十善法語 / 巻第四・不妄語戒
此不妄語戒ハ。世間ニモ出世間ニモ其條理著シキコトシヤ。世間法ノ中ニ。邪婬ノ者ハ多ク妄語ヲ云。盜竊ノ者ハ必妄語多シト云コトシヤ。又論語ニ古之愚也直。今之愚也詐而已トアル。愚ノ至ハ詐ニ歸スルシヤ。經中ニ轉輪聖皇ト其太子トハ生得トシテ一生妄語ナキトアル。此德ニ由テ四天下ノ小王人民ミナ其命ニ違セヌト云コトシヤ。現今ノ世ニモ。大人タル者ハ生得トシテ多ク妄語ナキシヤ。此德ニ由テ國中人民ソノ命ニ背ヌシヤ。若王公カ信ヲ失ヘハ國ノ亂階トナル。史記ニ。齊ノ襄公其大夫ニ命シテ葵丘ヲ戍ラシム。瓜ノ時ニ至テ代ラシメント約ス。時至テ代ヲ乞フ。襄公許サス。此カ身ヲ亡ス基トナツタシヤ。此等ヲ以テ知レ。此不妄語ハ人君タル者ノ德シヤ。
新字:此不妄語戒ハ。世間ニモ出世間ニモ其条理著シキコトシヤ。世間法ノ中ニ。邪婬ノ者ハ多ク妄語ヲ云。盗窃ノ者ハ必妄語多シト云コトシヤ。又論語ニ古之愚也直。今之愚也詐而已トアル。愚ノ至ハ詐ニ帰スルシヤ。経中ニ転輪聖皇ト其太子トハ生得トシテ一生妄語ナキトアル。此徳ニ由テ四天下ノ小王人民ミナ其命ニ違セヌト云コトシヤ。現今ノ世ニモ。大人タル者ハ生得トシテ多ク妄語ナキシヤ。此徳ニ由テ国中人民ソノ命ニ背ヌシヤ。若王公カ信ヲ失ヘハ国ノ乱階トナル。史記ニ。斉ノ襄公其大夫ニ命シテ葵丘ヲ戍ラシム。瓜ノ時ニ至テ代ラシメント約ス。時至テ代ヲ乞フ。襄公許サス。此カ身ヲ亡ス基トナツタシヤ。此等ヲ以テ知レ。此不妄語ハ人君タル者ノ徳シヤ。
書き下し
此不妄語戒ハ。世間ニモ出世間ニモ其条理著シキコトシヤ。世間法ノ中ニ。邪婬ノ者ハ多ク妄語ヲ云。盗窃ノ者ハ必妄語多シト云コトシヤ。又論語ニ古之愚也直。今之愚也詐而已トアル。愚ノ至ハ詐ニ帰スルシヤ。経中ニ転輪聖皇ト其太子トハ生得トシテ一生妄語ナキトアル。此徳ニ由テ四天下ノ小王人民ミナ其命ニ違セヌト云コトシヤ。現今ノ世ニモ。大人タル者ハ生得トシテ多ク妄語ナキシヤ。此徳ニ由テ国中人民ソノ命ニ背ヌシヤ。若王公カ信ヲ失ヘハ国ノ乱階トナル。史記ニ。斉ノ襄公其大夫ニ命シテ葵丘ヲ戍ラシム。瓜ノ時ニ至テ代ラシメント約ス。時至テ代ヲ乞フ。襄公許サス。此カ身ヲ亡ス基トナツタシヤ。此等ヲ以テ知レ。此不妄語ハ人君タル者ノ徳シヤ。
現代語訳
この不妄語戒は、世間にも出世間にもその筋道が著しいことである。世間の法の中で、邪婬の者は多く妄語を言う、盗みをする者は必ず妄語が多い、ということである。また論語に、古の愚は正直であった。今の愚は偽るだけだ、とある。愚かさの極みは偽りに帰するのである。経の中に、転輪聖王とその太子とは、生まれつき一生妄語がない、とある。この徳によって、四天下の小王や人民がみなその命に背かないということである。今の世にも、大人たる者は生まれつき多く妄語がないのである。この徳によって国中の人民がその命に背かないのである。もし王公が信を失えば、国の乱れの階段となる。史記に、斉の襄公がその大夫に命じて葵丘を守らせた。瓜の時期に交代させようと約束した。時が来て交代を願ったが、襄公は許さなかった。これが身を滅ぼすもととなったのである。これらによって知りなさい。この不妄語は人君たる者の徳である。
解説
この章句が説くこと
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