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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

星ヲ看テ樂ム者カ。空中珠玉ヲ散スル如キモ。面白キモノト云。五星ノ出沒。二十八宿ノ行度。北斗ノ運轉。ミナ然ルヘキコトシヤ。此中世上吉凶ノアラハルルモ。面白キモノト云コトシヤ。立超タコトテ言ハハ。頭陀蘭若ノ比丘カ此星ヲ指示シテ睡魔ヲ伏シ。諸佛ノ行儀ニ順スル。世間ノ樂ミノ比スヘキトコロテナイ。思テ看ヨ。綺語ナトニ隨順スル暇ハ有マシキシヤ。月ヲ友ナフ者世ニ尤多シ。此モ春夏秋冬。及ヒ時時ノ景。ミナ騒人ノ興ヲ催ス。又星ノ逼ルト。光ノ隱顯ヲ看テ。世ノ吉凶ヲ云者モアル。コトコトク面白カルヘキシヤ。上ナルコトテ言ハハ。月輪觀ヲ修スル者カ光ニヨソヘテ自ラ心地ヲ照ス。十六分ノ相ニヨソヘテ法ノ圓滿ヲ表ス。思テ看ヨ。綺語ナトニ隨順スル暇ハ有マシキシヤ。

新字:星ヲ看テ楽ム者カ。空中珠玉ヲ散スル如キモ。面白キモノト云。五星ノ出没。二十八宿ノ行度。北斗ノ運転。ミナ然ルヘキコトシヤ。此中世上吉凶ノアラハルルモ。面白キモノト云コトシヤ。立超タコトテ言ハハ。頭陀蘭若ノ比丘カ此星ヲ指示シテ睡魔ヲ伏シ。諸仏ノ行儀ニ順スル。世間ノ楽ミノ比スヘキトコロテナイ。思テ看ヨ。綺語ナトニ随順スル暇ハ有マシキシヤ。月ヲ友ナフ者世ニ尤多シ。此モ春夏秋冬。及ヒ時時ノ景。ミナ騒人ノ興ヲ催ス。又星ノ逼ルト。光ノ隠顕ヲ看テ。世ノ吉凶ヲ云者モアル。コトコトク面白カルヘキシヤ。上ナルコトテ言ハハ。月輪観ヲ修スル者カ光ニヨソヘテ自ラ心地ヲ照ス。十六分ノ相ニヨソヘテ法ノ円満ヲ表ス。思テ看ヨ。綺語ナトニ随順スル暇ハ有マシキシヤ。

書き下し

星ヲ看テ楽ム者カ。空中珠玉ヲ散スル如キモ。面白キモノト云。五星ノ出没。二十八宿ノ行度。北斗ノ運転。ミナ然ルヘキコトシヤ。此中世上吉凶ノアラハルルモ。面白キモノト云コトシヤ。立超タコトテ言ハハ。頭陀蘭若ノ比丘カ此星ヲ指示シテ睡魔ヲ伏シ。諸仏ノ行儀ニ順スル。世間ノ楽ミノ比スヘキトコロテナイ。思テ看ヨ。綺語ナトニ随順スル暇ハ有マシキシヤ。月ヲ友ナフ者世ニ尤多シ。此モ春夏秋冬。及ヒ時時ノ景。ミナ騒人ノ興ヲ催ス。又星ノ逼ルト。光ノ隠顕ヲ看テ。世ノ吉凶ヲ云者モアル。コトコトク面白カルヘキシヤ。上ナルコトテ言ハハ。月輪観ヲ修スル者カ光ニヨソヘテ自ラ心地ヲ照ス。十六分ノ相ニヨソヘテ法ノ円満ヲ表ス。思テ看ヨ。綺語ナトニ随順スル暇ハ有マシキシヤ。

現代語訳

星を見て楽しむ者は、空に珠玉を散らしたようなさまも面白いものだと言う。五星の出没、二十八宿の運行、北斗の巡りも、みなしかるべきことである。この中に世の吉凶が現れるのも面白いものだということである。抜きん出たことで言えば、頭陀や蘭若(静かな修行の場)の比丘がこの星を指し示して睡魔を払い、諸仏の行儀に従う。世間の楽しみの比べられるところではない。考えてみよ。綺語などに従っている暇はないはずである。月を友とする者は世にもっとも多い。これも春夏秋冬や折々の景色が、みな詩人の興を催す。また星が月に迫るのや、光の隠れ現れるのを見て、世の吉凶を言う者もいる。ことごとく面白いはずである。上のことで言えば、月輪観を修める者が、その光になぞらえて自ら心の地を照らし、十六分の満ち欠けの相になぞらえて法の円満を表す。考えてみよ。綺語などに従っている暇はないはずである。

解説

太陽に続いて星と月の楽しみが語られる。天文の運行や吉凶を読む楽しみ、詩人の興、そして修行者の用い方が、段階を追って並べられる。月輪観は密教の観法で、自分の心を満月の輪として観じるものであり、真言僧でもあった尊者にとって身近な行であった。同じ月を見ても、景色として楽しむ人、占う人、心を照らす鏡とする人がいる。何を見るかより、どう見るかで楽しみの深さが変わることを、繰り返しの句「綺語などに従う暇はない」が印象づける。

この章句が説くこと

楽しみ月輪観修行自然

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