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十善法語 / 巻第二・不偸盜戒

又或者カ云。佛法ニ依ル者ハ次第ニ愚癡ニナル。罪業ヲ恐レテハ小蟲ヲ誤殺シテモ淚ヲ流シ。後世ノ福ヲ求テハ漫リニ財物ヲ費シ。重寶ヲモ僧ニ喜捨スル。佛性ナトノ名句ニ迷テ。犬猫ヲ踏テモ禮拜ス。大義ヲ忘レテ小威儀ニ滯ルト。此等ハ近代律僧等ノ中。一類ノ弊儀ヲ見テ。世尊ノ正意ノ樣ニ心得ルモノノ言葉シヤ。律家モ眞ノ者ハ小威儀ヲ忽カセニセヌ中ニ。大行ヲ成就スルコトシヤ。

新字:又或者カ云。仏法ニ依ル者ハ次第ニ愚痴ニナル。罪業ヲ恐レテハ小虫ヲ誤殺シテモ涙ヲ流シ。後世ノ福ヲ求テハ漫リニ財物ヲ費シ。重宝ヲモ僧ニ喜捨スル。仏性ナトノ名句ニ迷テ。犬猫ヲ踏テモ礼拝ス。大義ヲ忘レテ小威儀ニ滞ルト。此等ハ近代律僧等ノ中。一類ノ弊儀ヲ見テ。世尊ノ正意ノ様ニ心得ルモノノ言葉シヤ。律家モ真ノ者ハ小威儀ヲ忽カセニセヌ中ニ。大行ヲ成就スルコトシヤ。

書き下し

又或者カ云。仏法ニ依ル者ハ次第ニ愚痴ニナル。罪業ヲ恐レテハ小虫ヲ誤殺シテモ涙ヲ流シ。後世ノ福ヲ求テハ漫リニ財物ヲ費シ。重宝ヲモ僧ニ喜捨スル。仏性ナトノ名句ニ迷テ。犬猫ヲ踏テモ礼拝ス。大義ヲ忘レテ小威儀ニ滞ルト。此等ハ近代律僧等ノ中。一類ノ弊儀ヲ見テ。世尊ノ正意ノ様ニ心得ルモノノ言葉シヤ。律家モ真ノ者ハ小威儀ヲ忽カセニセヌ中ニ。大行ヲ成就スルコトシヤ。

現代語訳

またある者が言う。「仏法に依る者は次第に愚かになる。罪業を恐れては、小さな虫を誤って殺しても涙を流し、後世の福を求めては、みだりに財物を費やし、重宝をも僧に喜捨する。仏性などという名句に迷って、犬猫を踏んでも礼拝する。大義を忘れて小さな作法にとどこおる」と。これらは近代の律僧などの中の、ある類の弊害ある風儀を見て、世尊の正しい意図のように心得る者の言葉である。律家も真の者は、小さな作法をおろそかにしない中に、大いなる行を成就することである。

解説

仏法を信じると愚かになる、虫を殺して泣き、財を僧に投げ出し、犬猫にまで礼拝し、大義を忘れて細かな作法に縛られる、という批判である。尊者はこれを一部の律僧の偏りを見た誤解とし、真の律僧は小さな作法をおろそかにしない中で大きな行を成し遂げると答える。尊者自身が戒律復興を志した人であることを思えば重みがある。細部へのこだわりと大局を見る目は、対立するものではない。小事を丁寧に積むことが大事を成す土台になるという考え方は、仕事にも通じる。

この章句が説くこと

威儀大行細部大局仏性

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