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十善法語 / 巻第四・不妄語戒

安永三年甲午正月八日示衆。師云。此不妄語戒ト云ハ。萬事ヲ僞ラヌコトシヤ。見タコト聞タコト。皆アリノママテ事カスムシヤ。知レタ通リ持チ易キシヤ。ソレシヤカ。此有ノ儘カ實ニ其德アルシヤ。初心ノ者ハ詐ヲイハヌハカリ。サシテ深妙ノ德モ有マシキヤウニ思フヘキナレトモ。サウテナイ。若人有テ不惜身命ニ護持シテ。イカヤウノ事カ有テモ。此戒ハ破ルマシト誠心決定スレハ。其德カ天地ニモ古今ニモユキワタルコトシヤ。語默動靜共ニ眞正法ト相應スル。見聞覺知共ニ勝義諦ト相應スル。福分智分カ此中ニ相應シ增長スル。壽量眷屬カ此中ニ相應シ增長スル。貪瞋邪見カ此中ニ微薄ニナル。殺盜邪婬カ此中ニ透脫スルシヤ。

新字:安永三年甲午正月八日示衆。師云。此不妄語戒ト云ハ。万事ヲ偽ラヌコトシヤ。見タコト聞タコト。皆アリノママテ事カスムシヤ。知レタ通リ持チ易キシヤ。ソレシヤカ。此有ノ儘カ実ニ其徳アルシヤ。初心ノ者ハ詐ヲイハヌハカリ。サシテ深妙ノ徳モ有マシキヤウニ思フヘキナレトモ。サウテナイ。若人有テ不惜身命ニ護持シテ。イカヤウノ事カ有テモ。此戒ハ破ルマシト誠心決定スレハ。其徳カ天地ニモ古今ニモユキワタルコトシヤ。語黙動静共ニ真正法ト相応スル。見聞覚知共ニ勝義諦ト相応スル。福分智分カ此中ニ相応シ增長スル。寿量眷属カ此中ニ相応シ增長スル。貪瞋邪見カ此中ニ微薄ニナル。殺盗邪婬カ此中ニ透脱スルシヤ。

書き下し

安永三年甲午正月八日示衆。師云。此不妄語戒ト云ハ。万事ヲ偽ラヌコトシヤ。見タコト聞タコト。皆アリノママテ事カスムシヤ。知レタ通リ持チ易キシヤ。ソレシヤカ。此有ノ儘カ実ニ其徳アルシヤ。初心ノ者ハ詐ヲイハヌハカリ。サシテ深妙ノ徳モ有マシキヤウニ思フヘキナレトモ。サウテナイ。若人有テ不惜身命ニ護持シテ。イカヤウノ事カ有テモ。此戒ハ破ルマシト誠心決定スレハ。其徳カ天地ニモ古今ニモユキワタルコトシヤ。語黙動静共ニ真正法ト相応スル。見聞覚知共ニ勝義諦ト相応スル。福分智分カ此中ニ相応シ增長スル。寿量眷属カ此中ニ相応シ增長スル。貪瞋邪見カ此中ニ微薄ニナル。殺盗邪婬カ此中ニ透脱スルシヤ。

現代語訳

安永三年(一七七四)正月八日、大衆に示された。師は言われた。この不妄語戒というのは、万事を偽らないことである。見たこと聞いたこと、みなありのままで事が済むのである。知れたとおり持ちやすい戒である。そうではあるが、このありのままということに、実にその徳があるのである。初心の者は、嘘を言わないだけのことで、さほど深く妙なる徳もあるまいと思うだろうが、そうではない。もし人がいて、身命を惜しまずに護持して、どのような事があってもこの戒は破るまいと誠の心で決定すれば、その徳は天地にも古今にも行き渡るのである。語るも黙るも、動くも静まるも、みな真正の法と相応する。見聞きし覚り知ることが、みな勝義諦(最高の真理)と相応する。福の分と智の分がこの中で相応し増していく。寿命と眷属(家族や仲間)がこの中で相応し増していく。貪り・怒り・邪見がこの中で薄くなる。殺生・盗み・邪婬がこの中で抜け落ちるのである。

解説

巻四は十善の第四、不妄語戒、つまり嘘をつかない戒を説く。慈雲はまず、見たまま聞いたままを語ればよいのだから守りやすい戒だと認めたうえで、このありのままにこそ深い徳があると言う。命を惜しまず、何があっても破らないと心に決めれば、その徳は語黙動静のすべてに及び、福や智慧を増し、貪りや怒りを薄くし、ほかの悪からも自然に離れていくという。一つの約束を徹底して守ることが人格全体を変えていく、という見方は、信頼を仕事の土台とする人にとって今も確かな指針である。

この章句が説くこと

不妄語十善真実

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