人物志 / 九徵
氣清而朗者,謂之文理;文理也者,禮之本也。體端而實者,謂之貞固;貞固也者,信之基也。筋勁而精者,謂之勇敢;勇敢也者,義之決也。色平而暢者,謂之通微;通微也者,智之原也。五質恒性,故謂之五常矣。五常之別,列為五德。是故溫直而擾毅,木之德也。剛塞而弘毅,金之德也。愿恭而理敬,水之德也。寬栗而柔立,土之德也。簡暢而明砭,火之德也。雖體變無窮,猶依乎五質。故其剛、柔、明、暢、貞固之徵,著乎形容,見乎聲色,發乎情味,各如其象。故心質亮直,其儀勁固;心質休決,其儀進猛;心質平理,其儀安閑。夫儀動成容,各有態度:直容之動,矯矯行行;休容之動,業業蹌蹌;德容之動,顒顒卬卬。夫容之動作,發乎心氣;心氣之徵,則聲變是也。夫氣合成聲,聲應律呂:有和平之聲,有清暢之聲,有回衍之聲。夫聲暢於氣,則實存貌色;
新字:気清而朗者,謂之文理;文理也者,礼之本也。体端而実者,謂之貞固;貞固也者,信之基也。筋勁而精者,謂之勇敢;勇敢也者,義之決也。色平而暢者,謂之通微;通微也者,智之原也。五質恒性,故謂之五常矣。五常之別,列為五徳。是故温直而擾毅,木之徳也。剛塞而弘毅,金之徳也。愿恭而理敬,水之徳也。寛栗而柔立,土之徳也。簡暢而明砭,火之徳也。雖体変無窮,猶依乎五質。故其剛、柔、明、暢、貞固之徴,著乎形容,見乎声色,発乎情味,各如其象。故心質亮直,其儀勁固;心質休決,其儀進猛;心質平理,其儀安閑。夫儀動成容,各有態度:直容之動,矯矯行行;休容之動,業業蹌蹌;徳容之動,顒顒卬卬。夫容之動作,発乎心気;心気之徴,則声変是也。夫気合成声,声応律呂:有和平之声,有清暢之声,有回衍之声。夫声暢於気,則実存貌色;
書き下し
気清くして朗らかなる者、之を文理と謂ふ。文理なる者は、礼の本なり。体端しくして実なる者、之を貞固と謂ふ。貞固なる者は、信の基なり。筋勁くして精なる者、之を勇敢と謂ふ。勇敢なる者は、義の決なり。色平らかにして暢びやかなる者、之を通微と謂ふ。通微なる者は、智の原なり。五質は恒の性なり、故に之を五常と謂ふ。五常の別、列して五徳と為す。是の故に温直にして擾毅なるは、木の徳なり。剛塞にして弘毅なるは、金の徳なり。愿恭にして理敬なるは、水の徳なり。寛栗にして柔立なるは、土の徳なり。簡暢にして明砭なるは、火の徳なり。体の変は窮まり無しと雖も、猶ほ五質に依る。故に其の剛・柔・明・暢・貞固の徴は、形容に著れ、声色に見れ、情味に発し、各其の象の如し。故に心質亮直なれば、其の儀勁固なり。心質休決なれば、其の儀進猛なり。心質平理なれば、其の儀安閑なり。夫れ儀動きて容を成し、各態度有り。直容の動は、矯矯行行たり。休容の動は、業業蹌蹌たり。徳容の動は、顒顒卬卬たり。夫れ容の動作は、心気に発す。心気の徴は、則ち声の変是れなり。夫れ気合して声を成し、声は律呂に応ず。和平の声有り、清暢の声有り、回衍の声有り。夫れ声気に暢ぶれば、則ち実は貌色に存す。
現代語訳
気が清らかで朗らかな者を文理という。文理とは礼の根本である。体がととのっていて充実している者を貞固という。貞固とは信の基礎である。筋が強く精妙な者を勇敢という。勇敢とは義を決断する力である。顔色が穏やかでのびやかな者を通微という。通微とは智の源である。この五つの素質は変わらぬ本性であるから、五常(仁・義・礼・智・信)という。五常の違いを並べて五つの徳とする。それゆえ、温和で率直、柔らかでいて毅然としているのは木の徳である。剛直で誠実、度量が広く毅然としているのは金の徳である。慎み深くうやうやしく、筋道立ってつつしむのは水の徳である。寛大でいて厳しく、柔らかでいて自立しているのは土の徳である。簡明でのびやか、明快で鋭く正すのは火の徳である。身体の変化は限りないけれども、なお五つの素質に依っている。だから剛・柔・明・暢・貞固のしるしは、姿かたちにあらわれ、声や顔色に見え、感情や趣きに発して、それぞれその象のとおりになる。それゆえ心の素質が明るく率直であれば、その振る舞いは強くしっかりしている。心の素質が美しく果断であれば、その振る舞いは進んで勇ましい。心の素質が穏やかで筋道立っていれば、その振る舞いは落ち着いてゆったりしている。振る舞いが動いて容姿となり、それぞれに態度がある。率直な容姿の動きは、きびきびとして剛強である。果断な容姿の動きは、慎重でいて足どりが整っている。徳ある容姿の動きは、おごそかで気高い。容姿の動作は心の気から発し、心の気のしるしとは声の変化である。気が合わさって声となり、声は音律(律呂)に応じる。和やかで平らな声があり、清くのびやかな声があり、めぐりたゆたう声がある。声が気にのびやかに通っていれば、その実質は顔かたちや顔色にあらわれている。
解説
