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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

此法本ヨリ具足シテ闕失無レトモ。授受ノ規則有テ戒體ヲ發得スル。喩ヘハ輪王ノ長子生得尊貴ナレドモ。卽位ノ規則有テ天位ニ登ル如クシヤ。此法本性平等ニシテ偏倚無レドモ。境ニ對シテ別別ニ解脫スル。喩ヘハ摩尼珠ノ衆色ヲ現スル如クシヤ。有情ニ命根有リ。人人保着シテ寤寐ニ忘レヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切損害ノ行爰ニ解脫スルシヤ。有情ニ內外ノ資緣有リ。日夜奔走シテ求テ厭ヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切侵奪ノ行爰ニ解脫スルシヤ。有情ニ能所ノ愛有リ。此愛身心ヲ役使シテ奴僕ノ如シ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切執着爰ニ解脫スルシヤ。

新字:此法本ヨリ具足シテ闕失無レトモ。授受ノ規則有テ戒体ヲ発得スル。喩ヘハ輪王ノ長子生得尊貴ナレドモ。即位ノ規則有テ天位ニ登ル如クシヤ。此法本性平等ニシテ偏倚無レドモ。境ニ対シテ別別ニ解脱スル。喩ヘハ摩尼珠ノ衆色ヲ現スル如クシヤ。有情ニ命根有リ。人人保着シテ寤寐ニ忘レヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切損害ノ行爰ニ解脱スルシヤ。有情ニ内外ノ資縁有リ。日夜奔走シテ求テ厭ヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切侵奪ノ行爰ニ解脱スルシヤ。有情ニ能所ノ愛有リ。此愛身心ヲ役使シテ奴僕ノ如シ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切執着爰ニ解脱スルシヤ。

書き下し

此法本ヨリ具足シテ闕失無レトモ。授受ノ規則有テ戒体ヲ発得スル。喩ヘハ輪王ノ長子生得尊貴ナレドモ。即位ノ規則有テ天位ニ登ル如クシヤ。此法本性平等ニシテ偏倚無レドモ。境ニ対シテ別別ニ解脱スル。喩ヘハ摩尼珠ノ衆色ヲ現スル如クシヤ。有情ニ命根有リ。人人保着シテ寤寐ニ忘レヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切損害ノ行爰ニ解脱スルシヤ。有情ニ内外ノ資縁有リ。日夜奔走シテ求テ厭ヌ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切侵奪ノ行爰ニ解脱スルシヤ。有情ニ能所ノ愛有リ。此愛身心ヲ役使シテ奴僕ノ如シ。我戒善此ニ由テ倍增スル。一切執着爰ニ解脱スルシヤ。

現代語訳

この法は本来具わっていて欠けるところがないけれども、授け受ける規則があって、戒体(戒の本体)を得るのである。たとえば転輪聖王の長子が生まれながらに尊貴であっても、即位の規則があって天子の位に登るようなものである。この法は本性として平等で偏りがないけれども、向き合う対象に応じて一つ一つ解脱していく。たとえば摩尼珠がさまざまな色を映し出すようなものである。生きものには命がある。人々はそれに執着して寝ても覚めても忘れない。わが戒の善はこれによって倍増し、一切の損ない害する行いがここで解脱されるのである。生きものには内外の生活の資があり、日夜奔走して求めて飽きることがない。わが戒の善はこれによって倍増し、一切の侵し奪う行いがここで解脱されるのである。生きものには愛する者と愛される者の愛があり、この愛が身心を奴僕のようにこき使う。わが戒の善はこれによって倍増し、一切の執着がここで解脱されるのである。

解説

十善は生まれつき誰にも具わっているが、それでも授戒という手続きを経て戒体を得る、と尊者は言う。皇太子が生まれながら尊くても即位の儀式を経て位に就くのと同じだという譬えである。さらに、命への執着、財への渇望、愛欲という誘惑があるからこそ、それに向き合うたびに戒の善が倍増し、殺・盗・婬の行いから解き放たれるという。誘惑は戒の敵であるだけでなく、戒を育てる場でもある。困難な状況を、自分の軸を鍛える機会として受け取る見方がここにある。

この章句が説くこと

戒体解脱授戒執着不殺生不偸盗

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