十善法語 / 巻第二・不偸盜戒
一例ヲ擧テ云ハ。一時世饑饉シテ供養ノ人ナシ。世尊モ一日食具ヲカク。一比丘思惟ス。今日世尊ヲ供養シテ功德ヲ得ヘシト。自大衣ヲ賣リ。其價直ヲ食物ニカヘ來テ。世尊ニ奉ントス。世尊曰。袈裟不可賣。假令供養佛寶。亦賣袈裟則獲罪。但除父母貧窮之緣ト。カウシヤ。父母ヲ孝養スル道ハ佛モ格別シヤ。父母孝養ノコトハ。別ニ孝子經父母恩難報經有シヤ。佛法ヲ信シテ不孝ニナル理ハナキコトシヤ。唐末趙宋已來ノ書生カ。佛經ヲ見スシテ。猥リニ評判スルニ由テ。此樣ナル當ラヌコトトモカ多キシヤ。不調法ナルコトシヤ。
新字:一例ヲ挙テ云ハ。一時世饑饉シテ供養ノ人ナシ。世尊モ一日食具ヲカク。一比丘思惟ス。今日世尊ヲ供養シテ功徳ヲ得ヘシト。自大衣ヲ売リ。其価直ヲ食物ニカヘ来テ。世尊ニ奉ントス。世尊曰。袈裟不可売。仮令供養仏宝。亦売袈裟則獲罪。但除父母貧窮之縁ト。カウシヤ。父母ヲ孝養スル道ハ仏モ格別シヤ。父母孝養ノコトハ。別ニ孝子経父母恩難報経有シヤ。仏法ヲ信シテ不孝ニナル理ハナキコトシヤ。唐末趙宋已来ノ書生カ。仏経ヲ見スシテ。猥リニ評判スルニ由テ。此様ナル当ラヌコトトモカ多キシヤ。不調法ナルコトシヤ。
書き下し
一例ヲ挙テ云ハ。一時世饑饉シテ供養ノ人ナシ。世尊モ一日食具ヲカク。一比丘思惟ス。今日世尊ヲ供養シテ功徳ヲ得ヘシト。自大衣ヲ売リ。其価直ヲ食物ニカヘ来テ。世尊ニ奉ントス。世尊曰。袈裟不可売。仮令供養仏宝。亦売袈裟則獲罪。但除父母貧窮之縁ト。カウシヤ。父母ヲ孝養スル道ハ仏モ格別シヤ。父母孝養ノコトハ。別ニ孝子経父母恩難報経有シヤ。仏法ヲ信シテ不孝ニナル理ハナキコトシヤ。唐末趙宋已来ノ書生カ。仏経ヲ見スシテ。猥リニ評判スルニ由テ。此様ナル当ラヌコトトモカ多キシヤ。不調法ナルコトシヤ。
現代語訳
一例を挙げて言えば、ある時、世が飢饉で供養する人がいなかった。世尊も一日、食を欠かれた。一人の比丘が思惟した。「今日、世尊を供養して功徳を得よう」と。自ら大衣を売り、その代価を食物に替えて来て、世尊に奉ろうとした。世尊は言われた。「袈裟は売ってはならない。たとえ仏宝に供養するためであっても、袈裟を売れば罪を得る。ただし父母が貧窮している場合は除く」と。こうである。父母に孝養を尽くす道は、仏も格別である。父母孝養のことは、別に孝子経や父母恩難報経がある。仏法を信じて不孝になる理はないことである。唐末や趙宋以来の書生が、仏経を見ずにみだりに評判するので、このような当たらないことが多いのである。不調法なことである。
解説
この章句が説くこと
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