関連する章句
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『長短経』知人人物志に曰く〔凡そ血気有る者は、陰陽を稟けて以て性を立て、五行を体して形を著さざるは莫し。其の体に在るや、木は骨、金は筋、火は気、土は肌、水は血、五物の象なり。五物の実は、各々済す所有り。〕「骨は植にして柔なる者、之を弘毅と謂う。弘毅なる者は仁の質なり。〔木は則ち陰を垂れ、仁の質と為る。質、弘毅ならざれば、仁を成す能わず。〕気は清くして朗なる者、之を文理と謂う。文理なる者は礼の本なり。〔火は則ち照察し、礼の本と為る。本に文理無ければ、礼を成す能わず。〕体は端にして実なる者、之を貞固と謂う。貞固なる者は信の基なり。〔土は必ず生を吐き、信の基と為る。基、貞固ならざれば、信を成す能わざるなり。〕筋は勁くして精なる者、之を勇敢と謂う。勇敢なる者は義の決なり。〔金は能く断割し、義の決と為る。決、勇敢ならざれば、義を成す能わざるなり。〕色は平らかにして暢なる者、之を通微と謂う。通微なる者は智の原なり。〔水は流れて疏達し、智の原と為る。原、通微ならざれば、智を成す能わず。〕
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人物志・九徵是の故に中庸の質は此の類に異なる。五常既に備はり、包むに澹味を以てす。五質内に充ち、五精外に章らかなり、是を以て目は五暉の光を彩る。故に曰く、物生じて形有り、形に神精有り。能く精神を知らば、則ち理を窮め性を尽くす。性の尽くす所は、九質の徴なり。然らば則ち平陂の質は神に在り、明暗の実は精に在り、勇怯の勢は筋に在り、彊弱の植は骨に在り、躁静の決は気に在り、惨懌の情は色に在り、衰正の形は儀に在り、態度の動は容に在り、緩急の状は言に在り。其の人と為りや、質素平澹、中叡外朗、筋勁く植固く、声清く色懌び、儀正しく容直く、
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『長短経』知人然らば則ち平陂の質は神に在り。〔神は智の主なり。故に神平らかなれば則ち質平らかに、神陂なれば則ち質陂なり。〕明暗の実は精に在り。〔精は実の本なり。精清ければ則ち実明らかに、精濁れば則ち実暗し。〕勇怯の勢は筋に在り。〔筋は勢の用なり。故に筋勁ければ則ち勢勇に、弱ければ則ち勢怯なり。〕強弱の植は骨に在り。〔骨は植の機なり。故に骨麤ければ則ち植強く、骨細ければ則ち植弱し。〕躁静の決は気に在り。〔気は決の地なり。気盛んなれば躁に決し、気冲なれば静に決す。〕惨懌の情は色に在り。〔色は精の候なり。故に色悴るるは情惨むに由り、色懌ぶは情懌ぶに由るなり。〕衰正の形は儀に在り。〔儀は形の表なり。故に儀衰うるは形殆うきに由り、儀正しきは形粛なるに由る。〕態度の動は容に在り。〔容は動の符なり。哀しみ動けば則ち容哀しく、態正しければ則ち容度あるなり。〕緩急の状は言に在り。〔言は心の状なり。心恕なれば則ち言緩く、心偏なれば則ち言急なり。〕若し質素にして平淡、中は睿く外は朗らか、筋勁く植固く、声清く色沢い、儀は崇く容は直ければ、則ち純粋の徳なり」と。
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『長短経』知人五質は恒性なり、故に之を五常と謂う。故に曰く、直にして柔ならざれば則ち木。〔木強にして徼訐、其の正色を失う。〕勁にして精ならざれば則ち力。〔鼎を負い髕を絶つ、其の正勁を失う。〕固くして端ならざれば則ち愚。〔己を恵み自ら是とし、愚戇に陥る。〕気あって清からざれば則ち越。〔辞は清順ならず、発越して成る無し。〕暢にして平らかならざれば則ち蕩。〔智を好みて涯無く、蕩然として己を失う。〕
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人物志・九徵二者の義は、蓋し陰陽の別なり。若し其の材質を量らば、諸を五物に稽ふ。五物の徴も、亦各厥の体に著る。其の体に在るや、木は骨、金は筋、火は気、土は肌、水は血、五物の象なり。五物の実は、各済す所有り。
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人物志・九徵情性の理は、甚だ微にして玄なり、聖人の察に非ずんば、其れ孰か能く之を究めんや。凡そ血気有る者は、元一を含みて以て質と為し、陰陽を稟けて以て性を立て、五行を体して形を著さざるは莫し。苟くも形質有れば、猶ほ即きて之を求むべし。
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