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十善法語 / 巻第三・不邪婬戒

眞正ノ沙門ノ不婬戒ヲ護持スルハ。諸佛正法ノアル處シヤ。世間未曾有ノ法シヤ。五欲ノ中ニハ觸欲最重ク。情欲ノ中ニハ愛着最深シトアル。此婬欲ノ法身心ヲ繫縛シテ累劫ノ憂患トナル。此身心愛欲ニ隨順スレハ。此世界コトコトク執着トナル。流レテ我慢トナリ。或ハ闘諍ヲ起ス。畜生界阿修羅界モコレヨリ構造スルシヤ。世尊大慈等流。コノ僧寶ヲ世ニノコシテ人天ノ福緣トナシ給フ。

新字:真正ノ沙門ノ不婬戒ヲ護持スルハ。諸仏正法ノアル処シヤ。世間未曽有ノ法シヤ。五欲ノ中ニハ触欲最重ク。情欲ノ中ニハ愛着最深シトアル。此婬欲ノ法身心ヲ繋縛シテ累劫ノ憂患トナル。此身心愛欲ニ随順スレハ。此世界コトコトク執着トナル。流レテ我慢トナリ。或ハ闘諍ヲ起ス。畜生界阿修羅界モコレヨリ構造スルシヤ。世尊大慈等流。コノ僧宝ヲ世ニノコシテ人天ノ福縁トナシ給フ。

書き下し

真正ノ沙門ノ不婬戒ヲ護持スルハ。諸仏正法ノアル処シヤ。世間未曽有ノ法シヤ。五欲ノ中ニハ触欲最重ク。情欲ノ中ニハ愛着最深シトアル。此婬欲ノ法身心ヲ繋縛シテ累劫ノ憂患トナル。此身心愛欲ニ随順スレハ。此世界コトコトク執着トナル。流レテ我慢トナリ。或ハ闘諍ヲ起ス。畜生界阿修羅界モコレヨリ構造スルシヤ。世尊大慈等流。コノ僧宝ヲ世ニノコシテ人天ノ福縁トナシ給フ。

現代語訳

真正の沙門が不婬戒を護持するのは、諸仏の正法のあるところである。世間にかつてない法である。五欲の中では触欲が最も重く、情欲の中では愛着が最も深い、とある。この婬欲というものは身心を縛りつけて、長い劫にわたる憂いと患いとなる。この身心が愛欲に従えば、この世界がことごとく執着となる。それが流れて我慢(我を張る驕り)となり、あるいは争いを起こす。畜生界や阿修羅界もこれから造り出されるのである。世尊は大いなる慈悲を等しく流し、この僧宝を世に残して、人間や天上の者の福の縁とされた。

解説

出家が不婬戒を守ることの意味を説く。五欲とは色・声・香・味・触への欲で、その中でも触れることへの欲が最も重く、愛着が最も深いとされる。愛欲に従えば世界のすべてが執着の対象となり、そこから我の張り合いや争いが生まれ、畜生や阿修羅の世界まで造り出す、と慈雲は仏教の世界観に沿って説いている。欲そのものを憎むよりも、執着が我慢と争いへ流れていく道筋を示している点が要である。人との対立の根に自分の執着がないかを見直す手がかりになる。

この章句が説くこと

五欲愛着我慢執着不婬戒

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