長短経 / 知人
《人物志》曰〔凡有血氣者、莫不禀隂陽以立性、體五行而著形。其在體也、木骨、金筋、火氣、土肌、水血、五物之象也。五物之實、各有所濟也。〕「骨植而柔者、謂之𢎞毅。𢎞毅也者、仁之質也。〔木則垂陰、為仁之質。質不𢎞毅、不能成仁。〕氣清而朗者、謂之文理。文理也者、禮之本也。〔火則照察、為禮之本。本無文理、不能成禮。〕體端而實者、謂之貞固。貞固也者、信之基也。〔土必吐生、為信之基。基不貞固、不能成信也。〕筋勁而精者、謂之勇敢。勇敢也者、義之決也。〔金能斷割、為義之決。決不勇敢、不能成義也。〕色平而暢者、謂之通微。通微也者、智之原也。〔水流疏達、為智之原。原不通微、不能成智。〕
新字:《人物志》曰〔凡有血気者、莫不禀陰陽以立性、体五行而著形。其在体也、木骨、金筋、火気、土肌、水血、五物之象也。五物之実、各有所済也。〕「骨植而柔者、謂之弘毅。弘毅也者、仁之質也。〔木則垂陰、為仁之質。質不弘毅、不能成仁。〕気清而朗者、謂之文理。文理也者、礼之本也。〔火則照察、為礼之本。本無文理、不能成礼。〕体端而実者、謂之貞固。貞固也者、信之基也。〔土必吐生、為信之基。基不貞固、不能成信也。〕筋勁而精者、謂之勇敢。勇敢也者、義之決也。〔金能断割、為義之決。決不勇敢、不能成義也。〕色平而暢者、謂之通微。通微也者、智之原也。〔水流疏達、為智之原。原不通微、不能成智。〕
書き下し
人物志に曰く〔凡そ血気有る者は、陰陽を稟けて以て性を立て、五行を体して形を著さざるは莫し。其の体に在るや、木は骨、金は筋、火は気、土は肌、水は血、五物の象なり。五物の実は、各々済す所有り。〕「骨は植にして柔なる者、之を弘毅と謂う。弘毅なる者は仁の質なり。〔木は則ち陰を垂れ、仁の質と為る。質、弘毅ならざれば、仁を成す能わず。〕気は清くして朗なる者、之を文理と謂う。文理なる者は礼の本なり。〔火は則ち照察し、礼の本と為る。本に文理無ければ、礼を成す能わず。〕体は端にして実なる者、之を貞固と謂う。貞固なる者は信の基なり。〔土は必ず生を吐き、信の基と為る。基、貞固ならざれば、信を成す能わざるなり。〕筋は勁くして精なる者、之を勇敢と謂う。勇敢なる者は義の決なり。〔金は能く断割し、義の決と為る。決、勇敢ならざれば、義を成す能わざるなり。〕色は平らかにして暢なる者、之を通微と謂う。通微なる者は智の原なり。〔水は流れて疏達し、智の原と為る。原、通微ならざれば、智を成す能わず。〕
現代語訳
人物志にこうある。〔およそ血気あるものは、陰陽を受けて性質を立て、五行を体して形をあらわさないものはない。体においては、木は骨、金は筋、火は気、土は肌、水は血であり、五つの物のあらわれである。五つの物の実質には、それぞれ助けるところがある。〕「骨がしっかり立ちながら柔らかい者、これを弘毅という。弘毅は仁の素質である。〔木は陰を垂れ、仁の素質となる。素質が弘毅でなければ、仁は成り立たない。〕気が清く朗らかな者、これを文理という。文理は礼の根本である。〔火は照らし見分け、礼の根本となる。根本に文理がなければ、礼は成り立たない。〕体が端正で中身がある者、これを貞固という。貞固は信の基である。〔土は必ず生を吐き出し、信の基となる。基が貞固でなければ、信は成り立たない。〕筋が強く精妙な者、これを勇敢という。勇敢は義の決断である。〔金は断ち割ることができ、義の決断となる。決断が勇敢でなければ、義は成り立たない。〕顔色が平らかでのびやかな者、これを通微という。通微は智の源である。〔水は流れて通りがよく、智の源となる。源が通微でなければ、智は成り立たない。〕
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『長短経』知人五質は恒性なり、故に之を五常と謂う。故に曰く、直にして柔ならざれば則ち木。〔木強にして徼訐、其の正色を失う。〕勁にして精ならざれば則ち力。〔鼎を負い髕を絶つ、其の正勁を失う。〕固くして端ならざれば則ち愚。〔己を恵み自ら是とし、愚戇に陥る。〕気あって清からざれば則ち越。〔辞は清順ならず、発越して成る無し。〕暢にして平らかならざれば則ち蕩。〔智を好みて涯無く、蕩然として己を失う。〕
