囲炉夜話 / 第百七十四則・其の自新の路を絕つ勿かれ
子弟天性未漓,教易入也,則體孔子之言以勞之,勿溺愛以長其自肆之心。 子弟習氣已壞,教難行也,則守孟子之言以養之,勿輕棄以絕其自新之路。
新字:子弟天性未漓,教易入也,則体孔子之言以労之,勿溺愛以長其自肆之心。 子弟習気已壊,教難行也,則守孟子之言以養之,勿軽棄以絶其自新之路。
書き下し
子弟の天性未だ漓からず、教へ入り易きなり、則ち孔子の言を體して以て之を勞せしめ、溺愛して以て其の自ら肆にするの心を長ずる勿かれ。 子弟の習氣已に壞る、教へ行ひ難きなり、則ち孟子の言を守りて以て之を養ひ、輕々しく棄てて以て其の自ら新たにするの路を絕つ勿かれ。
現代語訳
子どもや若者の生まれつきの性質がまだ損なわれていないうちは、教えが入りやすいものです。そのときは孔子の言葉を体して苦労をさせ、溺愛して好き勝手な心を育ててはいけません。子どもや若者の悪い習慣がすでに身についてしまったら、教えは行われにくいものです。そのときは孟子の言葉を守って根気よく養い、軽々しく見捨ててその子が自ら改める道を断ってはいけません。
解説
子弟の教育を二つの段階に分けて、それぞれの要を示した則です。漓とは、酒が水で薄まるように本来の性質が損なわれることです。まだ素直なうちは、『論語』憲問篇の「之を愛して能く労すること勿からんや」のとおり、愛するからこそ苦労をさせよと言います。悪い習慣がついた後は、『孟子』離婁篇の「中は不中を養ひ、才は不才を養ふ」を守り、見捨てずに育てよと言います。前半は甘やかしを、後半は見放しを戒め、段階に応じて厳しさと寛さを使い分けています。新人の育成にも、つまずいた部下への向き合い方にも、そのまま当てはまる知恵です。
この章句が説くこと
教育家訓溺愛自新孝
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