人物志 / 英雄
張良是也。
書き下し
張良是れなり。
現代語訳
張良(ちょうりょう、漢の高祖の軍師)がそれである。
解説
聡で始めを謀り、明で機を見、胆で決断できて初めて英と呼べる、という条件を満たす人物として張良を挙げる一句である。張良は韓の貴族の出で、秦の始皇帝暗殺を企てたのち、劉邦の参謀として鴻門の会や楚漢戦争の要所で策を立て、漢の天下統一に貢献した。帷幄の中で策をめぐらし千里の外で勝ちを決したと称えられる人物で、流業篇でも術家の代表とされている。劉劭が英の典型に張良を置いたのは、知恵だけでなく、暗殺計画に見られるような胆力も備えていたからだろう。現代でいえば、戦略を描くだけでなく、それを通すための覚悟を持つ参謀こそが、本当の意味で頼れる知恵者である。
関連する章句
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人物志・英雄韓信是れなり。体分同じからず、多きを以て目と為す、故に英雄は名を異にす。然れども皆偏至の材にして、人臣の任なり。
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『長短経』量才力は能く人に過ぎ、勇は能く之を行うも、智は事を料る能わざれば、以て先登と為す可くも、未だ以て将帥と為すに足らず。必ず聡は能く始めを謀り、明は能く機を見、行は能く之を決し、然る後に乃ち以て英と為す可し。張良是なり。気力は人に過ぎ、勇は能く之を行い、智は事を料るに足り、然る後に乃ち以て雄と為す可し。韓信是なり。若し一人の身に英雄を兼ね有せば、則ち能く世に長たり。高祖・項羽是なり。〕
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人物志・英雄高祖・項羽是れなり。然れども英の分は、以て雄より多くし、而して英は以て少なかるべからざるなり。英の分少なければ、則ち智者之を去る。故に項羽は気力世を蓋ひ、明能く変に合するも、奇異を聴采すること能はず、一范増有りて用ゐず、是を以て陳平の徒、皆亡げて高祖に帰す。英の分多し、故に群雄之に服し、英才之に帰し、両つながら其の用を得、故に能く秦を呑み楚を破り、宅して天下を有つ。
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人物志・英雄必ず聡は始めを謀るに能く、明は機を見るに能く、胆は之を決するに能くして、然る後に以て英と為す可し。
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人物志・英雄是を以て、英は其の聡を以て始めを謀り、其の明を以て機を見、雄の胆を待ちて之を行ふ。雄は其の力を以て衆を服し、其の勇を以て難を排し、英の智を待ちて之を成す。然る後に乃ち能く各其の長ずる所を済す。若し聡能く始めを謀りて、明機を見ざれば、乃ち以て坐論すべくして、以て事に処すべからず。聡能く始めを謀り、明能く機を見て、勇行ふこと能はざれば、以て常に循ふべくして、以て変を慮るべからず。若し力能く人に過ぎて、勇行ふこと能はざれば、以て力人と為すべくも、未だ以て先登と為すべからず。力能く人に過ぎ、勇能く之を行ひて、智事を断ずること能はざれば、以て先登と為すべくも、未だ以て将帥と為すに足らず。
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人物志・英雄聡明秀出するを、之を英と謂い、胆力人に過ぐるを、之を雄と謂う。
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