞テ楽ム者モアル。気象ト相応スレハ此等モ面白ト云コトシヤ。経中ニ此電光ヲ無漏道ヲ一見スルニ比シテ。電光三昧ト云カ有シヤ。菩薩ノ深思惟カ此雷震ニ逢テ知ルル時節アルト云コトシヤ。綺語ナトニ随順スヘキコトテハナイ。

現代語訳

雲を見て楽しむ者は、四季七十二候の変化をよく知ると言う。あるいは雲の姿を見、色を見、起こり消えるのを見て、世の吉凶を占い知る者もいる。隠遁の士が雲を見て詩歌をもてあそぶこともある。ことごとく面白いはずである。上のことで言えば、この雲になぞらえて、五蘊(心身を成す五要素)から成る身の去来の相に通達する。縁起を明らかにして、ゆうゆうと聖者の域に入る。あるいは風を楽しみとし、雨を楽しみとし、雪を楽しみとする、みなそれぞれ趣があるはずである。山中に独り住む者に、雷を聞いて楽しむ者もいる。気象と心が相応すれば、これらも面白いということである。経の中に、この稲妻を無漏道(煩悩を離れた道)を一瞬見ることにたとえて、電光三昧と言うものがある。菩薩の深い思惟が、この雷鳴に出会って悟る時節があるということである。綺語などに従うべきことではない。

解説

雲・風・雨・雪・雷へと、天の楽しみが広げられる。七十二候は一年を細かく刻んだ季節の区分で、雲の変化から季節を読む人がいる。修行者にとっては、湧いては消える雲が、この身も五蘊の集まりで来ては去るものだという縁起の理を見せる教材になる。稲妻の一瞬の光を悟りの一瞥にたとえる電光三昧の話も印象深い。天気は人の気分を左右するものと思われがちだが、心の側に受け止める用意があれば、嵐さえ学びと楽しみに変わるという視点を与えてくれる。

この章句が説くこと

縁起五蘊三昧自然楽しみ菩薩

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