人物志 / 英雄
此其大體之別名也。若校其分數,則牙則須,各以二分,取彼一分,然後乃成。何以論其然?
新字:此其大体之別名也。若校其分数,則牙則須,各以二分,取彼一分,然後乃成。何以論其然?
書き下し
此れ其の大体の別名なり。若し其の分数を校ぶれば、則ち牙(たが)ひに則ち須ち、各二分を以てし、彼の一分を取りて、然る後に乃ち成る。何を以て其の然るを論ずる。
現代語訳
これが英と雄の大まかな区別の名である。もしその配分を比べるなら、(英と雄は)互いに必要とし合い、それぞれ自分の分を二分とし、相手の分を一分取り入れて、はじめて成り立つ。どうしてそう言えるのか。
解説
聡明に秀でた者を英、胆力に優れた者を雄と呼ぶのは大まかな区別にすぎず、実際には英も雄も互いの要素を必要とする、と述べる。英は自分の分を二、雄の分を一、雄は自分の分を二、英の分を一というように、主となる要素に従となる要素が加わって初めて成り立つ。純粋な知だけ、純粋な勇だけでは人物として完成しないという考えである。この後、聡明も胆力を得なければ説が行われず、胆力も知恵を得なければ事が立たないと論証が続く。現代でも、戦略家に実行の胆力が、現場のリーダーに構想の知恵が、少しずつでも備わっていなければ、どちらも力を発揮できない。主となる強みに従となる要素を足す発想が大切である。
関連する章句
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人物志・英雄是を以て、英は其の聡を以て始めを謀り、其の明を以て機を見、雄の胆を待ちて之を行ふ。雄は其の力を以て衆を服し、其の勇を以て難を排し、英の智を待ちて之を成す。然る後に乃ち能く各其の長ずる所を済す。若し聡能く始めを謀りて、明機を見ざれば、乃ち以て坐論すべくして、以て事に処すべからず。聡能く始めを謀り、明能く機を見て、勇行ふこと能はざれば、以て常に循ふべくして、以て変を慮るべからず。若し力能く人に過ぎて、勇行ふこと能はざれば、以て力人と為すべくも、未だ以て先登と為すべからず。力能く人に過ぎ、勇能く之を行ひて、智事を断ずること能はざれば、以て先登と為すべくも、未だ以て将帥と為すに足らず。
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人物志・英雄夫れ聡明なる者は、英の分なり。雄の胆を得ざれば、則ち説行われず。胆力なる者は、雄の分なり。英の智を得ざれば、則ち事立たず。
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人物志・英雄聡明秀出するを、之を英と謂い、胆力人に過ぐるを、之を雄と謂う。
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人物志・英雄故に雄は能く雄を得るも、英を得る能わず。英は能く英を得るも、雄を得る能わず。故に一人の身にして、英雄を兼ね有すれば、乃ち能く英と雄とを役す。能く英と雄とを役するが故に、能く大業を成す。
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人物志・英雄然らば則ち英雄の多少は、能く自ら勝つの数なり。徒だ英にして雄ならざれば、則ち雄材服せず。徒だ雄にして英ならざれば、則ち智者帰往せず。
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人物志・英雄若し一人の身にして、英雄を兼ね有せば、則ち能く世を長くす。
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