十善法語 / 巻第四・不妄語戒
此兩條ハ天竺國ノ因緣ナルカ。支那ニモ此類カ數多有ルヘキコトシヤ。和歌ヲ詠シ詩ヲ賦シテ。天地ヲモ動シ鬼神ヲモ感セシムル皆其理ノアルヘキコトシヤ。又此法ノ中ニ。眞言宗ハ三密相應トテ。手ニ印ヲモ結フ。意ニ觀念ヲモナスナレトモ。口ニ唱ル眞言陀羅尼ヲ以テ本旨トシテ。此ニ由テ宗旨ノ名ヲ立ルシヤ。四分律曇無德尊者ノ戒序ノ中ニモ。神仙五通ノ人カ咒術ヲ造作シテ。世間ヲ利益ストアル。大日經ニ。欲界ニ自在悅滿意ノ明有リ。一切欲處ノ天子悉ク迷醉ストアル。マシテ出世ノ眞言佛菩薩ノ眞言ヲ誦シテ。世間悉地出世間悉地ヲ成就スルハ。信スヘキ事シヤ。
新字:此両条ハ天竺国ノ因縁ナルカ。支那ニモ此類カ数多有ルヘキコトシヤ。和歌ヲ詠シ詩ヲ賦シテ。天地ヲモ動シ鬼神ヲモ感セシムル皆其理ノアルヘキコトシヤ。又此法ノ中ニ。真言宗ハ三密相応トテ。手ニ印ヲモ結フ。意ニ観念ヲモナスナレトモ。口ニ唱ル真言陀羅尼ヲ以テ本旨トシテ。此ニ由テ宗旨ノ名ヲ立ルシヤ。四分律曇無徳尊者ノ戒序ノ中ニモ。神仙五通ノ人カ咒術ヲ造作シテ。世間ヲ利益ストアル。大日経ニ。欲界ニ自在悦満意ノ明有リ。一切欲処ノ天子悉ク迷酔ストアル。マシテ出世ノ真言仏菩薩ノ真言ヲ誦シテ。世間悉地出世間悉地ヲ成就スルハ。信スヘキ事シヤ。
書き下し
此両条ハ天竺国ノ因縁ナルカ。支那ニモ此類カ数多有ルヘキコトシヤ。和歌ヲ詠シ詩ヲ賦シテ。天地ヲモ動シ鬼神ヲモ感セシムル皆其理ノアルヘキコトシヤ。又此法ノ中ニ。真言宗ハ三密相応トテ。手ニ印ヲモ結フ。意ニ観念ヲモナスナレトモ。口ニ唱ル真言陀羅尼ヲ以テ本旨トシテ。此ニ由テ宗旨ノ名ヲ立ルシヤ。四分律曇無徳尊者ノ戒序ノ中ニモ。神仙五通ノ人カ咒術ヲ造作シテ。世間ヲ利益ストアル。大日経ニ。欲界ニ自在悅満意ノ明有リ。一切欲処ノ天子悉ク迷酔ストアル。マシテ出世ノ真言仏菩薩ノ真言ヲ誦シテ。世間悉地出世間悉地ヲ成就スルハ。信スヘキ事シヤ。
現代語訳
この二つの話はインドの因縁であるが、中国にもこの類は多くあるはずのことである。和歌を詠み詩を作って、天地をも動かし鬼神をも感じさせるのも、みなその道理があるはずのことである。またこの仏法の中で、真言宗は三密相応といって、手に印を結び、心に観念をなすけれども、口に唱える真言陀羅尼を本旨として、これによって宗の名を立てるのである。四分律の曇無徳尊者の戒序の中にも、神仙や五通(五つの神通)を得た人が呪術を作り出して世間を利益する、とある。大日経に、欲界に自在悦満意の明呪があり、一切の欲界の天子がことごとく迷い酔う、とある。まして出世間の真言、仏菩薩の真言を誦して、世間の成就も出世間の成就も遂げるのは、信じるべきことである。
解説

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