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十善法語 / 巻第四・不妄語戒

次ニ波字ヲ唱ルトキ般若波羅蜜門ニ入ル。普照法界トナツクト。此波字ハ第一義諦ノ義シヤ。阿字門ニ入ハ第一義モ不可得シヤ。諸法平等。眞俗雙ヘ亡スル。是ノ眞如法界諸法平等ハ。普ク諸法ノ體性ヲ照スニ因テ。普照法界ト名ツク。一切諸法ヲトリモ直サス第一義シヤ。柳ニ在テハ綠シヤ。花ニ在テハ紅シヤ。第一義カトリモ直サス一切諸法シヤ。獸カ林藪ニカケル。諸佛ノ大涅槃ニ相違セヌシヤ。鳥カ空中ニ飛フ。菩薩ノ智慧德相ニ異ナラヌシヤ。我相アル者ハ法ニ於テ法相ヲ生スル。法相生スルニ由テ執着ヲオコス。執着オコルニ由テ取捨憎愛生スル。此カ世ニ謂ユル淺間シキ底下ノ凡夫法シヤ。迷フ者ハ迷フ。元來法ニ高下ハナイ。經ニ是法平等無有高下。是名阿耨多羅三藐三菩提トアル。悟ルモノハ悟ル。元來第一義モ不可得シヤ。第一義モ不可得ナルニ由テ。諸佛ノ無上菩提ト云ハ可得ノ法テナイ。經ニ菩提若可得ノ法ナラハ畢竟シテ壞滅スヘシ。菩提ハ不可得ナルカ故ニ畢竟シテ壞滅有コトナシトアル。

新字:次ニ波字ヲ唱ルトキ般若波羅蜜門ニ入ル。普照法界トナツクト。此波字ハ第一義諦ノ義シヤ。阿字門ニ入ハ第一義モ不可得シヤ。諸法平等。真俗双ヘ亡スル。是ノ真如法界諸法平等ハ。普ク諸法ノ体性ヲ照スニ因テ。普照法界ト名ツク。一切諸法ヲトリモ直サス第一義シヤ。柳ニ在テハ緑シヤ。花ニ在テハ紅シヤ。第一義カトリモ直サス一切諸法シヤ。獣カ林藪ニカケル。諸仏ノ大涅槃ニ相違セヌシヤ。鳥カ空中ニ飛フ。菩薩ノ智慧徳相ニ異ナラヌシヤ。我相アル者ハ法ニ於テ法相ヲ生スル。法相生スルニ由テ執着ヲオコス。執着オコルニ由テ取捨憎愛生スル。此カ世ニ謂ユル浅間シキ底下ノ凡夫法シヤ。迷フ者ハ迷フ。元来法ニ高下ハナイ。経ニ是法平等無有高下。是名阿耨多羅三藐三菩提トアル。悟ルモノハ悟ル。元来第一義モ不可得シヤ。第一義モ不可得ナルニ由テ。諸仏ノ無上菩提ト云ハ可得ノ法テナイ。経ニ菩提若可得ノ法ナラハ畢竟シテ壊滅スヘシ。菩提ハ不可得ナルカ故ニ畢竟シテ壊滅有コトナシトアル。

書き下し

次ニ波字ヲ唱ルトキ般若波羅蜜門ニ入ル。普照法界トナツクト。此波字ハ第一義諦ノ義シヤ。阿字門ニ入ハ第一義モ不可得シヤ。諸法平等。真俗双ヘ亡スル。是ノ真如法界諸法平等ハ。普ク諸法ノ体性ヲ照スニ因テ。普照法界ト名ツク。一切諸法ヲトリモ直サス第一義シヤ。柳ニ在テハ緑シヤ。花ニ在テハ紅シヤ。第一義カトリモ直サス一切諸法シヤ。獣カ林藪ニカケル。諸仏ノ大涅槃ニ相違セヌシヤ。鳥カ空中ニ飛フ。菩薩ノ智慧徳相ニ異ナラヌシヤ。我相アル者ハ法ニ於テ法相ヲ生スル。法相生スルニ由テ執着ヲオコス。執着オコルニ由テ取捨憎愛生スル。此カ世ニ謂ユル浅間シキ底下ノ凡夫法シヤ。迷フ者ハ迷フ。元来法ニ高下ハナイ。経ニ是法平等無有高下。是名阿耨多羅三藐三菩提トアル。悟ルモノハ悟ル。元来第一義モ不可得シヤ。第一義モ不可得ナルニ由テ。諸仏ノ無上菩提ト云ハ可得ノ法テナイ。経ニ菩提若可得ノ法ナラハ畢竟シテ壊滅スヘシ。菩提ハ不可得ナルカ故ニ畢竟シテ壊滅有コトナシトアル。

現代語訳

次に波の字を唱える時、般若波羅蜜の門に入る。普く法界を照らすと名づける、と。この波の字は第一義諦(最高の真理)の意味である。阿字の門に入れば、第一義も得られないのである。諸法は平等で、真と俗をともに忘れ去る。この真如法界の諸法平等は、普く諸法の本体と本性を照らすので、普照法界と名づける。一切の諸法が取りも直さず第一義である。柳にあっては緑である。花にあっては紅である。第一義が取りも直さず一切の諸法である。獣が林や藪を駆ける。諸仏の大涅槃に違わないのである。鳥が空中を飛ぶ。菩薩の智慧と徳の相に異ならないのである。我相(自我への執着)のある者は、法に対して法の相を生じる。法の相が生じるので執着を起こす。執着が起こるので取捨や憎愛が生じる。これが世にいう浅ましい最低の凡夫の法である。迷う者は迷う。もともと法に高下はない。経に、この法は平等で高下がない。これを阿耨多羅三藐三菩提と名づける、とある。悟る者は悟る。もともと第一義も得られないのである。第一義も得られないので、諸仏の無上菩提というのは得られる法ではない。経に、菩提がもし得られる法であれば、結局は壊れ滅びるはずである。菩提は得られないものであるから、結局壊れ滅びることがない、とある。

解説

波の字は第一義、つまり最高の真理を表すが、阿字の門から見ればその第一義さえつかめるものではないと説く。柳は緑、花は紅という言葉のように、ありのままの諸法がそのまま真理であり、獣が林を駆け鳥が空を飛ぶ姿も仏の涅槃や菩薩の智慧と違わない。執着する者は法に高下をつけて取捨憎愛を起こすが、法は平等で高下はないと経は説く。悟りを手に入れる物のように追い求める心を離れ、目の前のありのままを尊ぶことを教える一節である。

この章句が説くこと

第一義平等執着菩提波字

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