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十善法語 / 巻第三・不邪婬戒

安永二年癸巳十二月二十三日示衆。師云。不邪婬戒ノ相ハ正シキコトシヤ。不婬戒ノ相ハ尊尙ナルコトシヤ。常ノ人ハ不邪婬戒ハ世間ニ許ササル婬事ヲ爲スノミト思ヒ。不婬戒ハ愛着ノ心ヲ防キ不淨行ヲナサヌノミト思フ。サウテハナイ。此戒相ハ法性ヨリ等流シ來テ。近ク人天ヲ利益シ。遠ク無漏道ニ達スルノ大道シヤ。常人ハ男子女人ノ間ノ事ト云ヘハ。戯笑ニ聞ナスヘキナレトモ。サウデハナイ。律文ニ。婬戒ノ相ヲ演說スルトキ。笑フ者アラハ擯出セヨトアル。賢聖ノ法ヲ重ンスルコト如是シヤ。

新字:安永二年癸巳十二月二十三日示衆。師云。不邪婬戒ノ相ハ正シキコトシヤ。不婬戒ノ相ハ尊尚ナルコトシヤ。常ノ人ハ不邪婬戒ハ世間ニ許ササル婬事ヲ為スノミト思ヒ。不婬戒ハ愛着ノ心ヲ防キ不浄行ヲナサヌノミト思フ。サウテハナイ。此戒相ハ法性ヨリ等流シ来テ。近ク人天ヲ利益シ。遠ク無漏道ニ達スルノ大道シヤ。常人ハ男子女人ノ間ノ事ト云ヘハ。戯笑ニ聞ナスヘキナレトモ。サウデハナイ。律文ニ。婬戒ノ相ヲ演説スルトキ。笑フ者アラハ擯出セヨトアル。賢聖ノ法ヲ重ンスルコト如是シヤ。

書き下し

安永二年癸巳十二月二十三日示衆。師云。不邪婬戒ノ相ハ正シキコトシヤ。不婬戒ノ相ハ尊尚ナルコトシヤ。常ノ人ハ不邪婬戒ハ世間ニ許ササル婬事ヲ為スノミト思ヒ。不婬戒ハ愛着ノ心ヲ防キ不浄行ヲナサヌノミト思フ。サウテハナイ。此戒相ハ法性ヨリ等流シ来テ。近ク人天ヲ利益シ。遠ク無漏道ニ達スルノ大道シヤ。常人ハ男子女人ノ間ノ事ト云ヘハ。戯笑ニ聞ナスヘキナレトモ。サウデハナイ。律文ニ。婬戒ノ相ヲ演説スルトキ。笑フ者アラハ擯出セヨトアル。賢聖ノ法ヲ重ンスルコト如是シヤ。

現代語訳

安永二年(一七七三)十二月二十三日、大衆に示された。師は言われた。不邪婬戒の相(すがた)は正しいことである。不婬戒の相は尊く高いことである。普通の人は、不邪婬戒とは世間で許されない婬事をしないことだけだと思い、不婬戒とは愛着の心を防いで不浄の行いをしないことだけだと思う。そうではない。この戒の相は法性から等しく流れ出てきて、近くは人間と天上の者を利益し、遠くは無漏の道(煩悩を離れた悟りの道)に達する大いなる道である。普通の人は、男子と女人の間のことと言えば戯れや笑いごととして聞きなすものだが、そうではない。律の文に、婬戒の相を説き聞かせるときに笑う者があれば追い出せ、とある。賢者や聖者が法を重んじることは、このようである。

解説

巻三は十善の第三、不邪婬戒を説く。慈雲はまず、在家の不邪婬戒(定まった配偶者以外と交わらない)と出家の不婬戒(一切の性の交わりを断つ)を分け、どちらも単なる禁止事項ではなく、法性、つまりあらゆるものの本来のあり方から流れ出た大道だと位置づける。男女のことを笑いごとにする者を律が追い出させるという例は、性の話題を茶化さず真剣に扱う姿勢を示している。性や家庭の話を軽口で済ませず、人の尊厳にかかわる事柄として向き合えているかを問う一節である。

この章句が説くこと

不邪婬不婬戒法性

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