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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

珠玉ノ琢磨ヲ待テ光彩ヲ發スル如ク。性戒十善ハ。謹愼護持ノ中ニ。人天ノ樂果乃至無漏勝妙ノ果ヲ顯ス。日月ノ光明隔ナキモ。高山幽谷其ヲリ處ニ隨テ。分分ニ其照觸ヲ蒙ル如ク。此十善法性平等ナレトモ。人人受得スル所ニ適フテ。分ニ其功德ヲ得ル。一家ノ主ハ一家ニ自在ヲ得ル。其中眷屬大小ミナ我子ノ如クシヤ。些些ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。一郡一國ノ主ハ各各其釆地ノ境ニ自在ヲ得ル。其中ノ人民ヲ赤子ヲ保ンスル如ク撫育ス。少分十善ノ儀モ面白キシヤ。東方ノ人主。南方ノ象主。西方ノ寶主。北方ノ馬主。諸夷ノ君長。粟散諸王ノ。其封境ニ自在ヲ得ル。其中ノ百官民庶。ミナ赤子ヲ保ンスル如ク。禽獸草木皆生育ヲ遂クル。有漏中下品十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ輪王ノ運ニ膺ル普天率土ノ主トナリ。千官億兆ノ君父トナル。帝釋梵王ノ諸天ノ主宰トナリ世界ヲ領スル。有漏上品ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ賢聖ノ心ハ法ト相應スル。上品ノ十善三界ヲ超過シテ無漏道ヲ得ル。此中甚深緣起ニ達シテ無師自覺ス。大悲萬行世界海ヲ盡シ。衆生界ヲ盡シテ。我行願ノ處トナス。此樂ミハ衆生界ト共ニ盡ヌシヤ。虛空界ト共ニ盡ヌシヤ。

新字:珠玉ノ琢磨ヲ待テ光彩ヲ発スル如ク。性戒十善ハ。謹慎護持ノ中ニ。人天ノ楽果乃至無漏勝妙ノ果ヲ顕ス。日月ノ光明隔ナキモ。高山幽谷其ヲリ処ニ随テ。分分ニ其照触ヲ蒙ル如ク。此十善法性平等ナレトモ。人人受得スル所ニ適フテ。分ニ其功徳ヲ得ル。一家ノ主ハ一家ニ自在ヲ得ル。其中眷属大小ミナ我子ノ如クシヤ。些些ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。一郡一国ノ主ハ各各其釆地ノ境ニ自在ヲ得ル。其中ノ人民ヲ赤子ヲ保ンスル如ク撫育ス。少分十善ノ儀モ面白キシヤ。東方ノ人主。南方ノ象主。西方ノ宝主。北方ノ馬主。諸夷ノ君長。粟散諸王ノ。其封境ニ自在ヲ得ル。其中ノ百官民庶。ミナ赤子ヲ保ンスル如ク。禽獣草木皆生育ヲ遂クル。有漏中下品十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ輪王ノ運ニ膺ル普天率土ノ主トナリ。千官億兆ノ君父トナル。帝釈梵王ノ諸天ノ主宰トナリ世界ヲ領スル。有漏上品ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ賢聖ノ心ハ法ト相応スル。上品ノ十善三界ヲ超過シテ無漏道ヲ得ル。此中甚深縁起ニ達シテ無師自覚ス。大悲万行世界海ヲ尽シ。衆生界ヲ尽シテ。我行願ノ処トナス。此楽ミハ衆生界ト共ニ尽ヌシヤ。虚空界ト共ニ尽ヌシヤ。

書き下し

珠玉ノ琢磨ヲ待テ光彩ヲ発スル如ク。性戒十善ハ。謹慎護持ノ中ニ。人天ノ楽果乃至無漏勝妙ノ果ヲ顕ス。日月ノ光明隔ナキモ。高山幽谷其ヲリ処ニ随テ。分分ニ其照触ヲ蒙ル如ク。此十善法性平等ナレトモ。人人受得スル所ニ適フテ。分ニ其功徳ヲ得ル。一家ノ主ハ一家ニ自在ヲ得ル。其中眷属大小ミナ我子ノ如クシヤ。些些ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。一郡一国ノ主ハ各各其釆地ノ境ニ自在ヲ得ル。其中ノ人民ヲ赤子ヲ保ンスル如ク撫育ス。少分十善ノ儀モ面白キシヤ。東方ノ人主。南方ノ象主。西方ノ宝主。北方ノ馬主。諸夷ノ君長。粟散諸王ノ。其封境ニ自在ヲ得ル。其中ノ百官民庶。ミナ赤子ヲ保ンスル如ク。禽獣草木皆生育ヲ遂クル。有漏中下品十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ輪王ノ運ニ膺ル普天率土ノ主トナリ。千官億兆ノ君父トナル。帝釈梵王ノ諸天ノ主宰トナリ世界ヲ領スル。有漏上品ノ十善ノ儀モ面白キコトシヤ。マシテ賢聖ノ心ハ法ト相応スル。上品ノ十善三界ヲ超過シテ無漏道ヲ得ル。此中甚深縁起ニ達シテ無師自覚ス。大悲万行世界海ヲ尽シ。衆生界ヲ尽シテ。我行願ノ処トナス。此楽ミハ衆生界ト共ニ尽ヌシヤ。虚空界ト共ニ尽ヌシヤ。

現代語訳

珠玉が磨かれてはじめて光彩を放つように、本性に備わる戒である十善は、謹んで守り保つ中に、人や天の楽しい果報から、煩悩の汚れのない優れた果報までを顕す。日月の光には隔てがないけれども、高い山や深い谷がそれぞれの在り所に従って、分に応じてその照らしを受けるように、この十善は法性として平等であるけれども、人々が受け取る所にかなって、分に応じてその功徳を得る。一家の主は一家において自在を得る。その中の家族や使用人は大小みなわが子のようである。ささやかな十善のありさまも面白いことである。一郡一国の主は、それぞれ自分の領地の境の内で自在を得る。その中の人民を、赤子を保護するように慈しみ育てる。少分の十善のありさまも面白いことである。東方の人主、南方の象主、西方の宝主、北方の馬主、諸々の異国の君長、粟粒を散らしたような小国の王たちが、その領域で自在を得る。その中の百官や民衆をみな赤子を保護するようにし、鳥獣草木もみな生育を遂げる。煩悩の残る中品・下品の十善のありさまも面白いことである。まして転輪聖王の運に当たって天下の主となり、千官億兆の民の君であり父となる。帝釈天や梵天王が諸天の主宰となって世界を治める。煩悩の残る上品の十善のありさまも面白いことである。まして賢者聖者の心は法と相応する。上品の十善は三界を超えて、煩悩のない道を得る。その中で甚だ深い縁起の理に達して、師なくして自ら悟る。大悲の万行によって世界の海を尽くし、衆生界を尽くして、わが行願の場とする。この楽しみは衆生界とともに尽きないのである。虚空界とともに尽きないのである。

解説

十善は誰にも同じく備わるが、受け取る器に応じて現れ方が違う、ということを日月の光の譬えで説く。一家の主、一国の主、四方の王、転輪聖王や帝釈天・梵天、そして賢聖へと、十善の現れを段階的に並べていく。東方の人主・南方の象主・西方の宝主・北方の馬主は、仏典で世界の四方を治める王の呼び名である。尊者が繰り返す「面白キコトシヤ」には、どの段階にもそれなりの喜びがあるという肯定がある。立場が小さくても、その持ち場で人を慈しむことが十善の実践になる。

この章句が説くこと

十善功徳法性平等君主縁起

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