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十善法語 / 巻第三・不邪婬戒

此中今且ク一二ノ例ヲ擧ハ。諸史ニ。夏殷周有道ノ君ハ外ニ明臣賢佐アルノミナラス。內ニ后妃ノ輔アリシト云。中古ニハ漢ノ陰后馬后。唐ノ長孫皇后等。宋明ノ世ニ降テモ杜后曹后ノ時變ヲ治ル類。印度ニハ末利夫人ノ波斯匿王ニ事フル。紺容夫人ノ優陀延王ニ事ル類。妃匹ノ補助少カラヌト云コトシヤ。臣庶ノ中ニハ。支那春秋ノ時。姜氏ノ晉公子重耳ヲ諫メ。僖負羈カ妻ノ狐偃趙衰子犯等ノ國相タルヘキヲ知ル類。聖教ノ中ニハ須摩提女カ類。皆人ノ知ル所シヤ。

新字:此中今且ク一二ノ例ヲ挙ハ。諸史ニ。夏殷周有道ノ君ハ外ニ明臣賢佐アルノミナラス。内ニ后妃ノ輔アリシト云。中古ニハ漢ノ陰后馬后。唐ノ長孫皇后等。宋明ノ世ニ降テモ杜后曹后ノ時変ヲ治ル類。印度ニハ末利夫人ノ波斯匿王ニ事フル。紺容夫人ノ優陀延王ニ事ル類。妃匹ノ補助少カラヌト云コトシヤ。臣庶ノ中ニハ。支那春秋ノ時。姜氏ノ晋公子重耳ヲ諫メ。僖負羈カ妻ノ狐偃趙衰子犯等ノ国相タルヘキヲ知ル類。聖教ノ中ニハ須摩提女カ類。皆人ノ知ル所シヤ。

書き下し

此中今且ク一二ノ例ヲ挙ハ。諸史ニ。夏殷周有道ノ君ハ外ニ明臣賢佐アルノミナラス。内ニ后妃ノ輔アリシト云。中古ニハ漢ノ陰后馬后。唐ノ長孫皇后等。宋明ノ世ニ降テモ杜后曹后ノ時変ヲ治ル類。印度ニハ末利夫人ノ波斯匿王ニ事フル。紺容夫人ノ優陀延王ニ事ル類。妃匹ノ補助少カラヌト云コトシヤ。臣庶ノ中ニハ。支那春秋ノ時。姜氏ノ晋公子重耳ヲ諫メ。僖負羈カ妻ノ狐偃趙衰子犯等ノ国相タルヘキヲ知ル類。聖教ノ中ニハ須摩提女カ類。皆人ノ知ル所シヤ。

現代語訳

この中から今しばらく一、二の例を挙げれば、諸々の史書に、夏・殷・周の道ある君主には、外に明らかな臣や賢い補佐役がいただけでなく、内に后妃の助けがあったという。中古には漢の陰皇后・馬皇后、唐の長孫皇后など、宋や明の世に下っても杜后・曹后が時の変事を収めた類がある。インドには末利夫人が波斯匿王に仕え、紺容夫人が優陀延王に仕えた類がある。妃や配偶者の助けは少なくない、ということである。臣下や庶民の中では、中国の春秋時代に、姜氏が晋の公子重耳を諫め、僖負羈の妻が狐偃・趙衰・子犯らが国の宰相となるべき人であることを見抜いた類がある。聖教(仏典)の中では須摩提女の類がある。みな人の知るところである。

解説

良い君主の陰には后妃の支えがあった、という例を中国とインドから並べる。陰皇后と馬皇后は後漢の光武帝と明帝の皇后、長孫皇后は唐の太宗の皇后で、いずれも賢后として知られる。末利夫人は波斯匿王の妃で仏に帰依した人、重耳は後の晋の文公である。当時の教えとしては妻が夫を内から支えるという形で語られているが、ここにある普遍的な点は、身近な人の諫めや見立てに耳を傾けた者が大きな仕事を成し遂げた、ということである。

この章句が説くこと

后妃補佐諫め重耳末利夫人

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