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十善法語 / 巻第二・不偸盜戒

又律藏ニ。昔世尊蘇羅婆國ニ遊ヒ。大比丘衆五百人ト倶ニ毗蘭若ニ至ル。此處ニ毗蘭若婆羅門ト云者有テ。佛ト五百羅漢トヲ一夏九旬ノ供養ヲ請シ奉ル。佛ノ常法默然トシテ請ヲ受タマフ。婆羅門カ其夜ノ夢ニ。七重ノ白氈城ヲ圍繞スト見ル。博士ヲ呼テ占シム。此博士固ヨリ外道ヲ信シ。佛法ヲ嫉ム。正シク福德ノ相ト知リナカラ。詐リ告ク。此ハ大惡夢ナリ。若ハ强敵來テ國ヲ奪フヘキカ。又自ラ身命ノ終ル相ナルヘシト。婆羅門怖テ問。免ルルニ術有ヤ否ヤ。博士答フ。其術アリ。今ヨリ深宮ノ內ニ在テ。一向外人ニ對面ナク言語ナク。唯侍女ト共ニ一夏九旬滿セハ。此災免ルヘシト。婆羅門此語ヲ受テ。宮中ニ入テ。唯五欲ノ樂ヲ受テ。一向世尊ヲ供養シ奉ルコトヲ忘ル。

新字:又律蔵ニ。昔世尊蘇羅婆国ニ遊ヒ。大比丘衆五百人ト倶ニ毗蘭若ニ至ル。此処ニ毗蘭若婆羅門ト云者有テ。仏ト五百羅漢トヲ一夏九旬ノ供養ヲ請シ奉ル。仏ノ常法黙然トシテ請ヲ受タマフ。婆羅門カ其夜ノ夢ニ。七重ノ白氈城ヲ囲繞スト見ル。博士ヲ呼テ占シム。此博士固ヨリ外道ヲ信シ。仏法ヲ嫉ム。正シク福徳ノ相ト知リナカラ。詐リ告ク。此ハ大悪夢ナリ。若ハ強敵来テ国ヲ奪フヘキカ。又自ラ身命ノ終ル相ナルヘシト。婆羅門怖テ問。免ルルニ術有ヤ否ヤ。博士答フ。其術アリ。今ヨリ深宮ノ内ニ在テ。一向外人ニ対面ナク言語ナク。唯侍女ト共ニ一夏九旬満セハ。此災免ルヘシト。婆羅門此語ヲ受テ。宮中ニ入テ。唯五欲ノ楽ヲ受テ。一向世尊ヲ供養シ奉ルコトヲ忘ル。

書き下し

又律蔵ニ。昔世尊蘇羅婆国ニ遊ヒ。大比丘衆五百人ト倶ニ毗蘭若ニ至ル。此処ニ毗蘭若婆羅門ト云者有テ。仏ト五百羅漢トヲ一夏九旬ノ供養ヲ請シ奉ル。仏ノ常法黙然トシテ請ヲ受タマフ。婆羅門カ其夜ノ夢ニ。七重ノ白氈城ヲ囲繞スト見ル。博士ヲ呼テ占シム。此博士固ヨリ外道ヲ信シ。仏法ヲ嫉ム。正シク福徳ノ相ト知リナカラ。詐リ告ク。此ハ大悪夢ナリ。若ハ强敵来テ国ヲ奪フヘキカ。又自ラ身命ノ終ル相ナルヘシト。婆羅門怖テ問。免ルルニ術有ヤ否ヤ。博士答フ。其術アリ。今ヨリ深宮ノ内ニ在テ。一向外人ニ対面ナク言語ナク。唯侍女ト共ニ一夏九旬満セハ。此災免ルヘシト。婆羅門此語ヲ受テ。宮中ニ入テ。唯五欲ノ楽ヲ受テ。一向世尊ヲ供養シ奉ルコトヲ忘ル。

現代語訳

また律蔵に、昔、世尊が蘇羅婆国を遊行され、大比丘衆五百人とともに毘蘭若に至られた。ここに毘蘭若婆羅門という者がいて、仏と五百の羅漢を夏安居九十日の供養に招請し奉った。仏の常の作法として、黙然として招請を受けられた。婆羅門はその夜の夢に、七重の白い毛氈が城を取り囲むのを見た。博士を呼んで占わせた。この博士はもとより外道を信じ、仏法を妬んでいた。正しく福徳の相と知りながら、偽って告げた。「これは大悪夢である。あるいは強敵が来て国を奪うであろうか。または自らの命が終わる相であろう」と。婆羅門は恐れて問うた。「免れる術はあるか否か」と。博士は答えた。「その術はある。今から奥深い宮殿の内にいて、一切外の人に対面せず言葉を交わさず、ただ侍女とともに夏の九十日を過ごせば、この災いは免れるであろう」と。婆羅門はこの言葉を受けて宮中に入り、ただ五欲の楽しみを受けて、一向に世尊を供養し奉ることを忘れた。

解説

律蔵に伝わる、釈尊が馬麦を食べて夏を過ごした因縁の前半である。毘蘭若の婆羅門は釈尊と五百人の弟子を三か月供養すると約束したが、吉夢を見たのに、仏法を妬む占い師に凶夢だと偽られ、宮殿に籠もって約束を忘れてしまう。悪意ある助言者の一言が、善意の約束を反故にさせる構図である。人は恐れを突かれると、目の前の大切な約束より自分の身の安全を優先してしまう。誰の助言に耳を傾けるかの大切さを考えさせる話である。

この章句が説くこと

律蔵約束讒言恐れ供養因縁

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