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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

有信ノ者ハ先ツ此人間ノ尊尙ナルコトヲ憶念スルカヨイ。天地ニ參リテ三才ト稱ス。佛菩薩モ此人中ニ跡ヲ垂ル。賢者聖人モ此人中ニ出ル。諸ノ神祇モ此人間ヲ守護アル。此等ノ憶念タニ相續スレハ。自ラ初戒ハ全キシヤ。此人趣ヲ尊重スル心アレハ。自ラ恚怒ノ心ヲ離レテ。打罵惡賤ノ事ナク。方便罪ヲ離ル方便罪ヲ離ルレハ。自ラ根本罪ニ至ラヌ。上人德者ニ尊重ノ心ヲ生スルノミナラス。中人庸流ヲモ尊重スルシヤ。中人庸流ヲ尊重スルノミナラス。下等愚人暴惡ノ者ニモ尊重ノ心ヲ失ハヌシヤ。此仁慈ノ心ヲ一切人間ニ徧シテ自ラ其德ヲ全クスル。此ヲ不殺人戒ノ相ト名ツクル。

新字:有信ノ者ハ先ツ此人間ノ尊尚ナルコトヲ憶念スルカヨイ。天地ニ参リテ三才ト称ス。仏菩薩モ此人中ニ跡ヲ垂ル。賢者聖人モ此人中ニ出ル。諸ノ神祇モ此人間ヲ守護アル。此等ノ憶念タニ相続スレハ。自ラ初戒ハ全キシヤ。此人趣ヲ尊重スル心アレハ。自ラ恚怒ノ心ヲ離レテ。打罵悪賤ノ事ナク。方便罪ヲ離ル方便罪ヲ離ルレハ。自ラ根本罪ニ至ラヌ。上人徳者ニ尊重ノ心ヲ生スルノミナラス。中人庸流ヲモ尊重スルシヤ。中人庸流ヲ尊重スルノミナラス。下等愚人暴悪ノ者ニモ尊重ノ心ヲ失ハヌシヤ。此仁慈ノ心ヲ一切人間ニ遍シテ自ラ其徳ヲ全クスル。此ヲ不殺人戒ノ相ト名ツクル。

書き下し

有信ノ者ハ先ツ此人間ノ尊尚ナルコトヲ憶念スルカヨイ。天地ニ参リテ三才ト称ス。仏菩薩モ此人中ニ跡ヲ垂ル。賢者聖人モ此人中ニ出ル。諸ノ神祇モ此人間ヲ守護アル。此等ノ憶念タニ相続スレハ。自ラ初戒ハ全キシヤ。此人趣ヲ尊重スル心アレハ。自ラ恚怒ノ心ヲ離レテ。打罵悪賤ノ事ナク。方便罪ヲ離ル方便罪ヲ離ルレハ。自ラ根本罪ニ至ラヌ。上人徳者ニ尊重ノ心ヲ生スルノミナラス。中人庸流ヲモ尊重スルシヤ。中人庸流ヲ尊重スルノミナラス。下等愚人暴悪ノ者ニモ尊重ノ心ヲ失ハヌシヤ。此仁慈ノ心ヲ一切人間ニ遍シテ自ラ其徳ヲ全クスル。此ヲ不殺人戒ノ相ト名ツクル。

現代語訳

信のある者は、まずこの人間の尊いことを心にとどめるのがよい。天地に並んで三才と称する。仏菩薩もこの人の中に跡を垂れる。賢者聖人もこの人の中に出る。諸々の神々もこの人間を守護する。これらの思いさえ相続すれば、自然に初めの戒は全うされるのである。この人という境涯を尊重する心があれば、自然に怒りの心を離れて、打ったり罵ったり悪く卑しめたりする事がなく、方便罪を離れる。方便罪を離れれば、自然に根本罪に至らない。上位の人や徳のある者に尊重の心を生じるだけでなく、普通の人々をも尊重するのである。普通の人々を尊重するだけでなく、下等の愚かな人や暴悪な者にも尊重の心を失わないのである。この仁慈の心を一切の人間に行き渡らせて、自然にその徳を全うする。これを不殺人戒のすがたと名づける。

解説

不殺生戒を守るための最初の手がかりとして、人間という存在の尊さを思い続けることを勧める。人は天・地と並ぶ三才であり、仏菩薩も聖人もこの人の中に現れ、神々も人を守る。その尊さを思えば、怒って打ったり罵ったりする方便罪を離れ、結果として殺害という根本罪にも至らない。尊重の心は、徳のある人だけでなく、普通の人にも、愚かな人や乱暴な人にも向けよという。相手の能力や態度にかかわらず、人であること自体に敬意を払う姿勢は、あらゆる人間関係の土台になる。
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この章句が説くこと

尊重三才仁慈不殺生方便罪人間

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