人物志 / 八觀
然而慈而不仁者,則吝奪之也。仁而不恤者,則懼奪之也。厲而不剛者,則慾奪之也。
書き下し
然れども慈にして仁ならざる者は、則ち吝之を奪うなり。仁にして恤まざる者は、則ち懼之を奪うなり。厲にして剛ならざる者は、則ち慾之を奪うなり。
現代語訳
慈しみはあっても仁徳のない者は、物惜しみの心がその仁徳を奪っているのである。仁の心はあっても実際に助けない者は、恐れの心がその仁を奪っているのである。外見は厳しくとも剛毅でない者は、欲望がその剛毅さを奪っているのである。
解説
慈しみが仁徳に届かないのは物惜しみに奪われるからであり、哀れみが行動に届かないのは恐れに奪われるからであり、厳しさが剛毅に届かないのは欲に奪われるからだと人物志は説く。美徳が不完全に終わるのは才能不足ではなく、別の感情がそれを横取りしているからだという見方は鋭い。理想と行動が一致しない場面を思い返すと、たいてい物惜しみや恐れ、欲得のどれかが働いている。自分の美徳を何が奪っているのかを見極めることが、次の一歩につながる。
この章句が説くこと
美徳奪う心理構造