-
『長短経』察相夫れ木は春を主る、生長の行なり。〔春は肝を主り、肝は目を主り、目は仁を主る。生長敷栄する者は、恕恵を施し与うるの意なり。〕火は夏を主る、豊盛の時なり。〔夏は心を主り、心は舌を主り、舌は礼を主る。豊盛殷阜なる者は、富博宏通の義なり。〕金は秋を主る、収蔵の節なり。〔秋は肺を主り、肺は鼻を主り、鼻は義を主る。収蔵聚斂する者は、吝嗇慳鄙の情なり。〕水は冬を主る、万物伏匿の日なり。〔冬は腎を主り、腎は耳を主り、耳は智を主る。伏匿隠蔽する者は、邪諂奸佞の懐なり。〕土は季夏を主る、万物結実の月なり。〔季夏は脾を主り、脾は唇を主り、唇は信を主る。結実堅確なる者は、貞信謹厚の理なり。〕故に曰く、凡そ人の眉目を美とし、指爪を好くする者は、庶幾くは施しを好む人なり。
-
『長短経』知人〔人物志に曰く「夫れ心質亮直なれば、其の儀は勁固なり。心質平理なれば、其の儀は安閑なり。夫れ仁固の精は、慤然として以て端なり。勇胆の精は、曄然として以て強なり。夫れ憂患の色は、乏しくして且つ荒る。疾疢の色は、乱れて理を垢す。喜色は愉然として以て懌び、慍色は厲然として以て揚がり、垢惑の色は冒昧にして常無し。是の故に其の言は甚だ懌びて精色従わざる者は、中に違う有るなり。其の言は違う有りて精色信ず可き者は、辞の敏ならざるなり。言未だ発せずして怒色先ず見わるる者は、意の憤溢なり。言已に発して怒気之を送る者は、然らざる所を強うるなり」と。凡そ此の類は、之に違わんと欲すと雖も、精色従わず、威愕以て明らかに、変ずと雖も知る可きなり。〕
-
『長短経』徳表人物志に曰く「厲直剛毅は、材は矯正に在り、失は激訐に在り。〔強毅の人は、佷剛にして和せず。其の強の搪突を戒めずして、順を以て撓と為し、其の亢を厲ます。是の故に、与に法を立つ可くして、与に微に入り難きなり。〕柔順安恕は、美は寛容に在り、失は決少なきに在り。〔柔順の人は、緩心にして寛断なり。其の事の摂まらざるを戒めずして、亢を以て劌と為し、其の舒に安んず。是の故に、与に常に循う可くして、与に疑を権り難きなり。〕雄捍桀健は、任は胆烈に在り、失は忌少なきに在り。〔雄捍の人は、気奮い英決なり。其の勇の毀跌を戒めずして、順を以て恇と為し、其の勢いを竭くす。是の故に、与に難に渉る可くして、与に屈に居り難きなり。〕
-
『長短経』知人又た察色有り。察色とは、心気内に蓄えらるるは、皆な色を以て之を取る可きを謂う。夫れ誠の智には、必ず尽くし難きの色有り。〔又た曰く、誠の智には、必ず明達の色有り。〕誠の仁には、必ず尊ぶ可きの色有り。〔又た曰く、誠の仁には、必ず温柔の色有り。〕誠の勇には、必ず懾し難きの色有り。〔又た曰く、誠の勇には、必ず矜奮の色有るなり。〕誠の忠には、必ず観る可きの色有り。誠の潔には、必ず汙し難きの色有り。誠の貞には、必ず信ず可きの色有り。質色は浩然として固く以て安く、偽色は曼然として乱れ以て煩わし。此れ之を察色と謂う。
-
『長短経』知人然らば則ち平陂の質は神に在り。〔神は智の主なり。故に神平らかなれば則ち質平らかに、神陂なれば則ち質陂なり。〕明暗の実は精に在り。〔精は実の本なり。精清ければ則ち実明らかに、精濁れば則ち実暗し。〕勇怯の勢は筋に在り。〔筋は勢の用なり。故に筋勁ければ則ち勢勇に、弱ければ則ち勢怯なり。〕強弱の植は骨に在り。〔骨は植の機なり。故に骨麤ければ則ち植強く、骨細ければ則ち植弱し。〕躁静の決は気に在り。〔気は決の地なり。気盛んなれば躁に決し、気冲なれば静に決す。〕惨懌の情は色に在り。〔色は精の候なり。故に色悴るるは情惨むに由り、色懌ぶは情懌ぶに由るなり。〕衰正の形は儀に在り。〔儀は形の表なり。故に儀衰うるは形殆うきに由り、儀正しきは形粛なるに由る。〕態度の動は容に在り。〔容は動の符なり。哀しみ動けば則ち容哀しく、態正しければ則ち容度あるなり。〕緩急の状は言に在り。〔言は心の状なり。心恕なれば則ち言緩く、心偏なれば則ち言急なり。〕若し質素にして平淡、中は睿く外は朗らか、筋勁く植固く、声清く色沢い、儀は崇く容は直ければ、則ち純粋の徳なり」と。