人物志 / 材理
舍本而理末,則辭構矣。善攻彊者,下其盛銳,扶其本指以漸攻之;不善攻彊者,引其誤辭以挫其銳意。挫其銳意,則氣構矣。善躡失者,指其所跌;不善躡失者,因屈而抵其性。因屈而抵其性,則怨構矣。或常所思求,久乃得之,倉卒諭人;人不速知,則以為難諭。以為難諭,則忿構矣。夫盛難之時,其誤難迫;故善難者,徵之使還。不善難者,凌而激之,雖欲顧藉,其勢無由。其勢無由,則妄構矣。
新字:舎本而理末,則辞構矣。善攻彊者,下其盛鋭,扶其本指以漸攻之;不善攻彊者,引其誤辞以挫其鋭意。挫其鋭意,則気構矣。善躡失者,指其所跌;不善躡失者,因屈而抵其性。因屈而抵其性,則怨構矣。或常所思求,久乃得之,倉卒諭人;人不速知,則以為難諭。以為難諭,則忿構矣。夫盛難之時,其誤難迫;故善難者,徴之使還。不善難者,凌而激之,雖欲顧藉,其勢無由。其勢無由,則妄構矣。
書き下し
本を舎てて末を理むれば、則ち辞構す。善く彊を攻むる者は、其の盛鋭を下し、其の本指を扶けて以て漸く之を攻む。善く彊を攻めざる者は、其の誤辞を引きて以て其の鋭意を挫く。其の鋭意を挫けば、則ち気構す。善く失を躡む者は、其の跌く所を指す。善く失を躡まざる者は、屈するに因りて其の性を抵く。屈するに因りて其の性を抵けば、則ち怨構す。或いは常に思ひ求むる所、久しくして乃ち之を得、倉卒に人を諭す。人速やかに知らざれば、則ち以て諭し難しと為す。以て諭し難しと為せば、則ち忿構す。夫れ盛難の時、其の誤りは迫り難し。故に善く難ずる者は、之を徴して還らしむ。善く難ぜざる者は、凌ぎて之を激し、顧藉せんと欲すと雖も、其の勢由無し。其の勢由無ければ、則ち妄構す。
現代語訳
根本を捨てて末節を扱えば、言葉のもつれ(辞構)が生じる。強い相手をうまく攻める者は、その盛んな鋭気をまず鎮め、相手の本来の趣旨を支えながら少しずつ攻める。強い相手をうまく攻められない者は、相手の言い誤りを取り上げて、その鋭い意気をくじく。鋭い意気をくじけば、気のもつれ(気構)が生じる。失言をうまく突く者は、つまずいたところだけを指摘する。うまく突けない者は、相手が言い負けたのに乗じてその人柄まで突く。言い負けに乗じて人柄を突けば、怨みのもつれ(怨構)が生じる。あるいは、いつも考え求めていたことを長い時間をかけてようやく得て、それを急に人に説明する。相手がすぐに理解しないと、この人は説明しにくいと思う。説明しにくいと思えば、憤りのもつれ(忿構)が生じる。議論が盛り上がって難じ合っている時は、相手の誤りを追い詰めてはならない。だからうまく論難する者は、証拠を示して相手を引き返させる。うまく論難できない者は、相手をしのいで激しく刺激するので、相手は引き返して面目を保とうとしても、その手立てがない。手立てがなければ、でたらめのもつれ(妄構)が生じる。
解説
関連する章句
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人物志・材理人も亦其の方に思ふの故を以て、己が意を了せざれば、則ち以て解せずと為す。人情は解せざるを諱まざるは莫し、解せざるを諱めば則ち怒構す。凡そ此の六構は、変の由りて興る所なり。然れども変構有りと雖も、猶ほ得る所有り。若し説きて難ぜず、各見る所を陳ぶれば、則ち由る所を知る莫し。此に由りて之を論ずれば、談じて理を定むる者は眇なり。必ずや、聡は能く序を聴き、思は能く端を造り、明は能く機を見、辞は能く意を弁じ、捷は能く失を摂り、守は能く攻を待ち、攻は能く守を奪ひ、奪は能く予を易ふ。此の八者を兼ねて、然る後に乃ち能く天下の理に通ず。天下の理に通ずれば、則ち能く人に通ず。八美を兼有すること能はず、適々一能有れば、則ち達する所偏にして、有する所目を異にす。是の故に、聡能く序を聴く、之を名物の材と謂ふ。思能く端を造る、之を構架の材と謂ふ。明能く機を見る、之を達識の材と謂ふ。辞能く意を弁ず、之を贍給の材と謂ふ。捷能く失を摂る、之を権捷の材と謂ふ。守能く攻を待つ、之を持論の材と謂ふ。攻能く守を奪ふ、之を推徹の材と謂ふ。奪能く予を易ふ、之を貿説の材と謂ふ。通材の人は、既に此の八材を兼ね、之を行ふに道を以てす。通人と言へば、則ち解を同じくして心喩り、衆人と言へば、則ち色を察して性に順ふ。明は衆理を包むと雖も、以て人に尚ばず。聡叡資給なるも、以て人に先んぜず。善言己より出づるも、理足れば則ち止む。鄙誤人に在るも、過ぎて迫らず。人の懐く所を写し、人の能くする所を扶く。事類を以て人の婟む所を犯さず、言例を以て己の長ずる所に及ばず。直を説き変を説きて、畏悪する所無し。虫声の善音を采り、愚人の偶得を賛す。奪与宜しき有り、去就留まらず。其の盛気に方りては、折謝して吝かならず。其の難に勝つに方りては、勝ちて矜らず。心平らかに志諭り、士無く莫無く、道を得るを期するのみ。是れ与に世を経め物を理むるを論ずべきなり。
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人物志・釋爭是の故に、轡を並べて先を争ひて相奪ふこと能はず、両つながら頓き倶に折れて後なる者の趨く所と為る。是に由りて之を論ずれば、争譲の途、其の別明らかなり。然るに勝を好むの人は、猶ほ然らずと謂ひ、前に在るを以て速鋭と為し、後に処るを以て留滞と為し、衆に下るを以て卑屈と為し、等を躡むを以て異傑と為し、敵に譲るを以て迴辱と為し、上を陵ぐを以て高厲と為す。是の故に、抗奮して遂に往き、自ら反ること能はざるなり。夫れ抗を以て賢に遇へば必ず遜下せられ、抗を以て暴に遇へば必ず敵難を搆ふ。敵難既に搆ふれば、則ち是非の理必ず溷りて明らかにし難し。溷りて明らかにし難ければ則ち其の自ら毀るとは何を以て異ならんや。且つ人の己を毀るは、皆怨憾に発して、変は舋に生ずるなり。必ず事に依託して端末を飾り成す。其の聴く者に於けるや、尽くは信ぜずと雖も、猶ほ半ばは以て然りと為すなり。己の校報も、亦た又之の如し。終に其の帰する所は、亦た各々半信の遠近に著はるる有るなり。然らば則ち、
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人物志・材理善く難ずる者は、務めて事の本を釈く。難ずるに善からざる者は、本を舎てて末を理む。
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人物志・材理夫れ理多品なれば則ち通じ難く、人材異なれば則ち情詭なり。情詭にして通じ難ければ、則ち理失われて事違う。
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