人物志 / 九徵
是故骨植而柔者,謂之弘毅;弘毅也者,仁之質也。
書き下し
是の故に骨植ちて柔なる者、之を弘毅と謂ふ。弘毅は、仁の質なり。
現代語訳
だから骨格がしっかりしていながら柔らかさも備えている人、これを「弘毅」と呼ぶ。弘毅とは、仁という徳の資質である。
解説
骨格の強さは意志の固さを、柔らかさは他者を受け入れる余地を表す。人物志はこの二つが両立する状態を「弘毅」と呼び、仁の資質だとする。強さだけでは頑なになり、柔らかさだけでは流されてしまう。信念を持ちながらも他人の言葉に耳を傾けられる在り方は、口で言うほど簡単ではないが、日々の人間関係の中で少しずつ鍛えられていく。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
弘毅仁剛柔
関連する章句
-
『五常訓』巻之一・総論一人に仁義あるは、天に陰陽あるが如し。天に陰陽なければ、造化の理ほろびて、四の時行はれず、万物生ぜずして、天地の道立たず。人に仁義なければ、心の徳ほろび、五倫の道行はれずして、人道立たず。禽獣と何ぞ異ならんや。故に易に曰、天の道を立てて陰と陽といふ。人の道を立てて、仁と義といふ。
-
『五常訓』巻之二・仁之上一樊遅仁を問ふ、子曰く人を愛すと。仁は愛をつかさどる。故に仁を行ふの道は、人を愛するにあり。此人の字は、五倫をさして見るべし。人を愛するは、即人倫を愛する也。人の道は仁を行ふにあり。仁を行ふの道は人を愛するにあり。人を愛せんとならば、まづ心の私を去り、人我のへだて無くして、あはれみの心をおしひろむるにあり。愛人を以て仁を説き給ふ。誠に切実にして、近き教なり。
-
『武士道』第五章 仁・愛不忍の心・仁は徳の王なり武士道は愛敬、寛仁、同情、憐憫を以て、徳の最なるものとし、人の霊魂の賦性の最も高尚なるものなりとす。仁は二様の意義に於て王者の徳なり。即ち高尚なる精神に伴ふ多くの資禀の冠たるのみならず、又た特に王道に契合するが故に徳の王なり。慈悲の王者に於けるは、冠冕よりも貴く、又た権威に勝るとは、吾人はシェイクスピアを俟ちて始めて之を知るものに非らず。ただ宇内諸人と共に、彼より初めて此名言を聞くを得たるのみ。孔孟しばしば、王者の一日も仁勿るべからず、『仁なる者は人なり』なることを明かにせり。孔子曰く、『国君、仁を好めば天下に敵無し』と。又た曰く、『仁は天の尊爵なり、人の安宅なり』と。又た『君、仁なれば仁ならざるは莫く、君、義なれば義ならざるは莫し』とも曰へり。而して孟子の之を説く、更に詳なるものあり。
-
『武士道』第五章 仁・愛不忍の心・最も剛毅なる者は最も柔和なり『最も剛毅なる者は、最も柔和なり。最も愛ある者は、最も勇敢なり』とは、古今東西の通義なり。武士のなさけとは、人心に妙音を伝へて、高尚なる情感を覚醒するの語なりき。武夫の慈悲の質たる、他者の慈悲と其類を殊にするには非らず。されど仁の武士に於けるは、漠然たる感情より発するものに非らずして、其心に正義を忘れざるにあり。又た其仁は、ただに情緒の発現たるのみに非らずして、而も其後へには生殺与奪の権を有し、恩に兼ぬるに威を以てす。経済学者が、需要に有効無効の別ありと云ふが如く、武士の慈悲は即ち有効なるものと称すべくして、之を受くるものに対して、或は利益を生じ、或は損害を来たすの力を有せり。武士は獣力を栄とし、之を用ふるの特権に誇りたりと雖も、又た深く孟子が仁の力を説くに服するものなりき。
-
司馬法・仁本正、意を獲ざれば則ち権(けん)す。権は戦より出で、仁より出でざるなり。是の故に人を殺して人を安んぜば、之を殺すも可なり。其の国を攻むるも、其の民を愛せば、之を攻むるも可なり。
-
『文武訓』文訓上之末一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無礼にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて悪しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。