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十善法語 / 巻第二・不偸盜戒

士庶人ナレハ近クハ身ヲ修メ家ヲ齊フ。遠クハ無漏正道ノ因緣ト成ル。王公大人ナレハ近クハ國ヲ治メ天下ヲ治テ。萬民ト共ニ太平ノ風化ヲ樂ム。遠クハ千萬衆ト共ニ無漏正道ノ因緣トナル。出家ナレハ戒學ヲ以テ自ラ身心清淨ニシ。他ヲ教ヘテ身心清淨ナラシメ。定學ヲ以テ自ラ身心寂靜ニシ。他ヲ教テ身心寂靜ナラシメ。慧學ヲ以テ自ラ身心明了ニシ。他ヲ教テ身心明了ナラシム。若賢聖ナラハタトヒ深山幽谷ノ中ニ在テ一人ノ知人ナキモ。其國ノ福緣廣大ナルト云コトシヤ。若緣有テ顯ルルトキハ。衆目ノ視ルトコロシヤ。阿含經中ニ心ヲ以テ心ヲ修ルト云ハ。彼等カ云ヤウナルコトテハナキシヤ。

新字:士庶人ナレハ近クハ身ヲ修メ家ヲ斉フ。遠クハ無漏正道ノ因縁ト成ル。王公大人ナレハ近クハ国ヲ治メ天下ヲ治テ。万民ト共ニ太平ノ風化ヲ楽ム。遠クハ千万衆ト共ニ無漏正道ノ因縁トナル。出家ナレハ戒学ヲ以テ自ラ身心清浄ニシ。他ヲ教ヘテ身心清浄ナラシメ。定学ヲ以テ自ラ身心寂静ニシ。他ヲ教テ身心寂静ナラシメ。慧学ヲ以テ自ラ身心明了ニシ。他ヲ教テ身心明了ナラシム。若賢聖ナラハタトヒ深山幽谷ノ中ニ在テ一人ノ知人ナキモ。其国ノ福縁広大ナルト云コトシヤ。若縁有テ顕ルルトキハ。衆目ノ視ルトコロシヤ。阿含経中ニ心ヲ以テ心ヲ修ルト云ハ。彼等カ云ヤウナルコトテハナキシヤ。

書き下し

士庶人ナレハ近クハ身ヲ修メ家ヲ斉フ。遠クハ無漏正道ノ因縁ト成ル。王公大人ナレハ近クハ国ヲ治メ天下ヲ治テ。万民ト共ニ太平ノ風化ヲ楽ム。遠クハ千万衆ト共ニ無漏正道ノ因縁トナル。出家ナレハ戒学ヲ以テ自ラ身心清浄ニシ。他ヲ教ヘテ身心清浄ナラシメ。定学ヲ以テ自ラ身心寂静ニシ。他ヲ教テ身心寂静ナラシメ。慧学ヲ以テ自ラ身心明了ニシ。他ヲ教テ身心明了ナラシム。若賢聖ナラハタトヒ深山幽谷ノ中ニ在テ一人ノ知人ナキモ。其国ノ福縁広大ナルト云コトシヤ。若縁有テ顕ルルトキハ。衆目ノ視ルトコロシヤ。阿含経中ニ心ヲ以テ心ヲ修ルト云ハ。彼等カ云ヤウナルコトテハナキシヤ。

現代語訳

士や庶民であれば、近くは身を修め家を整える。遠くは煩悩のない正しい道の因縁となる。王公や大人であれば、近くは国を治め天下を治めて、万民とともに太平の教化を楽しむ。遠くは千万の衆とともに煩悩のない正しい道の因縁となる。出家であれば、戒学によって自ら身心を清浄にし、他人を教えて身心を清浄にさせ、定学によって自ら身心を寂静にし、他人を教えて身心を寂静にさせ、慧学によって自ら身心を明らかにし、他人を教えて身心を明らかにさせる。もし賢聖であれば、たとえ深山幽谷の中にいて一人の知る人もなくても、その国の福縁は広大であるということである。もし縁があって世に顕れる時は、衆人の目の見る所である。阿含経の中に心で心を修めると言うのは、彼らが言うようなことではないのである。

解説

仏法は心の修養ばかりで世の役に立たないという批判への答えである。十善は、庶民なら身を修め家を整え、王公なら国を治めて万民と太平を楽しむ力となり、出家なら戒・定・慧の三学で自他の身心を清め静め明らかにする。さらに、山奥に隠れた賢者が一人いるだけで、その国の福は大きいという。心で心を修めるとは、世間から逃げることではない。自分の内を整えることが、家庭や職場、社会を整えることにそのままつながっているという見方がここにある。

この章句が説くこと

修身斉家治国三学十善阿含経

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