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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

今日ハ先不殺生戒ヲ說ソ。殺ト云ハ。方便造作シテ他ノ命ヲ奪フコトソ。一期ノ相續ヲ斷スル義シヤ。生トハ一切情識アル者ノ名シヤ。此中ニ人ノ命根ヲ斷スルヲ大殺生ト云。畜生ノ命根ヲ斷スルヲ小殺生ト云。大殺生ノ中ニ又輕重分レテ。君父。諸ノ聖者。發菩提心ノ人ヲ殺スハ大カ中ノ重シヤ。通人庸流ヲ害スルハ大カ中ノ輕シヤ。小殺生ノ中ニ亦輕重カ分レテ。能變形ノ者ヲ殺ハ小カ中ノ重シヤ。不能變形ノ者ヲ殺スハ小カ中ノ輕シヤ。此中能變形トハ。龍ノ類ヨク變化シテ或ハ人ノ姿トナル諸餘ノ畜生ニ異ナルト云コトシヤ。不能變形トハ極底下ノ禽獸ノ類シヤ。事ノ究竟ニ至ルヲ根本罪ト云。初內心ニ發起スルヨリ。身口業ヲ動作シ。所對ノ有情ヲ惱スヲ方便罪ト云。又助罪ト名クル。

新字:今日ハ先不殺生戒ヲ説ソ。殺ト云ハ。方便造作シテ他ノ命ヲ奪フコトソ。一期ノ相続ヲ断スル義シヤ。生トハ一切情識アル者ノ名シヤ。此中ニ人ノ命根ヲ断スルヲ大殺生ト云。畜生ノ命根ヲ断スルヲ小殺生ト云。大殺生ノ中ニ又軽重分レテ。君父。諸ノ聖者。発菩提心ノ人ヲ殺スハ大カ中ノ重シヤ。通人庸流ヲ害スルハ大カ中ノ軽シヤ。小殺生ノ中ニ亦軽重カ分レテ。能変形ノ者ヲ殺ハ小カ中ノ重シヤ。不能変形ノ者ヲ殺スハ小カ中ノ軽シヤ。此中能変形トハ。竜ノ類ヨク変化シテ或ハ人ノ姿トナル諸余ノ畜生ニ異ナルト云コトシヤ。不能変形トハ極底下ノ禽獣ノ類シヤ。事ノ究竟ニ至ルヲ根本罪ト云。初内心ニ発起スルヨリ。身口業ヲ動作シ。所対ノ有情ヲ悩スヲ方便罪ト云。又助罪ト名クル。

書き下し

今日ハ先不殺生戒ヲ説ソ。殺ト云ハ。方便造作シテ他ノ命ヲ奪フコトソ。一期ノ相続ヲ断スル義シヤ。生トハ一切情識アル者ノ名シヤ。此中ニ人ノ命根ヲ断スルヲ大殺生ト云。畜生ノ命根ヲ断スルヲ小殺生ト云。大殺生ノ中ニ又軽重分レテ。君父。諸ノ聖者。発菩提心ノ人ヲ殺スハ大カ中ノ重シヤ。通人庸流ヲ害スルハ大カ中ノ軽シヤ。小殺生ノ中ニ亦軽重カ分レテ。能変形ノ者ヲ殺ハ小カ中ノ重シヤ。不能変形ノ者ヲ殺スハ小カ中ノ軽シヤ。此中能変形トハ。竜ノ類ヨク変化シテ或ハ人ノ姿トナル諸余ノ畜生ニ異ナルト云コトシヤ。不能変形トハ極底下ノ禽獣ノ類シヤ。事ノ究竟ニ至ルヲ根本罪ト云。初内心ニ発起スルヨリ。身口業ヲ動作シ。所対ノ有情ヲ悩スヲ方便罪ト云。又助罪ト名クル。

現代語訳

今日はまず不殺生戒を説くぞ。殺というのは、手立てを講じて他の命を奪うことである。一生の相続を断ち切る意味である。生とは、一切の心識ある者の名である。この中で、人の命を断つことを大殺生と言う。畜生の命を断つことを小殺生と言う。大殺生の中にまた軽重が分かれて、君主や父、諸々の聖者、菩提心を起こした人を殺すのは、大の中の重である。普通の人を害するのは、大の中の軽である。小殺生の中にもまた軽重が分かれて、姿を変えることのできる者を殺すのは小の中の重である。姿を変えることのできない者を殺すのは小の中の軽である。この中で姿を変えることができるとは、竜の類がよく変化して、あるいは人の姿となり、ほかの畜生とは異なるということである。姿を変えることができないとは、最も下の鳥獣の類である。事が遂げられるに至るのを根本罪と言う。初めに内心に起こすことから、身や口の行いを動かし、相手の生きものを悩ますのを方便罪と言う。また助罪と名づける。

解説

ここからが巻の題である不殺生戒の本論になる。殺とは手立てを尽くして命を奪い、一生の続きを断つことであり、生とは心の働きをもつすべての者を指す。人を殺すのが大殺生、畜生を殺すのが小殺生で、それぞれにさらに軽重がある。注目したいのは、殺害が遂げられた根本罪だけでなく、心に殺意を起こし、言葉や行いで相手を苦しめる段階も方便罪として戒の内に数えている点である。相手を追い詰める言動そのものが、すでに小さな殺生の始まりだという見方である。

この章句が説くこと

不殺生根本罪方便罪殺意

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