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十善法語 / 巻第四・不妄語戒

心ノ妄語ト云ハ。人シレヌ心ノ內ニ。一度カクアルヘシト思ヒ定メタコトヲ容易ニ改ル類シヤ。佛菩薩ニ誓タコト神靈ニ誓タコトヲ容易ニ改ル類シヤ。コノ心ノ內ト云モノハ。多少ノ人カ容易ニ思フコトナレトモ。德義ヲ成就スルコトハ。コノ人シレヌ處ニアルシヤ。一度心ニ決シタコトハ。再ヒ首ヲ回ラサヌ者カ世間ニ在テ英雄豪傑ト云ヘキシヤ。出世間ニ在テ必賢聖ノ地位ニ至ル器シヤ。ソレジヤカ若惡事ヲ心ニ思定メシヲ。後改ムルナト云デハナイ。設ヒ神霊ニ誓タコトテモ。非ヲ知テ改ルハ妄語ニナラヌシヤ。此ハ心內ノコトナレハ。顯露明白ナル事實ハ擧ラレネトモ。叛臣賊子。友ヲ賣リ道ヲ障フ類。ミナ天道人理ニ違背スルト知ルヘキシヤ。

新字:心ノ妄語ト云ハ。人シレヌ心ノ内ニ。一度カクアルヘシト思ヒ定メタコトヲ容易ニ改ル類シヤ。仏菩薩ニ誓タコト神霊ニ誓タコトヲ容易ニ改ル類シヤ。コノ心ノ内ト云モノハ。多少ノ人カ容易ニ思フコトナレトモ。徳義ヲ成就スルコトハ。コノ人シレヌ処ニアルシヤ。一度心ニ決シタコトハ。再ヒ首ヲ回ラサヌ者カ世間ニ在テ英雄豪傑ト云ヘキシヤ。出世間ニ在テ必賢聖ノ地位ニ至ル器シヤ。ソレジヤカ若悪事ヲ心ニ思定メシヲ。後改ムルナト云デハナイ。設ヒ神霊ニ誓タコトテモ。非ヲ知テ改ルハ妄語ニナラヌシヤ。此ハ心内ノコトナレハ。顕露明白ナル事実ハ挙ラレネトモ。叛臣賊子。友ヲ売リ道ヲ障フ類。ミナ天道人理ニ違背スルト知ルヘキシヤ。

書き下し

心ノ妄語ト云ハ。人シレヌ心ノ内ニ。一度カクアルヘシト思ヒ定メタコトヲ容易ニ改ル類シヤ。仏菩薩ニ誓タコト神霊ニ誓タコトヲ容易ニ改ル類シヤ。コノ心ノ内ト云モノハ。多少ノ人カ容易ニ思フコトナレトモ。徳義ヲ成就スルコトハ。コノ人シレヌ処ニアルシヤ。一度心ニ決シタコトハ。再ヒ首ヲ回ラサヌ者カ世間ニ在テ英雄豪傑ト云ヘキシヤ。出世間ニ在テ必賢聖ノ地位ニ至ル器シヤ。ソレジヤカ若悪事ヲ心ニ思定メシヲ。後改ムルナト云デハナイ。設ヒ神霊ニ誓タコトテモ。非ヲ知テ改ルハ妄語ニナラヌシヤ。此ハ心内ノコトナレハ。顕露明白ナル事実ハ挙ラレネトモ。叛臣賊子。友ヲ売リ道ヲ障フ類。ミナ天道人理ニ違背スルト知ルヘキシヤ。

現代語訳

心の妄語というのは、人知れぬ心の内で、一度こうあるべきだと思い定めたことを、たやすく改める類である。仏菩薩に誓ったこと、神霊に誓ったことを、たやすく改める類である。この心の内というものは、多くの人がたやすく思うことであるが、徳や義を成就することは、この人知れぬところにあるのである。一度心に決めたことは再び振り返らない者が、世間にあっては英雄豪傑と言うべきである。出世間にあっては必ず賢者聖者の位に至る器である。そうではあるが、もし悪事を心に思い定めたのを、後で改めるなと言うのではない。たとえ神霊に誓ったことでも、非を知って改めるのは妄語にならないのである。これは心の内のことなので、はっきりと明白な事実は挙げられないが、主君に背く臣下や親に背く子、友を売り道を妨げる類は、みな天の道と人の理に背くと知るべきである。

解説

心の妄語とは、人知れず心に決めたことや、仏や神に誓ったことを軽々しく改めることだという。誰にも知られない心の中の約束こそが徳や義を成就させる場であり、一度決めたことを振り返らない者が英雄豪傑であり、聖賢の器だと慈雲は言う。ただし、悪いことを決めたなら改めるべきで、非を知って改めるのは妄語ではないと添えている。自分との約束を守ることと、誤りと知れば潔く改めることは矛盾しない。この両方を備えることが、信頼される人の条件である。

この章句が説くこと

心の妄語誓い徳義改過英雄

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