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十善法語 / 巻第二・不偸盜戒

律文ニ。一比丘アリ一住處ニ安居ス。鬼神アリ時時來テ此處伏藏アリト告ク。是ヲ世尊ニ白ス。世尊曰ク。此緣事アラハ夏ヲ移去ヘシト。又毗舍佉母祇園精舍ニ詣シテ。樹下ニ寶瓔珞ヲ遺シ去ル。此時下至淨人マテ心頭ニ係ル者カ無リシト。是シヤ。佛弟子タル者ノ風儀シヤ。菩薩ハ此佛弟子ノ風カ其性ヲ成就スルシヤ。此盜戒ノ如ク。前後ノ九戒モ皆菩薩タル者ノ本性シヤ。

新字:律文ニ。一比丘アリ一住処ニ安居ス。鬼神アリ時時来テ此処伏蔵アリト告ク。是ヲ世尊ニ白ス。世尊曰ク。此縁事アラハ夏ヲ移去ヘシト。又毗舎佉母祇園精舎ニ詣シテ。樹下ニ宝瓔珞ヲ遺シ去ル。此時下至浄人マテ心頭ニ係ル者カ無リシト。是シヤ。仏弟子タル者ノ風儀シヤ。菩薩ハ此仏弟子ノ風カ其性ヲ成就スルシヤ。此盗戒ノ如ク。前後ノ九戒モ皆菩薩タル者ノ本性シヤ。

書き下し

律文ニ。一比丘アリ一住処ニ安居ス。鬼神アリ時時来テ此処伏蔵アリト告ク。是ヲ世尊ニ白ス。世尊曰ク。此縁事アラハ夏ヲ移去ヘシト。又毗舎佉母祇園精舎ニ詣シテ。樹下ニ宝瓔珞ヲ遺シ去ル。此時下至浄人マテ心頭ニ係ル者カ無リシト。是シヤ。仏弟子タル者ノ風儀シヤ。菩薩ハ此仏弟子ノ風カ其性ヲ成就スルシヤ。此盗戒ノ如ク。前後ノ九戒モ皆菩薩タル者ノ本性シヤ。

現代語訳

律の文に、ある比丘が一つの住処で夏の安居をしていた。鬼神がいて、時々来ては「ここに埋蔵された宝がある」と告げた。これを世尊に申し上げた。世尊は言われた。「そういう事があるならば、夏の安居の場所を移し去りなさい」と。また毘舎佉母(ヴィシャーカー)が祇園精舎に参詣して、樹の下に宝の首飾りを置き忘れて去った。この時、下は寺の雑務をする浄人に至るまで、心にかける者がなかったという。これである。仏弟子たる者の風儀である。菩薩はこの仏弟子の風儀が、その性として成就しているのである。この盗戒のように、前後の九つの戒も、みな菩薩たる者の本性である。

解説

盗まないことが性になっている様子を、律の二つの逸話で示す。埋蔵金があると聞かされた比丘に、釈尊は掘れとも見るなとも言わず、その場所を離れよと命じた。誘惑の近くに身を置かないことが戒を守る知恵である。また、ヴィシャーカーという篤信の女性信者が精舎に宝飾品を忘れたとき、下働きの者に至るまで誰も気に留めなかったという。落とし物に心が動かない集団の空気こそ、仏弟子の風儀だというのである。個人の意志だけでなく、場の風土が人を守ることを示している。

この章句が説くこと

不偸盗風儀誘惑仏弟子本性

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