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十善法語 / 巻第一・不殺生戒

此迷フ者知ラヌ者ノ爲ニ。佛ノ說示有ト云コトシヤ。トウ說示アルソ。大體ハカウシヤ。法華經ノ中ニ。今此三界。皆是我有。其中衆生。悉是吾子ト。此中三界トハ。欲界。色界。無色界シヤ。男女ノ欲アリ。飮食ノ欲アリ。睡眠ノ欲アル世界ヲ。欲界ト名ツク。此欲ヲ離レテ。身心カ禪定ト相應スル世界ヲ。色界ト名ツク。此心カ此質礙ノ色身ヲ離レテ。虛空ト相應シ。寂靜ト相應スル世界ヲ。無色界ト名ツク。此般ノ世界衆生ノ住處カアルト云コトシヤ。此三界ハ十善全キ處ニテ。大人タル者ノ己心中所領ノ地ソ。其中ノ衆生ハ實ニ吾子ソ。法トシテ如是シヤ。唯我相ヲ存スル者カ。自他ノ隔ヲ構ヘテ自ラ達セヌ。妄想ニ隨順スル者カ妄想ニ蔽ハレテ且ク逹セヌノミシヤ。若自ラ我相ノ本來空ナルコトヲ知リ我所相ノ本來空ナルコトヲ知リ。法相ノ本來空ナルコトヲ知レハ。今日ヨリ三界ハ我所領シヤ。其中ノ衆生ハ實實ニ我子シヤ。

新字:此迷フ者知ラヌ者ノ為ニ。仏ノ説示有ト云コトシヤ。トウ説示アルソ。大体ハカウシヤ。法華経ノ中ニ。今此三界。皆是我有。其中衆生。悉是吾子ト。此中三界トハ。欲界。色界。無色界シヤ。男女ノ欲アリ。飲食ノ欲アリ。睡眠ノ欲アル世界ヲ。欲界ト名ツク。此欲ヲ離レテ。身心カ禅定ト相応スル世界ヲ。色界ト名ツク。此心カ此質礙ノ色身ヲ離レテ。虚空ト相応シ。寂静ト相応スル世界ヲ。無色界ト名ツク。此般ノ世界衆生ノ住処カアルト云コトシヤ。此三界ハ十善全キ処ニテ。大人タル者ノ己心中所領ノ地ソ。其中ノ衆生ハ実ニ吾子ソ。法トシテ如是シヤ。唯我相ヲ存スル者カ。自他ノ隔ヲ構ヘテ自ラ達セヌ。妄想ニ随順スル者カ妄想ニ蔽ハレテ且ク逹セヌノミシヤ。若自ラ我相ノ本来空ナルコトヲ知リ我所相ノ本来空ナルコトヲ知リ。法相ノ本来空ナルコトヲ知レハ。今日ヨリ三界ハ我所領シヤ。其中ノ衆生ハ実実ニ我子シヤ。

書き下し

此迷フ者知ラヌ者ノ為ニ。仏ノ説示有ト云コトシヤ。トウ説示アルソ。大体ハカウシヤ。法華経ノ中ニ。今此三界。皆是我有。其中衆生。悉是吾子ト。此中三界トハ。欲界。色界。無色界シヤ。男女ノ欲アリ。飲食ノ欲アリ。睡眠ノ欲アル世界ヲ。欲界ト名ツク。此欲ヲ離レテ。身心カ禅定ト相応スル世界ヲ。色界ト名ツク。此心カ此質礙ノ色身ヲ離レテ。虚空ト相応シ。寂静ト相応スル世界ヲ。無色界ト名ツク。此般ノ世界衆生ノ住処カアルト云コトシヤ。此三界ハ十善全キ処ニテ。大人タル者ノ己心中所領ノ地ソ。其中ノ衆生ハ実ニ吾子ソ。法トシテ如是シヤ。唯我相ヲ存スル者カ。自他ノ隔ヲ構ヘテ自ラ達セヌ。妄想ニ随順スル者カ妄想ニ蔽ハレテ且ク逹セヌノミシヤ。若自ラ我相ノ本来空ナルコトヲ知リ我所相ノ本来空ナルコトヲ知リ。法相ノ本来空ナルコトヲ知レハ。今日ヨリ三界ハ我所領シヤ。其中ノ衆生ハ実実ニ我子シヤ。

現代語訳

この迷う者、知らない者のために、仏の説き示しがあるということである。どのように説き示されているのか。大体はこうである。法華経の中に、「今この三界は、みな私のものである。その中の衆生は、ことごとく私の子である」とある。この中の三界とは、欲界・色界・無色界である。男女の欲があり、飲食の欲があり、睡眠の欲がある世界を欲界と名づける。この欲を離れて、身心が禅定と相応する世界を色界と名づける。この心が、この形あって妨げ合う肉体を離れて、虚空と相応し、寂静と相応する世界を無色界と名づける。こういう世界に衆生の住む所があるということである。この三界は十善が全うされた所であって、大人たる者の心の中の領地である。その中の衆生は実にわが子である。法としてそのようなものである。ただ我という相を持つ者が、自分と他人の隔てを作って自ら通じないのである。妄想に従う者が、妄想に覆われてしばらく通じないだけなのである。もし自ら、我という相が本来空であることを知り、我がものという相が本来空であることを知り、法という相が本来空であることを知れば、今日から三界は私の領地である。その中の衆生はまことにわが子である。

解説

法華経譬喩品の「今此三界、皆是我有、其中衆生、悉是吾子」を、尊者は十善の講話の柱に据える。本来は仏の言葉だが、尊者はこれを十善を全うした大人の心の領分として読み替える。欲界・色界・無色界という仏教の世界観を説明したうえで、自他を隔てる我の思いが空だと知れば、今日からでも世界はわが領分、人はわが子になると言う。自分と他人の間に線を引くほど世界は狭くなる。組織や地域を自分事として引き受けるとはどういうことかを考えさせる一節である。

この章句が説くこと

三界我相法華経慈悲自他

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