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十善法語 / 巻第五・不綺語戒

男子カ女人ノ衣服ヲ着シ。女人ノ威儀ヲマネスル。女人カ男子ノ衣服ヲ着シ。男子ノ威儀ヲマネスル類。皆身綺ト云。此モ俳優伎兒ナトハ所論テナイ。平人已上ハ愼テ作スマシキシヤ。春秋ノ時。陳ノ靈公カ二臣ト共ニ夏姫カ相衣ヲ着テ。朝ニ戯レシ類ハ。尤甚シキコトシヤ。史傳ニ女子木蘭カ男裝シテ父ニ代リ軍タチセシ類。又アル人カ勇士十人ニ女服ヲ着セ。敵ヲ欺テ陣ヲ敗タ類ハ。別ノ趣テ。此戒ノ犯テハナキシヤ。

新字:男子カ女人ノ衣服ヲ着シ。女人ノ威儀ヲマネスル。女人カ男子ノ衣服ヲ着シ。男子ノ威儀ヲマネスル類。皆身綺ト云。此モ俳優伎児ナトハ所論テナイ。平人已上ハ慎テ作スマシキシヤ。春秋ノ時。陳ノ霊公カ二臣ト共ニ夏姫カ相衣ヲ着テ。朝ニ戯レシ類ハ。尤甚シキコトシヤ。史伝ニ女子木蘭カ男装シテ父ニ代リ軍タチセシ類。又アル人カ勇士十人ニ女服ヲ着セ。敵ヲ欺テ陣ヲ敗タ類ハ。別ノ趣テ。此戒ノ犯テハナキシヤ。

書き下し

男子カ女人ノ衣服ヲ着シ。女人ノ威儀ヲマネスル。女人カ男子ノ衣服ヲ着シ。男子ノ威儀ヲマネスル類。皆身綺ト云。此モ俳優伎児ナトハ所論テナイ。平人已上ハ慎テ作スマシキシヤ。春秋ノ時。陳ノ霊公カ二臣ト共ニ夏姫カ相衣ヲ着テ。朝ニ戯レシ類ハ。尤甚シキコトシヤ。史伝ニ女子木蘭カ男装シテ父ニ代リ軍タチセシ類。又アル人カ勇士十人ニ女服ヲ着セ。敵ヲ欺テ陣ヲ敗タ類ハ。別ノ趣テ。此戒ノ犯テハナキシヤ。

現代語訳

男子が女性の衣服を着て女性の立ち居振る舞いを真似し、女性が男子の衣服を着て男子の立ち居振る舞いを真似する類は、みな身綺と言う。これも俳優や芸人などは論ずるところではない。普通の人以上の者は、慎んでするべきではないのである。春秋時代、陳の霊公が二人の臣下とともに夏姫の肌着を着て朝廷で戯れた類は、もっとも甚だしいことである。史伝に、女子の木蘭が男装して父に代わって出陣した類や、ある人が勇士十人に女の服を着せて敵を欺き陣を破った類は、別の趣旨であって、この戒の犯しではないのである。

解説

男女の装いを取り替えることを身綺に数える段である。ただし尊者は一律に禁じるのではなく、俳優や芸人の仕事は論外とし、陳の霊公が臣下と夏姫の肌着を着て朝廷で戯れた『春秋左氏伝』の話のような、ふざけと淫らさによるものを戒める。一方で、父に代わって男装で出陣した木蘭の話などは、孝や計略のためであって犯しではないとする。当時の衣服観に立つ教えだが、問われているのは形ではなく、戯れや驕りという動機である点を読み取りたい。

この章句が説くこと

身綺動機戯れ陳の霊公木蘭

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